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シュークリームとケチャップ


シュークリームとケチャップ

シュークリームとケチャップは兄弟です。

ふたりは毎日ケンカばかりしています。

お兄ちゃんのシュークリーム。

弟のケチャップ。

ふたりはケンカばかりしているので、

ある夜のこと、お母さんがあくまになってしまいました。

おそろしいお母さん。

いつものお母さんとは声もしゃべり方もちがいます。

「こわい、こわい、こわいよー」

ケチャップは泣き出してしまいました。

シュークリームは考えました。

どうやったらお母さんをもとに戻せる?

その時、ふたりの心の中に、いつものお母さんのやさしい声がきこえてきました。

「シュークリーム、ケチャップ、お母さんのお鼻をふたりで一緒にツンしてみて。そうしたらお母さん、きっともとに戻れるから」


ふたりはあくまのようなお母さんのお鼻を、せーの、でツンしてみました。

お母さんは
「あれ?あれ?あれ?」
もとに戻ったのです。
シュークリームとケチャップの目の前にいるのは、いつものやさしい声のお母さんです。

おかあさーーん!!

ふたりはお母さんに抱きつきました。

「ありがとう。シュークリームとケチャップがいてくれたから、お母さん、もとに戻れたよ。ありがとう」

お母さんもふたりに抱きつきました。

3人はぴったりくっついて、なかよくねむりました。


シュークリームとケチャップは、本当はとてもなかよしなのです。

だってほらね、今もぴったりくっついて、同じ顔でねていますから。

これはお母さんだけが知っているひみつです。



◇◇◇◇◇◇

兄弟が小さなころ、寝る前に即興で私が作ったお話をしていました。

絵本の読み聞かせもしていましたが、ひとり5〜6冊×2人分になると、声がガラガラになるので、ある時から、絵本それぞれ2冊ずつのあとにお話ひとつのように、絵本+お話スタイルをとり入れることにしました。

兄の名前から「しゅ」をとった「シュークリーム」、
弟の名前から「け」をとった「ケチャップ」、
シュークリームとケチャップが出てくる冒険のお話が、特にふたりのお気に入りでした。

家族で行った電車の旅がベースだったり、三段落ちにしたり、ふたりが好きなヒーローや怪人や怪獣やアニメキャラが登場したりで、寝る前だというのに興奮させてしまうことも多く、余計にたいへんだったのも思い出します。
「あくまのお母さん」もラスボス的な立ち位置で登場していました。

私は、寝る前の子どもとの時間が好きでした。
すでにくたくたのヘロヘロなのだけど、絵本を読んだり作り話を始めると、妙にテンションだけが上がっていくのが分かり、ウヒョー、たーのしぃー!となる夜が少なくありませんでした。
もちろん気絶するように寝落ちする日もたくさんありました。

一方で、私が"あくま化"するのも日時茶飯事で、小さな事が常に大きな事へと化していました。
成長と共にエスカレートしていくケンカ。最初は口だったのが手になり、足も出たりします。ストップ!ストップ!!
私の怒りが頂点に達すると「お母さん、もとに戻れぇぇ〜」と言いながら、小さな手で鼻をツンと押してきた、ちび兄弟の姿を思い出します。
彼らのツンがあったから、なんとか人間に戻れました。
もっとうまく注意できないのかな、いつもそう思っていました。
ぜったいツンしてくれると信じて、甘えていたのだとも思います。

夫からはあくまの演技が凄すぎる、子ども達のトラウマになりそうだからほどほどに、といつも言われていました。
そう、ものすごく上手いのです、だってほんとは悪魔なので、ククククク。


◇◇◇◇◇◇

かすみさんの素敵な企画がずっと気になっていて、参加したいな、してもいいのかな、でも……とモジモジしていました。


すでに参加されている素晴らしい作品を拝読して、さらに心をぐぐぐーっと動かされました。

「私のnoteなので、その時やりたいと思ったことをやってみる」
今のこの気持ちを大切にしたいと思いました。

かすみさん、ありがとうございます。

※見出し画像は、シュークリーム作の怪人図鑑です。


◇◇◇◇◇◇
なんと、な、なんと、『シュークリームとケチャップ』を朗読していただきました。嬉しい、嬉しすぎる……。こんな気持ちになるのですね。
朗読してくださったのは「読書KIDS 親の会」のメンバーのおひとり、みほさんです。

みほさんのお声にあたたかく包まれました。ありがとうございました。









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