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特急スーパーおおぞらの旅

電車好き兄弟のいる我が家の旅行計画は「どこに行くか?」ではなく「何に乗るか?」で始まることが多い。

が、まれに例外もある。「どこに行くか?」が優先されることもある。

私と夫の先輩が北海道の帯広に住んでいる。子どもたちが生まれる前、夫婦で帯広に行ったことがあった。子どもたちはまだ北海道に行ったことがなかったので、4人で行ってみようか?と"行き先"の方が先に決まった去年の夏休み前。

そしてこの先輩、電車が大好き。うちの子が電車好きだと話したら、かなりマニアックな専門書をたくさん送ってきてくださったことがあり、その御礼も子ども達と一緒に直に伝えたかった。

「今度の夏休みに北海道の帯広に行こうと思っているの。何か乗りたい電車ある?帯広に一泊して、そこから移動してどこかでもう一泊して…っていうのはどうかな?」と兄弟に話してみると、兄は熟読し尽くした電車本をめくりながら

「帯広、帯広かー。じゃあさ、"おおぞら"は?札幌までは行けるよ」

兄が提案してくれたのは「特急スーパーおおぞら」、釧路ー札幌間を4時間ほどかけ走行する特急。帯広から札幌までは約2時間半。
こうして2019年夏休みの「何に乗るか?」は決まったのだった。

北海道に到着
帯広空港まで私たちを車で迎えにきてくれた先輩ご夫妻。「ここのがいちばんおいしいんだよ!」とお薦めの豚丼をお昼にいただいた後、「電車好きな子たちにぜひ見せてあげたい」と案内してくれたのは旧国鉄時代の駅。今は駅としては使われてはいないが、この素敵な駅名が人を呼んで、ちょっとした観光スポットになっていた。

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無数に貼られたお札のようなものは「幸福駅」の切符を模した紙で、売店で購入することが出来る。ここに願いを書いて駅舎に貼ると叶うのだそうだ。
兄「大切な友達と日本一周電車の旅に行けますように」
弟「全国の駅をみたい」

幸福駅には旧国鉄時代の車両が数両展示されていて、車両に触れたり、車内に入ったり、線路の枕木や砂利(バラスト)に触ったりも出来た。子どもたちは喜んで遊びまわった。幸福駅の後も、今は使われていない古い駅や展示車両を見たり、「帯広に来たらおやつはここで」と六花亭ガーデンに連れて行ってもらったり、先輩ご夫妻のおかげで楽しい帯広めぐりができた。

特急スーパーおおぞらに乗車
駅に近いのが便利そうだから…という理由だけで選んだJR帯広駅前のホテル。チェックイン後、我々の部屋の窓から帯広駅や電車が見えることがわかり、兄弟は大興奮。

「いつ電車がくるか気になって眠れない~~~」
と言って遅くまで窓に張りつきながら駅を眺め、朝も早くに起きては
「"おおぞら”がきた!いや〝とかち”かも……」
と騒いでいた。このホテルはサイトに「客室によっては窓から帯広駅発着の電車がご覧になれます」って入れたらいいと思う。電車好きには需要あるかと。
さあ、いよいよ乗車。

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「特急スーパーおおぞら」到着!

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ゆっくりとホームに入ってくるその雄姿、大自然のなかをたくましく走る自信に満ちている。青空色の車両!ヘッドマークの鶴がかわいい!(LED表示でこの写真だと見づらいのですが、鶴がいます)

帯広駅を出発し、振り子式特急の揺れに身体が徐々に慣れてきた頃、窓の外が暗くなってきた。突然の雨。今朝は青空が広がっていたというのに。次第に激しくなる雨が窓を強く打ちつけるのだが、この特急の中に居れば大丈夫、という安心感に包まれる。

一駅ひと駅の距離が長く、どこまでも広がる景色。トマム駅、占冠(シムカップ)駅、新夕張駅を過ぎて、私は今、北海道の中央部の下のほうを横に横に移動しているのだと、あたまの中に地図を描いて想像する。南千歳駅の頃にはすっかりいいお天気になっていた。

兄は外の風景を眺めては、景色や駅をビデオカメラで撮影をしていた。
弟は昨日も今日も朝早くからの移動に疲れたのか、夫に寄りかかって居眠り。昨晩先輩とのお酒が進んだ夫も、同じく居眠り。

「車内でのお昼用に」と買っておいた豚丼弁当を、起きていたチーム(兄&私)が先に食べた、ずるい!と寝起きの弟に怒られる。ごめん、ごめん。だってお腹すいちゃったんだもの。居眠りチーム(弟&夫)もお弁当完食。
「昨日連れていってもらったところのほうがおいしい」と全員の意見が一致したころ、終点の札幌駅に到着した。

私たちが乗った時「特急スーパーおおぞら」だった名称が、今年2020年3月ダイヤ改正から「特急おおぞら」に変更されたと知った。兄弟、スーパーに乗れてよかったね。先輩、いつかまた帯広に遊びに行きますね!







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