受験生物攻略のためのオススメ本(受験参考書以外)

この記事では、受験参考書以外の書籍で、受験生物攻略に役立つものを紹介します。(筆者はまだ生物では離散受験に成功していませんが、東大模試で35-39くらいの点数にはなってきたので、ある程度普通の受験生よりは上だろうということで紹介しています。)
そしてその前提として、「受験に良いオーバーワークとそうでないオーバーワークの違い」についても記します。「一見受験に関係なさそうなものをやること」は従来ひとくくりに「オーバーワーク」としか言われてきませんでしたが、それは解像度が低い考え方なので、その指摘もしたいと思います。


目次
・前提:「オーバーワークとアウトワークの違いについて」
・「受験生物に役立つオーバーワーク本の具体的紹介について」


・オーバーワークとアウトワークの違いについて:この記事の前提となる考え方


言葉の定義について。アウトワークという言葉は、俺が使い始めたものなので、まず定義から述べます。

アウトワーク=大学入試の範囲ではない(out of range)ことをやること

オーバーワーク=大学入試の難易度を超えている(over)ことをやること

世間では、両者をひとくくりにして「オーバーワーク」と称してしばしば批判することが多いですが、この記事では両者を区別し、前者は確かに不要ではあるものの後者が必要であることを、まず説いておきたいと思います。

・アウトワークの不要性と具体例について


アウトワークとは、受験に要求されていないことや、全く関係のないことをすることです。例えば、英語選択なのにドイツ語を勉強するとかは自明でしょうが、前者の「受験に要求されていない」については注意が必要な視点です。
たとえば、化学で、「Cu(OH)₂が青白色であること」は知識問題として重要ですが、その色となる理由までいくと(光が発生する理由とか波長とかの話になる)、そのような視点は要求されないのだから(これは過去の問題を調べたらわかること、場合によっては教科書を調べれば大丈夫)、アウトワークになります。単純に出題範囲に関係していれば良いということでもありません。

このようなアウトワークは、もちろん趣味としてやるぶんには構いませんが、試験場で得点を取ることに繋がらないのであれば、受験範囲外なことをやっていることに変わりはありません。

一方、オーバーワークについてはどうでしょうか。

・オーバーワークの必要性と具体例について


オーバーワークについても、入試の難易度を超えているのだから範囲外と同じではないか、という批判が一見成り立ちそうに思えますが、本当にそうでしょうか。

まず、「〇〇大学はこのような難易度のはず」「こんな難易度の問題は出ないはず」というのは、基本的に、浅い経験から来る思い込みにすぎません。

例えば、群馬大学は偏差値が50~65、東京大学は偏差値が72~77と検索すると出てきますが、実は群馬大学の和文英訳は東大や京大よりも難しい。また、数学でも、「大学への数学」で最高難易度を評されるほどの問題を時々出題されています。
また、東京工科大学(偏差値37.5~45とされる)の数学の問題も、「大学への数学」をみると時々掲載されています。

このように、「こんな難易度の問題はこの大学では出ないはず」というのは、往々にしてただの勘違いであることが多いです。

また、大学入試センターや大学から発表されている範囲は、公式に発表されているものですが、難易度はそうではありません。難易度はばらつきがあるもので、時にその難易度の振れ幅は致命的になります。「自分が受ける年は大丈夫だろ」というのは、「一昨年台風が来なかった、昨年も台風が来なかった、だから今年も大丈夫」と言っているのと変わりません。無根拠な思い込みに過ぎない。(そしてそういうことを言う人に限って、過去問を5年くらいしかみずにそういうことを言う。最低でも20年は見ないと、「傾向」など言えません)

能力面についても、難易度を超えたものをやることは、その問題自体が出なくても、高度な能力が磨かれて最終的には易しい問題を解くことにもつながるものです。易しい問題しか解けない考え方を1対1形式で無数に覚えるより、難易度の振れ幅があっても通用するものを厳しい状況で訓練しておけば、より間違いが少なくなる。

