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コロナ危機における「よみきかせ動画」の著作権、日本ではダメでアメリカではOKなのはなぜ?

世界的に流行している、子どもたちへの「よみきかせ動画」ですが、日本では「著作権侵害では?」との声が聞かれました。

調べてみると、日本とアメリカで、よみきかせ動画の著作権に対して大きな対応の差があることがわかりました

実際に、4月20日のNHKニュースでは、出版各社が「よみきかせ動画の無断公開やめて」と訴えているようです。

「よみきかせ動画」著作権の解説 アメリカ

一方、アメリカの図書館関係者向けのニュースでは、3月にこんな記事が出ています。

コロナウイルスとオンラインのよみきかせ動画とよみきかせライブ配信:
そのフェアな使われ方

Online Story Time & Coronavirus: It’s Fair Use, Folks March 24

アメリカの著作権には、例外として「fair use」というものが定められているそうです。「fair use」は、公共の利益などを考え、できるだけフレキシブルであることが求められる使われ方だそうです。

「fair use」のキーワードは以下の4つ。これに加えて、自然災害などの、社会状況も考慮するのだそうです。

The purpose of the use (使用目的)
The nature of the publication (その著作本来の性質)
The amount of the work used (使われる量)
The effect on the market for the work (市場への影響)

Upon looking at these four factors, we come to the conclusion that reading a book aloud to kids is a nonprofit activity that benefits society, and even if we plan to read the entire book (which is typical for children’s stories), the act will likely serve to enhance sales of the book by bringing attention to it. So, story time is covered by fair use, and there is no need for permission or a licensing fee.

4つの要素を考慮した時、子どもへの音読は非営利の活動であり、たとえ丸一冊を読む行為でも、公共の利益が高い。この行為は、本に注目を集めるため、本の売り上げに貢献するとも言える。このことから、子どもの本の音読はfair useであり、出版社や著者から許可を得る必要はない。

この記事ではさらに、コロナの感染拡大の中で、絵本のよみきかせ動画への著作権のあり方についてこのように書いています。

In our current situation, the public can’t access library materials because of widespread library closures. Social distancing is keeping students out of classrooms, so all learning is taking place online. Parents and caregivers are doing more educating in the home.
More than ever, sharing story times digitally benefits society, so it falls squarely within fair use.
今は、コロナ危機の影響で学校も図書館も閉まり子どもたちは本へのアクセスができない状況。学校の授業もオンラインに移行し、保護者は家の中だけで子供を教育しないといけない現状がある。
今、かつてないほどにオンラインへのよみきかせ動画の投稿は、社会にとって有益であり、fair useの範囲と考えるべきである。

絵本は安いものではありません。

コロナの影響で、経済的な不安が広がる中で、教育のために絵本をたくさん買える家庭は多くはないのではないでしょうか。

アメリカでは、長期に渡る休校で一度学習が長期的に遅れると、復学後もその遅れを取り戻せないと言われています。2005年にアメリカ東部を襲ったハリケーンカトリーヌの際の子どもの学力の追跡調査では、「災害時の休校の影響は想像以上に大きく、進学率に大きく影を落とし、ほとんどの子どもは学力の遅れを取り戻せなかった」という結果だったそうです。
休校と親の収入が減ることが同時に起こることで、学校に通い出してからも困難が続くと言うことでした。

コロナ危機による休校で、子どもたちの教育格差がより深刻になる心配があります。

宣伝効果は?

アメリカで子育て中の親たちに、よみきかせ動画を見て、その絵本を買ったことがあるかと聞いてみたら、買ったことがあるという方が多くいました。小さなこどもは、気に入った本を何度も読みたがることが多くあります。一度動画で見たら、もう本は読まなくていい、とはならないようです。

「絵本を買う前に、内容を確認するためによみきかせ動画を利用する」という意見もありました。アメリカで絵本を買うと、一冊2千円ほど。プレゼントにするにしても、内容がわからないままこどもにあげるわけにもいかないし、適当に買えるほど安くはない、よみきかせ動画を見て確認して気に入ったら自信を持って買えるという意見もありました。

まとめ

ただ単に「著作権」を厳しく取り締まったところで、肝心のクリエーターに利益が行くとも限りません。公共の利益や、よみきかせ動画による宣伝効果も考えて、著作権の議論を進めていくべきではないでしょうか。

このような事情を考慮して、明日少女隊は、当面はアメリカで出版されている絵本のよみきかせ動画を制作しました。ぜひ↓のリンクからご高覧ください。


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