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自分を貫いて生きていくには?(We Are the Change x Kansai 開催レポート③)

12月19日に大阪で開催されたWe Are the Change x Kansai のレポート第三弾です。イベントの後半は、ジャーナリズム界の社会起業家である渡辺周さんと、4人のユースベンチャラーによる対談。年齢や活動の規模に差はあるものの、「チェンジメーカー」の生き方や姿勢として共通するものは何なのか。今回はそんな対談の様子の一部を抜粋してお送りします。

司会:今井直人
スピーカー:渡辺周さん(以下敬称略)、ゆな、旬、沙羅、雪野


自分を貫いて生きる

今井(司会):今回、初めのトークテーマだけ決めています。「自分を貫いて生きるために必要なことは何か」色々なハードルがあったり敵がいる中で、どう自分の意志を曲げずに頑張っていくのかということを聞いていきたいと思います。
渡辺周さんは命を狙われてもおかしくない中で、怖くないのかな、不安じゃないかなと思うんですけど、どうやって自分を貫いているんですか。

自身も元ユースベンチャラーの今井直人(司会)

渡辺:大事なのはユーモアと隙を作ることだと思っていて。
先ほどからユースベンチャラーの皆さん、すごいなぁと感動していました。で、自分を持ってこうやるんだって決めている人、そしてこうやってイベントにきてくれる人、こういう人たちは堅いわけですよ。逆にアンチみたいな人もいる。問題は、広大なグレーゾーンをどっちが取っていくか。何かを変えるためにはこの戦いになる。その時に、「自分を曲げずに頑張るんだ」というのは当たり前だと思うんですけど、それを保つためにも隙が必要で。

僕もあんまり敏腕記者オーラみたいなものを出さないようにしてるんです。よく道聞かれたり、張り番している時もたくさんいる中で、街中の人は必ず僕に聞いてくるんですよ。

我々みたいな仕事は、主張の強い人が、あれしてくれこれしてくれ、取り上げてくれと言う声は、黙っていても聞こえてくるけど、大事なのは、人知れず苦しさを抱えているけれど、「そんなこと言ったらダメかな」と遠慮している人が、自分の目の前を通った時に、「ちょっと渡辺さん」って声をかけてくれるかどうか。その隙がすごい大事。もっとがんばんなきゃ、って思うかもしれないけど、逆に止まろうみたいな感じがあるといいのかもしれない。

今井:なるほど。では貫くというのは前提としてあって、その中でどう周りを巻き込んでいくか、ということですね。

渡辺:あとはやっぱり楽しそうにしていないと。戦々恐々としていると人は集まってこないですよね。

他人からどう見られるか

今井:自分を貫く時には、楽しむ心がいるんじゃないかと思いつつ、「すごい人」だって思われるのが得策ではない、という話でもあると思います。以前ユースベンチャラーのミーティングでもそういう話が出てきてましたね。

沙羅:私は多摩川に本を置いているだけの人間なので、すごい人とか見て欲しくないなと思います。いじめとかは全然なくて、いじられるのはあんまり好きじゃなかったかな。私たちはみんな、一回はそういう経験があるんだと思うんです。自分のやりたいことを、そのまま突き進んでいったらいいのかなって思います。たまに難しいですけど。

今井:とはいえ、大多数の中高生がそれが怖かったり、不安だったりとかするからできていないわけで。そのことについてどう思いますか?

旬:若者が活動しているのが珍しいっていうことだと思うんですけど。「普通」ってある時代のある地域の中の「普通」であって、別の環境に行けばそれも変わりますよね。自分も中学卒業後にすぐ通信制の放送大学に入ったこと自体は特異だったけれど、入ったら色んな年の人が色々いましたし、デンマークに留学した時も、既に環境問題に対してアクションを起こしている生徒もいて。自分の「普通」から抜け出してみると、プレッシャーからは解放されるかなと思います。

ゆな:私はクラウドファンディングで成功したので、「すごいね、ゆなちゃんだからそれができたんだね」と言われることが多いけど、準備をちゃんとしたら多くの人ができると思うんです。私自身、高校3年間ずっと週7日でバイトしていて、朝からコンビニに行って、昼スーパー、夜お好み焼き屋さんでバイトとかしていたので、ツテやコネもなかったのに、急に3月にクラファンやるって言って、5月に始めたので。
「すごいね」で終わりにするんじゃなくて、「それどうやったらできるの?教えてよ」とか「一緒にやろうよ」とかいう風になるにはどうしたらいいんだろうって最近考えています。

