見出し画像

Withコロナ時代のアジアビジネス入門⑦「インドの衛生・健康市場が1兆5千億円規模に拡大」@ONLINE講座インド編(1)

  もう一つのアジアの巨大市場、インドではナレンドラ・モディ首相が3月25日に完全ロックダウン(都市封鎖)に踏み切りました。インドのコロナ感染者は5月22日現在、11万8,447人、死者は3,583 人となっています。世界で2番目の13億7千万人の人口を抱えるインドですが、人口10万人あたりの死亡率は3.02%で日本の4.86%より低水準にとどまっています。では、インドの経済打撃とインド政府の対応はどうなっているのでしょうか。

モディ政権 ロックダウンを段階的解除

 毎日アジアビジネス研究所は「Withコロナ時代のアジアビジネス入門ONLINE講座」を開設しました。中国編に続く、シリーズ第2弾「荒木英仁のインド・ビジネス<デリーからの最新報告>(1)「13億人のロックダウン モディ政権下のインド経済はどうなる?」 を5 月22日に開催しました。

 荒木によると、インドは全ての州境閉鎖や公共交通機関停止などを断行したロックダウン1.0(3月25日~4月14日)から同2.0(4月15日~5月2日)、同3.0(5月3日~同17)、同4.0(5月18日~同31日)と制限を段階的に解除して日常に戻りつつあるといわれています。
 ロックダウンによるインド経済への影響は、①約2.9兆円の経済ロス(ロックダウン58日)で2020年度のGDP予測(IMF)は1.9%(前期4.2%)まで下がった②失業率は4月に27.1%を記録(4月だけで2,700万人が失業)5月4日から少し規制が緩み、5月15日時点で24%まで下がった③ロックダウン中に酒類の販売が禁止されインド政府は毎日約100億円の税収入を失った――と指摘しています。

自動車関連は前年比売上マイナス55% 通信は同5% 薬品は同10%
 インドの業界別前年比売上ロスは、トップが航空・ホテルでマイナス70%、続いて自動車関連の同55%、不動産・建設の同50%、繊維の同50%、輸送・運送の同40%となっており、コロナで直撃を受けた航空・ホテルと主幹産業である自動車関連の打撃の大きさがうかがえます。逆に、通信がマイナス5%、薬品が同10.0%、IT・サービスが同10.0%でさほど影響を受けませんでした。

欧米の製薬会社がサプライチェーンを中国からインドへとシフト
 一方、モディ政権は総額28兆円の対コロナ対策を発表。打ち出された政策のうち、農民に対するローン(特別金利2.0%)機能付きクレジットカード発行(250万)やコロナ感染者追跡アプリの義務付け(5月15日時点で1憶ダウンロード達成)がIT先進国のインドらしい政策といえそうです。
 荒木氏は新たに生まれた機会として、インド人の衛生概念を根底から覆させたコロナにより、衛生管理や健康管理につながるビジネスが拡大し、2023年までに1兆5千億円の市場になると予測しています。中国に依存していた欧米の製薬企業はサプライチェーンをインドへとシフトを始めたと指摘しました。

 ONLINE講座で、参加者から次の質問がありました。          ーーロックダウンが段階的に解除される中で、物流の状況はどうか?通常と比べて、どの程度回復しているのか?                「100%ではないが、それなりに動いてきている。輸入ポートは動いている。ただ、従業員のフルアテンドの状態になってない」         スズキの動向とサプライチェーンに注目                ーー日本からみて自動車関連が気になる。生産台数ゼロとも伝えられたが見通しはどうか?                          「現時点で、どのくらい需要が復活するかは読みにくい。インドの場合、シェアの50%をスズキが占めているので、スズキの動向とサプライチェーンは注目されている。工場は操業を始め、デーラーもセールスを再開している。ただ、2020年度を見ると、通常に戻るには6カ月かかるといわれている。それも、ロックダウンが終わった場合という前提付きなので状況は楽観視できない」     

◇  ◇  ◇ 
ONLINE講座シリーズ2「荒木英仁のインド・ビジネス<デリーからの最新報告>」は引き続き開催します。
(2)6月5日(金)19:00~20:30
「中国かインドか?リスク分散のメリットとインド・マーケティング」
(3)6月12日(金)19:00~20:30
「インドのEコマース――もうひとつの魅力ある巨大市場」

もし、インド・ビジネスにご関心があれば、お申し込みください。

■荒木英仁(あらき・ひでひと)毎日アジアビジネス研究所シニアフェロー/インドビジネス・コンサルタント
 長年、大手広告代理店「アサツー・ディ・ケイ」の海外事業に従事し、2005年から9年間、同社インド法人社長。2014年春ニューデリー郊外の新興都市グルガオンにて「Casa Blanka Consulting」社を設立、日本企業との提携を求めるインド企業を支援。 また、同年監査法人「Udyen Jain & Associates」と業務提携し、日本企業のインド進出や現地でのコンプライアンスを支援。インド最大手私銀「ICICI Bank」のアドバイザーや、JETROの「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム」コーディネーターも務める在印15年強のインド通。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?