「辞めてみる」という決断からの再出発(延原令奈)
第2回We Are the Change x Kansai を4月9日に大阪で開催いたしました!(全体レポートはこちらから)その中から、迷いながらも進み続ける延原さんの発表について詳しくお伝えします。
延原令奈 (21) Reina Nobuhara
学生が立ち止まって考える時間を
延原さんは、高校生の時にウツになった経験があります。小さい時からお医者さんになると決めて医進クラスで勉強するものの、「他の選択肢とか、本当にやりたいこと、考えなくちゃいけないんじゃないか」と思っていました。しかし、周りに置いていかれる不安や、毎日近づいてくる受験日に圧迫されて考えるのが怖くなり、自分の心にウソをつき続けていたことからウツになったといいます。その時のことを振り返って強く思うのは、「立ち止まって考える時間が欲しかった」ということでした。
医学部ではなく、教育系の学部に進んだ延原さんは、デンマークへ留学した際に、エフタースコーレという学校に出会います。それは中学と高校の間に1年間「自分の人生ややりたいことってなんだろう?」と考えるための学校でした。
そう思った延原さんは、2年生の夏に+Torch(プラストーチ)という団体を立ち上げました。100人以上の中高生と一対一で話していくうちに気づいたのは、中高生に直接アプローチするのでは十分ではないということ。そこで保護者への教育と、「自分を知る授業」の二つを含む、色々な活動を始めました。
自分を知る授業は、主に教員志望の大学生を対象とし、3時間ひたすら一対一の対話をしていきます。教育学部や教育大学の学生は、先生になる前提でここまで来たので、あまり他の選択肢を検討したりとか、「そもそもなんで先生になりたいんだろう」ということに向き合うことなく先生になっていく人も多いと延原さんは感じています。だからこそまずは、本人が「自分を知る授業」を体験してもらい、その次の回からファシリテーター役をやってスキルを身につけていく仕組みです。
「自分がどんな性格で、どんなことに興味があって、どんなことに向いているのかが分からないし答えられない」という学生も、「何がきっかけでそう思うようになったの?いつから?」ということを問い続けられると、最終的には「こういう人に、こういうことをしている時が幸せだな」という価値観が言語化できるようになります。
辞めてみるという決断
2年間で20回の「自分を知る授業」を開催し、140名の参加者から高評価を得ていましたが、この半年間はとても苦しかったといいます。
結果的には、今までやってきた活動を一度辞め、色々なことに挑戦することはとてもプラスの経験だったといいます。例えば、デザイン思考の教材開発(経産省のSTEAMライブラリにて公開中)をしていく中で、「失敗とは、検証して情報を得られたという前進である」という価値観に出会い、「自分を知る授業」も試作品の1個目なんだから、最初から全て上手くいかなくて当たり前じゃないかと受け入れられるようになったそうです。
また、就活の中で「副業という形でもできるよね」と何度も言われたことで、逆に「やっぱり自分が持っている違和感や疑問に対して100%の時間を使って挑戦したい」という想いの再確認につながりました。
「教員養成のアップデート」という再出発
今、延原さんが一番強く感じているのは、教員養成課程へのギモンです。
延原さんから見て、今の教員養成に欠けている大きな2つのもの、それは「コーチング」と「ファシリテーション」の能力です。
「コーチング」とは、子どもの本音を引き出す力のこと。まさに「自分を知る授業」のように、対話を通して自分の特性や進みたい道、やりたいことなどを見つけていきます。そして、子どものやりたいという気持ちが出てきた時に、それを実現するために伴走していくのが「ファシリテーション」の能力。この2つの力を身につけている先生を育てるのが延原さんの新しい目標です。
自身が「探求学習」を体験したことがないのに、そのまま先生になって、見よう見まねで「探求」を教えなくてはいけないなんておかしい、と感じている延原さん。まずは学生自身がコーチングされる側、伴走される側になって体験した上で、他の人に対してコーチングしたり、伴走する経験を積んでいく仕組みを作ろうとしています。既に2つの大学で、授業や研修という形で実践することが決まっており、これから全国に広がっていくのが楽しみです!
会場からの質問の後には、「自分がまず何をやりたいか、自分は何者なのか、どんな価値観を持っていて、どんな風に生きてきて、どんな特徴があるのか。そんなことをもっと知る授業が一番必要だって私も思うし、高校か大学で全員が必ず受けた方がいいと思います。ぜひ広げていってください!」という熱烈な応援の声も聞かれました。今後の活躍に注目です!
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