このようなオーバーワークの例としては、たとえば国語で、文章の読み方(テクスト分析 などと言う)に関する専門書を読むことや(文章自体は試験で読むのだから範囲外ではない)、英語で洋書を読むことに値します(注:私見ですが、英検1級の単語帳をやる などは、大学によってアウトワークかオーバーワークか難しいところです。難しい単語を実際によく出す大学・注をつけない大学なら必要なオーバーワークでしょうが、難しい単語を言い換えてくれる東大などではアウトワークになってしまうでしょう)

また、生物などは、そもそも範囲が不明瞭という側面もあります。生物は、範囲外のことも考察問題としてなら説明つけたらなんでも出してOKという雰囲気です。ですから、そもそも範囲を厳格に決めること自体に現実問題としては意味がなく、考察のための視点を獲得するために受験参考書以外の本を読むことはオーバーワークであってもアウトワークではありません。

このような正当性を踏まえた上で、生物のオーバーワーク本(アウトワークではない)を紹介したいと思います。

・受験生物に役立つオーバーワーク本の具体的紹介について

大きく生物を、総合・遺伝とバイオテクノロジー・動物・植物に分けて紹介したいと思います。

・総合


キャンベル生物学

言わずと知れたキャンベル。受験生物に必要な範囲は全て書いてある上に、一歩踏み込んだ考え方も紹介されているので、考察問題で効果を発揮します。実際に東大入試でもキャンベルに書いてあることは出ています。(2023-1、2017-2など)

このようにイラストも多いので、読みやすいです。


・遺伝とバイオテクノロジー

1 トンプソン&トンプソン遺伝医学

医学生用の遺伝に関する本ですが、遺伝の仕組みなどが詳細に書いてあります。
欠点は医学用=人間の話しかしないので、植物の遺伝などは知れないことです。また、入試の遺伝計算は高度に複雑なものになっている側面もあるので、別途受験参考書で専門の対策をした方が良いです。

2 遺伝子工学実験ノート上・下

バイオテクノロジー(ゲノム編集とか)は結構考察問題で鬼門になりやすいですが、実験方法を予め知っておけば、方法の説明の部分をだいぶ読み飛ばして時短ができます。
そのために有効な本です。試験場で読むとわけわからんとなりがちな実験方法も、イラスト付きで詳しく見やすく書いてくれているので、わかりやすいと思う



3 トコトンやさしいゲノム編集の本

CRISPR CasやHR(これは2023東大-1にも出た)など、ゲノム編集に関する手法と、その手法の目的意識(考察問題で実験の目的は鍵になりやすい)をわかりやすく紹介してくれている本です。

まったく知らない人向けにも書かれているので、本当に読みやすいことが特長。


・動物範囲(具体的には、神経・受容器効果器・恒常性・免疫のあたり)

動物範囲はとくに、医学生用の本がオススメです。(特に、遺伝・免疫・生理学が受験と被り)やはり人間自分が大事なので、動物に関する知見が得られやすいのは医学なのかもしれません。
欠点は哺乳類に関することしか得られないことですが、両生類や鳥類や魚類にしかないものでなおかつ理解が相当難しいものもあまりないので、実践上の差支えはあまりないと思います。ここで紹介するものも、医学生用です。

標準生理学
生理学とは、人間の正常状態がどう動いているかを理屈で説明しようとする学問で、動物範囲の勉強に最適です。イラストも多く分厚いので、情報量も信頼できます。
これ一冊で大丈夫!というくらい分厚いです。


・植物範囲

1 エッセンシャル植物生理学 農学系のための基礎

植物に関することが、光合成からホルモンに至るまで幅広くきれいにまとまっている感じの本です。画像は親の顔より見た自家不和合性についてですが、このように随所にコラムもあるので読みやすく記憶にも残りやすいと思います。


2 植物の超階層生物学
植物に関する本ですが、手広くまとまっているというよりは、ゲノムとかバイオテクノロジーにフォーカスして深く記述してある感じの本です。ある程度の知識は自信あるけど、そういう難問が出やすい分野をカバーしたい時はぜひ。