見出し画像

Breakfast Zulu Tea(ブレックファスト ズールー ティー) ―アフリカから来た控えめな忍者

 少し前に紅茶ブランドTWGのウェブサイトで、アフリカ産の茶葉を見つけた。何となく紅茶と言えばインドやスリランカがイメージで、アフリカで産出される印象がなかっただけに、面白そうだと思っていくつか購入した。今回はその中から、Breakfast Zulu Teaを紹介する。
 
 大変勝手だとは思うものの、アフリカと言えば南に位置するため、何となく香りもトロピカルなのだろうと推測していた。しかし、実際はものすごく控えめな印象を受けた。先日まで紹介していた雲南省の紅茶達は、大人しい中にも烏龍茶を彷彿とする静かな強さのようなものを持っていた。一方、Breakfast Zulu Teaは主張が少ない。個人的に、雲南省の紅茶達が精悍な武士なら、今回の茶葉は姿を見せることに重きが置かれていない忍者のようだ。
飲んでみると、香りから受けた印象と同様に大人しい。加えて、地理的にはてんで違う位置にあるはずなのに、Imperial Keemun(インペリアル キーマン)のような汎用性の高さを感じる。雲南省の茶葉を試したときにも、オールマイティーだと思った覚えがあるが、それを上回る。
 飲み方としてはストレートだけでなく、何でもそれなりに対応可能と想像する。また、他の飲み方として濃いめに抽出した後にミルクを入れてみたところ、こちらもほっこりする味わいで良かった。ミルクを試す前は控えめな個性から、味がぼけてしまうことを危惧したが、結果的に下支えしてくれた。恐らくレモンでも、同じことをしてくれるだろう。試していないが、少しのレモンであれば穏やかな個性との均衡が取れると推測する。
 
 ペアリングをする場合は、絶対に料理や菓子がメインになることを念頭に置いておく必要がある。ただ、大人しい茶葉であることに変わりはないため、あまりにも濃厚な味わいのものは、食事の場合もスイーツの場合も、おすすめはしない。
 料理の場合は、あまり手の込んでいないオープンサンドのようなものが良い。前述の通り、濃い味とはバランスが取りづらいため、マヨネーズ等のしっかりした風味付けの要素は控えた方が上手くいくはずだ。個人的には、モッツアレラチーズとスモークサーモンのオープンサンドが良かった。チーズの中ではさっぱりした方に分類されるであろうモッツァレラとサーモンの塩気と程よいオイルが、紅茶ともぴったりだった。
 スイーツの場合も、濃厚さが前面に出たチーズケーキやチョコレートケーキ等は紅茶が負けてしまうと思われる。シュークリームやロールケーキのような素朴な味わいの物や、シンプルな焼き菓子等がおすすめだ。試した中では、オレオを混ぜたリコッタチーズとイチゴバター、それに生のイチゴを使ったフルーツサンドが良かった。オレオを入れたリコッタチーズとイチゴバターの程よいまろやかさに、いちごがアクセントになっており、さっぱりとした中にも少し濃厚さが漂うサンドイッチが、この大人しい紅茶と相性抜群だった。
 
 最後に、Breakfast Zulu Teaは量り売りのみの販売だ。加えて、汎用性の高さはありつつも、マリアージュを考える際には多少気を付ける必要がある。素敵な茶葉であることには変わりがないが、ペアリングのことを考えずに購入するなら、Imperial Keemun(インペリアル キーマン)を始めとする別の茶葉の方が良いだろう。ただ、紅茶単体で楽しみ、少しだけ菓子を添えるようなイメージなら良い選択の1つと言えそうだ。

breakfast Zulu Teaの量り売りが入った袋。


少し前に、美味しい紅茶の淹れ方の動画を制作しました。映像でチェックしたい方はこちらをご覧ください。↓

記事で確認したい方はこちらをご覧ください。↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?