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第2回We Are the Change x Kansai開催レポート

昨年12月に続き、第2回We Are the Change x Kansai を4月9日に大阪で開催いたしました!

3人の若者チェンジメーカーたちが、社会を変えていくそれぞれの活動について、この半年間ないし一年間を振り返って発表しました。彼らの話を聞いた後、休憩の時間や対話の時間では熱を帯びた参加者の話し声が絶えませんでした。当日の様子を一部ご紹介いたします。
(協力:一心寺文化事業財団、ANA BLUE WING プログラム)

延原令奈 (21) Reina Nobuhara

自分が高校時代にウツになった経験から、中高生が立ち止まって考える時間「自分を知る授業」があったらいいのにと考え始めた延原さん。まずは中高生に直接伝えるのではなく、先生の卵である教職課程の大学生を対象に20回、計140人に対して「自分を知る授業」を開催してきました。

教育実習で自分の無知さを痛感した後で、教師でない自分が教育者教育改革の必要性を謳っていいのかと悩んだり。周りが就活している中、「このまま自分の疑問や違和感に挑戦したいけど、それでいいのかな」という漠然とした不安をずっと抱えていたり。そこで、それまでやってきていた活動を全て辞めるという決断をしました。自分が2年間続けてきた環境や、お世話になってきた環境を一旦抜けるというのは怖かったんですけど、活動自体から一度離れることを決めました。

今までの活動を辞め、就活も含めて他のことを経験することで視野が広がり、改めて自分がやりたいことに気づきました。それは、教員養成課程を改善していくことです。

デザイン思考の教材開発をしていく中で、経済産業省や文部科学省の方々と直接話す機会があり、彼らやNPO、企業などがこれからの教育について色々なことを考えていることを知りました。でもそれらを実践者として子ども達に届ける「教員養成課程」のアップデートは?それが成されていない事実に疑問を感じたんです。

延原さんから見て、今の教員養成に欠けている大きな2つのもの、それは「コーチング」と「ファシリテーション」の能力です。

「コーチング」とは、子どもの本音を引き出す力のこと。まさに「自分を知る授業」のように、対話を通して自分の特性や進みたい道、やりたいことなどを見つけていきます。そして、子どものやりたいという気持ちが出てきた時に、それを実現するために伴走していくのが「ファシリテーション」の能力。この2つの力を身につけている先生を育てるのが延原さんの新しい目標です。

自身が「探求学習」を体験したことがないのに、そのまま先生になって、見よう見まねで「探求」を教えなくてはいけないなんておかしい、と感じている延原さん。まずは学生自身がコーチングされる側、伴走される側になって体験した上で、他の人に対してコーチングしたり、伴走する経験を積んでいく仕組みを作ろうとしています。既に2つの大学で、授業や研修という形で実践することが決まっており、これから全国に広がっていくのが楽しみです!

▼延原さんの発表について、さらに詳しいレポートはこちらから▼


谷津凜勇 (18) Rinyu Tanitsu

2020年春、新型コロナウィルスで社会が混乱していた一方、以前よりも時間ができたという人も多かったはず。皆さんは、どんなことに時間を使いましたか?

当時高校1年生だった谷津君は、コロナ禍で一斉休校となった際、絵本と児童書を4,000冊読んだ経験と、高校生ならではの視点を生かしてフリーペーパー「月あかり文庫」を作成しました。

最初は趣味の延長でやっていたこの活動も、予想以上の反響があって、広がりを見せています。この2年間で8号のフリーペーパーを刊行し、累計12,000部を全国60ヶ所以上で配布するまでに至りました。最初は自宅のプリンターで印刷していたフリーペーパーも、今では地元の印刷会社さんに協賛してもらっています。

彼が取り組むのは、高校生の読書クライシス。活字離れが叫ばれますが、小中学生の読書量は実は下がっていません。しかし、高校生になると、誰からも強制されなくなるため、一気に本から離れてしまいます。そのため、谷津君は、読書を楽しむ心を育み、自分から次の本へ手を伸ばしていくような読書教育をしたいと考えています。

一番大きな変化は、自分達のスタンスが決まったことだと思っています。半年前は「子どもに本を読んでほしいけれど、どうしたらいいのかわからない」という大人を対象にフリーペーパーを作っていたんですけど、そうすると「なんで読書がいいのか」というような方向性になってしまって、それは自分達が発信したいことじゃないと気づきました。改めて活動の軸を考えた時に、読書の意義を教える先生や、楽しむだけで終わる友達ではなく「読書を楽しんできた『先輩』として、子どもたちと一緒に楽しみながら、一歩先、二歩先につながるような読書体験を届ける」というスタンスにたどり着きました。

