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鬼ごっこ-9 プレイヤー弘樹 タイムリミット

 まさか、本当に裏切り者がいるなんて……。

 僕と藍子さんは鬼ごっこ警察署に向かった。

 これは僕の提案だった。

 藍子さんは事情がよくわからない、という表情をしている。

 行けば、おそらくわかるだろう。

 そんな直感的なものだった。

「弘樹君は、本当に裏切り者がいるって思うの?」

 藍子さんは不安そうに言う。

「多分……」

 僕は確定として言う事が出来なかった。藍子さんの気持ちを考えると、絶対に、とは言えない。

 大通りを歩くと、人の往来が多い。右から左から人が流れていく。

 雑多の中をはぐれないように進むと、見知った影が視界に入った。

「あれ……、智巳さんじゃないかな?」

 藍子さんにその人いる方を示す。

「本当だ……。え、じゃあ、智巳さんが?」

 いや、違う……。おそらくだけど。

「声をかけてみよう。多分、それで確証は得られると思う」

 藍子さんは頷き、僕についてきた。

「あの、もしかして、智巳さんですか?」

 智巳さんは僕を見ると、不快さを露わにした。面倒くさそうにため息を吐く。

「はぁ、またですか……。私には和志君という尊い存在がいるというのに、こんな場所で声を掛けられるとは。あなたのように低俗な人種に声をかけられるというのは、あまりに不愉快です。二度と声をかけてこないで下さい。あ、和志君の香りが……。あっちからですー」 

 言い切ると、智巳さんは足早に去っていった。その先には、和志の姿がうっすらと見えた。

「今のは……。もしかして……」

 藍子さんも僕と同じように考えているかと思ったら、それは違っていた。

「今の智巳さんは、一緒にいた人じゃないよ」

「えっ?」

「だって、さっきのは弘樹君に対しての言葉じゃないと思うし。多分だけど、男性に声をかけられた事に対する拒否反応、みたいなのだと思う。弘樹君が嫌なんじゃなくて、声をかけられた事が嫌だったんじゃないかな」

 藍子さんの言葉の通り……。だとしたら、僕の考えも……。

「今の智巳さんは、さっきの男性と同じ……。って事か……。そして、さっきの和志が本物ならば……」

『時間経過。時間経過。イチ輪、没収』

 僕の残り時間は、一時間を切った。

 裏切り者は……。

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