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ページェントの思い出

子ども達ふたりが通った幼稚園はキリスト教を主体とした園。
12月には全学年参加のクリスマスの劇(クリスマスページェント)が、施設内にある教会で行なわれた。

年少さんは白い耳のついた帽子を被った羊に、
年中さんは額にキラキラ輝く大きな星をつけて星に、
年長さんになると、マリア、ヨセフ、羊使い、三人の博士、宿屋、天使、導きの星などのそれぞれ個々の配役がある。

☆長男編☆
我が家の兄弟、兄の方は、年少の羊を演じた際にパプニング発生。
日頃から集団行動が苦手で、ある程度覚悟してはいたのだが、

「なんで羊なんだよー!ばかやろー」
「この教会をぶっ壊してやるーーー!」

聖なるクリスマスとはほど遠い台詞を本番中に大声で言い続けたため、先生に抱っこされ劇途中にて強制退場。

観覧席から漏れ聞こえるクスクス笑いの中、恥ずかしさで身を小さくしていた幼稚園一年目の私。

劇終了後の記念撮影にはご機嫌顔で、先生の抱っこで舞台に帰還。
職員室でアンパンをもらったとたん、笑顔になったとのこと。おお、恥ずかしや。

翌年、長男の年中「星」は、何とか無事に済み、園生活最後の年長では「宿屋」の役だった。

イエスを身籠っているマリアとヨセフは、出産のために今晩の宿を探す。
一軒目、二軒目と宿は満室。
三軒目の宿屋にて、「馬小屋なら空いているのでどうぞ」という展開。

長男が演じたのは二軒目の宿屋。
舞台に設られた大道具、宿屋の扉から出てくる時、なぜか四つん這いスタイルでぬるりと這い出してきた。

「貞子か!!」

それはテレビ画面から這い出してくる映画「リング」の貞子のよう。
息子の成長を喜ぶべき場面なのに、見た目の衝撃大。

☆次男編☆
一年目の「羊」も二年目の「星」もさらりと難なくこなした。
三年目の配役は、兄と同じく「宿屋」をセレクト。
が、彼の演じる宿屋は、三軒目の宿屋で、マリアとヨセフに馬小屋をすすめるという重要任務が課せられている。

宿屋はふたりで一組。
すなわち次男にはペアを組む相手がいた。
ふたりでなら安心、そう思っていたのだが、直前にハプニング発生。

ペアの相手が当日病欠。
(先生から「一人で演じることを伝えて、なんとか園に連れてきてください」と電話)

「ぼく一人じゃ出来ないーーー!無理ーー!」
朝の布団の上で泣きわめく、泣きわめく。

出来る、大丈夫、たくさん練習したもの。

「無理ーーー!いやーーー!今日行かないーー!」
登園を嫌がって号泣。

でも(  次男 )が行かないと劇は出来ないよ。
宿屋さんが馬小屋に泊めてあげないと、マリアさんとヨセフさん、泊まるところなくなっちゃって困るでしょう?
マリアさん、イエスさまをどこで産めばいいの?

「いやいやいやいやいやー!」
絶叫する次男にめんどくさくなり、
「分かった、今日頑張ったら好きなもの買ってあげる!」
「え?」
「うん、ページェント終わったらそのままトイザらス行くよ。それでいい?」
「う、うん。いいの?じゃあ、ぼく西鉄バス欲しい」

(次男がバスのおもちゃを欲しがっていたのを分かっていたので、物で釣る作戦を決行)
本当はもっと丁寧に説得すべきであろうところを、直ぐ楽な道を選ぶ私だ。今も昔も。

園に着くと、先生たちがホッとした表情で
「(  次男 )くん、来てくれたー!」
と出迎えてくれた。

次男にがんばって!とジェスチャーして保育室前で別れ、教会の観覧席に向かった。

本番、三軒目の宿屋にマリアとヨセフが到着。
次男が扉を開けて登場。
貞子スタイルではなく、ちゃんと普通に。よしよし。

あれ?宿屋はペアだよね?なんで(  次男 )一人なの?と、ペアの病欠を知らないママ友が表情だけで私に問いかける。
黙ってうなずきで答える私。

トントントン、宿屋さん、どうか一晩泊めてください
ここの宿屋は、いっぱいですよ
困った困った、どうしよう
馬小屋ならば、空いています
さあさあどうぞ、お泊まりください
ああ助かった、ありがとう
(宿屋、マリアとヨセフを扉の中に入れてあげる)

泣いた。
ちゃんと出来た次男の姿に。
見るとママ友も目にハンカチ。
頑張ったね、よく頑張ったね。

☆☆☆☆☆☆

うちにはまだその時購入した西鉄バスおもちゃがある。
ふたりとも遊ばなくなってはいるが、とってある。
サンキュー、トイザらス。

マリアの役を希望したのにじゃんけんに負けて泣いた子。

男の子で天使の役の衣装、背中の羽が恥ずかしいと照れまくった子。お母さんと絵本を読んで、天使は男でもあり女でもあるんだねと先生にお話ししたそうだ。

たくさん練習したのに当日発熱でお休みだった子。

子どもの数だけそれぞれ思い出があって、本人達は忘れてしまっていても、保護者はおぼえているのではないかと思っている。

本番を迎えるまで見守るドキドキも、演じている姿の感動も、クリスマスの大切な思い出だ。

舞台の袖には大きな大きなツリー。
キャンドルの火がいくつも揺らめいて、讃美歌を歌い、牧師先生のお話を聞いた。
いつもの教会が少し違う空気に包まれた。

小さな宿屋さんが扉を開けて出てきた姿、何年経ってもずっとおぼえているよ。



お読みいただき、ありがとうございました。

※見出し画像と下記写真は、当時の幼稚園用務員さんの作品。
宿屋の扉です。
ページェントの舞台道具をミニチュアにした木工細工。
デザインも色も劇中の大道具とそっくりです。
園で用務員さんが販売していたのを購入。(この扉は開閉します)
籠の中ですやすや寝ているベビーがイエスさまです。

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☆☆☆☆☆☆
この記事は川ノ森千都子さんの企画に参加しています。
千都子さん、素敵なクリスマス企画をありがとうございます。
メリークリスマス!


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