自分が本好きになるきっかけとなった、私設図書館である「子ども文庫」を、もっと全国に広げるための仕組みづくりを考えた時に行き詰まってしまった谷津君。

考えたはいいけどイマイチしっくりきていない感覚がこの半年間くらいずっとあって。磯井さんという方に「砂場の論理」というものを教えてもらってモヤモヤが晴れました。子どもが砂場で楽しそうにしていると勝手に集まってくると思うんですけど、そこで「2つの山を作るのがノルマだ」とか言い始めたら面白くないよね、と。ただ楽しいから人は集まってくるのであって、そういう動機でしか人は動かないんじゃないかって言われた時にハッとしました。
結局、自分が楽しいから活動するだけなんだって思って。自分本位で動いてるんだ、それでいいんだって。僕がこの活動をやめたところで、死ぬ人がいるわけでも、めちゃくちゃ困窮する人がいるわけじゃない。だから自分が本当にワクワクできることを探すために、今はアウトプットを焦るより、調査をしたり教育学を学びたいと思っています。


山内ゆな (19) Yuna Yamauchi

※山内さんは体調不良のため、オンラインでの発表でした。会場からの拍手に驚く山内さん。

山内ゆなさんは、「全ての子どもが『好き』や『やってみたい』に挑戦できる社会」をビジョンに掲げ、児童養護施設の子どもたちに、情報を得る機会、体験する機会、施設以外との関わりを作ることをミッションとしています。

中でも、2021年5月から行ったクラウドファンディング「JETBOOK作戦」は、たくさんの人に児童養護施設について知ってもらい、その上で「人生で出会った最高の一冊」とメッセージを施設の子どもに届けるというもの。寄付を募ったところ、40日足らずの間に約5,400人から3,750万円ほどが寄せられ、希望のあった110施設にそれぞれ100冊を届けました。また、寄付者のメッセージと職業、都道府県を一つづつしおりにすることで、施設の外のことももっと知ってもらうきっかけにしました。

本としおりをきっかけに将来の夢が変わったという子がいたりとか、職員さんも忙しくてなかなかゆっくり話す機会がないんですけど、本がきっかけになって一対一でコミュニケーションが生まれたと聞いて、すごい良かったなと感じています。

それ以外でも、認知を広げる活動として特別養子縁組を推進するポスターを作り、朝日広告賞を受賞して全国の新聞で広告掲載されました。

インタビュー記事「特別養子縁組をもっと身近に

さらに、Amazon、YMCAと共同で、児童養護施設の子どもたちにプログラミングを教えるサービスを進めています。プログラミングを通じて、小さな成功体験を積んでもらったり、「好きだな」「何かやりたいな」という気持ちを見つけてほしい。身近な存在である高校生がメンターとして入り、一緒に成長するプログラムを作っています。

この一年間、成長したなと思うのは、「施設にいるからできない」じゃなくて、「施設にいてもできる」と思えるようになって、行動できたということです。10代で、あまり社会のことを知らなかったからこそ挑戦できたことがたくさんあったと思います。また、周りの人を引き込む、人に頼るというのも学びました。
私自身も児童養護施設に住んでいたので、この活動を知った子どもたちに「自分にも何かできるかもしれない」と思って欲しかったけど、そこは思い通りいかなくて、「ゆなさんだからできたんでしょ?」と言われてしまいました。やっぱりそこは一人ひとりにもっと寄り添った形を考えたり、今後は当事者を巻き込んで一緒に作り上げるということをできたらなと考えています。

子どもたちが掴むか掴まないかは別として、チャンスは平等にあるべきだと考える山内さんは、引き続き、色々なことを体験する機会、知る機会を届けていく計画を進めています。具体的には、企業と共同でソーシャル・スキルトレーニングや、色んな職業に触れる機会を作っていくそうです。

アメリカにPermanency Pact(パーマネンシー・パクト)っていうものがあるんですけど、(社会的養護を卒業した)子どもたち一人に対して、大人が5、6人つくことで、親ではないけれど身近な存在をたくさん作り、人と人とのつながりというものをどんどん作っていく。そんな仕組みもつくっていけたらと思っています。

まとめ

成し遂げたことだけではなく、活動を続けていく中での迷いや葛藤もシェアしてくれたユースベンチャラーたち。チェンジメーカーの生き方は「旅路」にも喩えられますが、半年前や一年前は見えなかった景色を前に、それぞれが既に次の目標を見据え、正解のない道をどんどん進んでいっています。

会場での対話の時間では、印象に残ったポイントに加えて、「自分の活動や生活と照らし合わせて感じること」も話し合いました。この記事を読んでくださった皆さんは、自分の生活と関連して、どんなことを感じましたか?

次回のWe Are the Change x Kansaiは、7月24日(日)の開催を予定しております。詳細が決まり次第、PeatixのページやSNSなどでお知らせいたしますので、お楽しみに!

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