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【東洋医学のいろは】鍼はなぜ効くの?

こんにちは。

突然ですが、みなさんは鍼の効果について不思議に思ったことはありませんか?なぜあの細い鍼を刺すだけで痛みが緩和されるのか、不思議ですよね。

今日は、鍼の刺激が身体の中でどのような生理反応を起こしているのか、簡単にお伝えしたいと思います。

鍼が効く理由①軸索反射

皮膚に鍼を刺すと、皮膚に赤みが出ることがあります。
鍼灸師の間では、「発赤がみられる」とよく言うのですが、これは血行が良くなっていることを示します。
これは個人差が大きく、敏感な人ほど発赤しやすいと言われていますが、一方でまったく反応が出ない人もいます。

鍼を刺すとその刺激は脳(中枢)に伝わりますが、一部の刺激は局所(末梢)にも伝わり、血管拡張神経に作用して血管を拡張させます。その結果、血流が改善します。

例えば、腰痛などで痛みが起きている場合、血管が収縮し、血流が悪くなっていることが考えられます(そのほかにも色々原因はあります)。
鍼を刺すことで、血管が拡張し、血流がよくなれば、筋や神経に酸素などの栄養が届きやすくなるため、痛みが改善されます。

求心性神経線維の終末にある受容器を鍼で刺激すると、インパルスは求心性に伝達されるが、軸索の枝分かれ部分から逆行して末梢にインパルスが伝わり、その神経末端部からも脊髄に於けると同様な神経伝達物質が遊離され、血管拡張神経に作用し、血管の拡張が生じて血行が盛んになる。

『はりきゅう理論』医道の日本社より

鍼が効く理由②ゲートコントロール説

わたしたちは痛いところがあると、自然とそこに手をあてたり、さすったりします。そうすることで痛みがやわらぐことを感覚的に知っています。
これがゲートコントロール説です。

一般的に、痛覚刺激は細い神経線維が伝え、触ったり押したりする触圧覚の刺激は太い神経線維が伝えます。

神経には伝達速度が存在し、通常、細い神経よりも太い神経のほうが早く脳に到達します。

つまり、痛み刺激よりも、手で触る、圧迫する刺激のほうが速く脳に到達するため、速度の遅い痛み刺激がぼやけます。

これは、脊髄後角(感覚神経が通る場所)のSG細胞がゲートとしての役割を持ち、痛み刺激をコントロールしているからだと考えられています。

鍼の刺激が入ることで、SG細胞が鍼の刺激を優先し、もともとあった痛みの刺激を抑制するように働くことで鎮痛が得られると考えられています。

通常の生体では太い神経線維からの入力が細い神経線維からの信号を抑制するゲートのような機構が脊髄にあって、痛みの感受性を調整していると仮定したものである。
脊髄後角のII層の膠様質(SG)にある細胞がゲートを開閉する役割をもつと考えた。

『はりきゅう理論』医道の日本社

さらなる研究が待たれる

鍼刺激による作用は、鎮痛の効果だけでなく、自律神経や免疫系、内分泌系にも影響を与えていると考えられていますが、まだ確かなエビデンスはなく、さらなる研究が待たれます。

ヒトに対する自律神経反射として、その有用性が報告されているものとしては、前立腺肥大による排尿障害や、本態性高血圧に対する鍼通電療法(鍼に電流を流す)が挙げられます。

また、米国国立衛生研究所(NIH)は、術後および化学療法による吐き気、嘔吐、悪阻、術後の歯痛に明確なエビデンスがあることを確認した、と発表しています。

鍼灸の効果をエビデンスという西洋医学の基準に基づいて示さなければならないとすると、その効果は限定的なものになってしまいます。

前回の記事でもお伝えしたとおり、東洋医学はあくまで経験則に基づく医学であり、そもそも西洋医学の指標と同じ土俵にのせてその効果を語るには限界があります。

それでも、欧米を中心に鍼灸の研究は盛んに行われており、緩和ケア病棟や米軍基地などでも積極的に鍼灸が取り入れられていることは事実です。

日本でも一部のがんセンターや大学病院で鍼灸治療が取り入れられていますが、まだまだ諸外国に比べると一般的ではありません。

鍼灸治療が医療として多くの医療機関や介護施設に取り入れられる日がくるように、わたしも含め鍼灸師が日頃から学びを怠らず、互いに研鑽し、真摯に治療に取り組む姿勢が大切ですね。

さて、次回の記事では、わたしが治療に取り入れている井穴刺絡療法についてお伝えしたいと思います。一般の方でもセルフケアができるおススメの治療法です。

最後までお読みいただきありがとうございました。
Have a nice day!




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