沙羅:私はよく「同調圧力」を感じます。みんなこうあるべき、というのが強くて、K-POPが流行っているからそういうファッションじゃなきゃいけないとか、ルーズソックスがまた流行ってるからそれを履くとか。

バイデン大統領の就任式で有名になったアマンダ・ゴーマンの詩の最後が

光はいつもそこにある
私たちがその光を見る勇気があれば
私たちがその光にいつかなる勇気があれば
”For there is always light.
If only we’re brave enough to see it.
If only we’re brave enough to be it.”

Amanda Gorman

っていう風に締めくくられてるんですけど、何か不安な時はいつもその言葉を思い出すようにしています。

今井:同調圧力の中で自分を貫いていくためには、環境や周りに仲間がいるかも大事になってくると思っています。今日も「居場所」や「コミュニティ」というキーワードがたくさん出てきましたが、雪野さんはどう思っていますか?

雪野:私はみんなの「やりたい」って気持ちとは少し違っていて、今ないもので自分が欲しいから単純に作っているという感覚です。

今の社会では、子育ては家庭の中でやるのが普通だけど、自分の複雑な家庭環境を振り返ったときに、親にコミュニティがないから子どもに依存して、子どもも家族に依存して、その依存関係が原因だったんだと気づきました。なので、色んなコミュニティを持って、色んな依存先を増やしていくのが過去の自分を救うことになるのかなと思っています。

何もないところに

今井:渡辺周さんに伺いたいのですが、今日もTansaスクールの話など、キーワードに若者が入ってきていています。何か伝えたいことなどありますか?

渡辺:日本のメディアは、明治時代から新聞が始まって、130年とか続いているわけですよね。ずっと。戦争が間に入っても体制が変わらなかった。ドイツではナチスに協力した新聞などが全て廃刊になって、戦後みんな1からスタートしたんです。でも日本は全部残った。今は、その130年続いてきたものが終わろうとしている、大転換のときなんですね。これは他の業界も同じで、だからアショカのいう「チェンジメーカー」の能力が求められていると思います。

だからこそ、若者には戦後の焼け野原にバラックを建てていくような楽しさとかワクワクするエネルギーを持って欲しいです。狭いニッチな所を見つけるのもいいけど、更地にバラックを建てていくような、爽快な。年取っている人は100からの引き算になりがちだけど、若い人は0からの足し算でできる。そっちの方が絶対に楽しいと思うので、ぜひ焼け野原に自分たちの新しいものを築くことを楽しんで欲しい。

よく使命感とワクワク感を持ってね、ということはTansaの若いメンバーにも言っていて。ジャーナリストってどうしても「こうあるべきだ」っていうのが強いので、ミーティングが学級委員会みたいになることもあるんですけど(笑)、頭だけの使命感じゃなくて、「本当に許せない」とか、「これ感動した」というものに反応していくと、ワクワクしながらできる。理屈も大事だけど、それは後からついてくるものだからね。

やりたいことを続けていくために

ゆな:その点で周さんに質問です。私もJETBOOK作戦をやっていて、ただただ施設の子どもたちが大好きだから、その子たちに色んなことしてあげたいな、という気持ちでやっているけれど、でもそれを実現するためには、全国の600の施設に全て電話やメールで連絡したり、それぞれ施設の近くの本屋さんを買ったり、1割のやりたいことのために、9割の大変なことがあるじゃないですか。その1割の気持ちを持ち続けるためにはどうしたらいいんでしょう?

