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一分小説

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明日ノ澪の一分小説
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#物語

【一分小説】蜘蛛

【一分小説】蜘蛛

近所の商店街で出会った蜘蛛に声をかけた。
「きみ、家でよく会うわね」
蜘蛛は驚いた様子ですこし後退りしてから私を見てこう言った。
「ごめん。よく覚えていないんだ。人間はみんな同じような顔をしていて、見分けがつかなくて。」
私は軽率に共感した。
「たしかに私の方も、絶対にきみだって確証がないまま声を掛けたかもしれない。」
蜘蛛は微笑んだみたいに足をカタカタと動かす。
「でも今日こうして会ったから、良

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