渡辺:それは疲弊するし、澱のように負の感情が溜まってくるよね。僕も「なんでこんなところで朝から張り込みしているんだろう」って思ったり、探査報道は取材量が多いから、1つのテーマが終わるときには段ボール箱10箱くらいの紙があって、相手から訴えられても裁判に備えて全て用意しているので、「こんなことたまらん!」って思う。

やっぱり、それでも続けられるのは、やった仕事に対して感謝されたりとか、「渡辺くん助かったよ」とかいう言葉をもらうから。自分のためだけだったら、そんな面倒くさいことしないですよ。でも誰かがそれによって困っているとしたら、やろうかと思う。

「こんな情報があります、どうしますか」と言われたら、もうやらざるをえないよね。忙しいんですけどって言いたくなるけど、99は大変だけど、最後に1のどんでん返しがあって、困っている人たちが「ありがとうございました」と言われると元気が出てくる。それの繰り返し。毎日ウハウハで仕事している人なんて、ちょっと気持ち悪いでしょ(笑)

ゆな:私も、本を送った施設の人や子どもたちからお礼を言われるとやってて良かったなと思うんですけど、一緒にやっているメンバーにそれを伝えたり、1を楽しんでもらうのが大変で、メンバーのモチベーションとかってどうしてますか?

渡辺:それは事業やったことのある人だったら誰でも悩むところで、特にスタートアップだと人の入れ替わりも多いしね。元々、大手の新聞社やテレビ局に勤めていて「メディアはこのままじゃダメなんじゃないか」という人たちが早稲田大学の研究所に集まって、「じゃあ俺たちでやろうぜ」となったので、韓国に視察に行ったり、みんなとてもやる気で色々話した。でもいざやろうかってなったら、みんな会社辞めないんだよね。上島竜兵状態で(笑)振り返ったら誰もいなかった。そこまでしてやろうと思ってなかった。大変なこともいっぱいあるから、離れていく人がいるのは仕方ない。それでも残ったメンバーがやる気のある人。「社会を変えよう」という人たちの集団はみんなそうだと思う。

ただ、なるべくモチベーションを高く持ってもらうために色々なことはします。例えば、現場にたくさん連れて行って、困っている人に会うとか。記者会見でガンガン質問するのも、喧嘩するためじゃなくて、被害者の人のためにやっているので、その人に直接会わせたり。そういう工夫はします。それでもお別れがあるのは仕方ない。

それぞれの立場で社会を変えていく

ゆな:記者会見などで、答えることと答えないことを事前に決めていることもあると聞きました。そういう場合はどう対処するんですか。

渡辺:それは材料を持っていないとダメだね。「あなたはこの質問に答えるべきです」なんて言っても意味がない。「買われた記事」シリーズの動画を見てもらうとわかるけれど、一切怒鳴ったりしていなくて、黙って証拠の紙を見せているだけ。一年近く取材して内部文書などを入手して、関係者に直接当たっているのは最後の一週間くらいなんです。準備が全てで、ディベートじゃないので。

大事なのは、権力が全てダメとか言っちゃダメなんですよ。どんな仕事でも理由があって。それぞれのところで同じ志を持った人たちが必ずいる。「今の政治おかしいな」「この捜査おかしいな」と思っている人が必ずいるので、その人たちとつながる。例えば警察の人とか政治家の人が「もうこんなのやってられるか!もうやめる!」と言うときには、「やめるな、そこにいて、それぞれの組織を説得しよう。このネットワークを崩しちゃダメだ」と伝えています。

今井:話を聞いていて、どういう動機があるのか、というのが重要になるなと思いました。アショカのユースベンチャーにも基準が二つあって、内発的動機(自分が心からそう思っているか)ということと、もう一つが行動力です。

例えば、やることが変わっていってもいい、というのは、本気でやりたいと思っていたら、失敗しても次に違うことをやるだろうってことで、そういう人をユースベンチャラーに認定しています。だからユースベンチャラーになったからといって社会を変えるわけではなく、社会を変えるためにそのまま突き進んでいる人を審査会で審査して、それぞれコミュニティを組んで、それぞれ仲間として戦っていく、というイメージ。このコミュニティを関西でももっと広げていきたいなということでこういう会をセッティングしています。

想像力と創造力

オーディエンスから:一つだけ質問いいですか?今回のイベント、We are the Change という言葉の通りだなぁと思って、全員が今までなかったものを作っているじゃないですか。僕のバックグラウンドは心理学なので、その視点から見ると、なかったものを想像する、新しいものをトライするってすごい高次元のことなんですね。「こういうものを作りたい」という想像力やその原動力をここまで発達させられたのって、自分の過去を振り返って何が原因だったと思うのか聞いてみたいです。

雪野:私にはNPO法人の代表をしている、母親代わりの方がいるんですけど、高校3年生の時に200人くらいの面白い大人に会わせるっていうことをしてくれて。その中でひとつづつカケラをもらっていって、「この人はこういうことをしている。じゃあ私だったらこれができる」っていうことを何回も何回も繰り返していった結果だと思います。

旬:僕は静岡の田舎の方で育ったんですけど、親の教育方針でゲームとか与えられなくて、基本的に外で遊んでいて、おもちゃも買ってもらえなかったので自分で一から作ったんですよ。バスケのゴールを魚捕りの網で作ったり、弓矢を作ったり。それが一番大きいかなと思います。あと親が読み聞かせしてくれていて、ジュラシックパークとかで想像力が育って、それと経験やスキルが合わさって何か形になってくるんだと思います。

ゆな:私は施設で「ごっこ遊び」をみんなでたくさんやっていて。学校ごっこだったり、家族ごっこだったり、資本主義ごっこだったり(笑)その時に、自分たちで勝手に物語を作ったりする中で、想像力がふくらんだなと思います。

あとは、今大学一年生なんですけど、児童養護施設出身の子どもの、四年生大学進学率って2%って言われるんですね。短大を合わせても12%で。どうやったら行けるかなっていうのを考えた時に、奨学金を借りたら行けるなって思って。色んな人に奨学金の情報知りませんかって聞いて回って、今奨学金を使って大学に行ってるんです。

自分がやりたいことを想像できて、色んな人に伝えていったら、色んな人が形にしてくれて。自分だけで作れることって本当に少ないけど、色んな人に言うことで3,700万円を集めることができたし、11,000冊の本を届けることができました。とりあえず自分がやりたいなってことがあったら、色んな人に相談してみようっていうのが身についたのが、形にする上でよかったのかなと思います。

渡辺:僕は最初から社会を変えようと思ったことはなかったんで、ただ職業柄、ありとあらゆる人に会うことに恵まれて、社会の矛盾に向き合うことも多かったです。そういう端々で何か変えないといけないんじゃないか、と思ったのが一つ。

もう一つは、元々小説家志望で、妄想癖があるんです(笑)。こうなったらいいな、ということをひたすら想像してしまう。悪いこともそうですけど。大学生の時、魚捕りが下手なヒグマと、漁村の少女サーシャの物語を書いたり(笑)そういう想像力もあるかなと思います。

直人:そこに至るまでの経験とかすごい大事だなと思っていて。アショカでも日本人アショカ・フェローの人生を振り返って、どのタイミングでイノベーションのきっかけがあったのかを話してもらう、ジャーニーオブイノベーションっていうプログラムも行っているので、ご興味のある方はお声がけください。

皆さんどうもありがとうございました!

対談のメンバー(※写真撮影の時だけマスクを外しています)

まとめ

「社会を良くするチェンジメーカー」という言葉を聞くと、「正義感を燃やし、鋼の意志を持って、自分を犠牲にしながら頑張る」というようなイメージを持ちがちですが、「ユーモアと隙を大切に」という渡辺さんの言葉にもあったように、声なき声を掬い取り、多くの人を巻き込んで社会を変えていくためには、余裕や楽しむ心が欠かせないのかもしれません。5人とも人間らしさに溢れていて、どこか惹きつけられるものがあります。

そしてゆなさんが大学進学やクラウドファンディングで経験した「他人の力」。自分一人でできることは限られているけど、やりたいことをみんなに伝えて相談したらできる、という言葉には、それを実現した本人ならではの重さがありました。

We are the Change. We are Changemakers. 今回は、そんな風に言える仲間やコミュニティを関西で広げていくためのキックオフイベントでした。全国の若者チェンジメーカーをサポートするユースベンチャーの取り組みに加え、大阪を中心に定期的に集まりを開催していこうと計画しておりますので、ぜひご参加ください。

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▼開催レポート①渡辺周さんの基調講演「探査ジャーナリズムの挑戦」

▼開催レポート②5人の若者チェンジメーカーによるプレゼン「踏み出し、つまずき、それでも前へ」


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