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おやきと文学 ー 微熱さんのブックカフェ ー

連休最終日、夜9時をまわった池袋の街はまだまだ元気いっぱいだった。
人の波をかき分けながら、微熱さんとふたりで歩いた。  

「向こうから若者がいっぱい来るー」

ふたりとも、先ほどの打ち上げでいただいたごはんでお腹がいっぱい。

同じ方向だったので、行けるところまでご一緒しましょうという流れ。

「若者が多いね、若者のエキスを吸おう!」

雑踏のなか笑いあっていた我々だが、実は年齢差は20くらいある。

でも微熱さんといると、そういうものを全く感じない。
noteのなかでも、現実にお会いしても感じない。

いいだろ、独り占めだぜとエロオヤジのような気持ちは少しあったが、心のなかは、今日の素晴らしい時間をひたすらに思い出していた。

たぶん、微熱さんもそうだったんじゃないかな。


記憶がフレッシュなうちに、ブックカフェのことを書いてみようと思う。

微熱さんが noteを書かれてから……と思っていたけど、急に書きたくなってしまったから。

私は、一枚も写真を撮らなかった。
撮れなかったのではなく、撮らなかった。

写真係りのくまさんがいらしたこと(くまさんのワークショップ中はねむいねこさんが写真を撮っていたこと)もある。

しかしそれ以上に、写真ではなくて、自分の身体でこの日をおぼえていたいなと思っていた。
(後日、くまさんから送っていただいた写真を、にやけて繰り返し見ている。矛盾……そういうものだ)

なので、文章ばかりですみません。



私は準備から参加した。
13時半のオープンの30分前に、微熱さん含む5名の準備メンバーが集まる予定。

家から近い池袋だし、場所もだいたいあの辺だと分かるし……とたかを括っていたら、池袋駅から目的地までの思った以上にある信号に足止めされ、集合時間ギリギリになってしまった。

ふぅふぅ言いながら着くと、電子ロックキーに奮闘する微熱さんとねむいねこさんがいらした。

くまさんとリチさんもいらして、ご挨拶。

入室するやいなや、微熱さんが的確に指示出しをしてくれて、それぞれ準備に取り掛かった。

初めて訪れた場所が、だんだんと微熱ブックカフェになっていく。

たくさんの集まった本、くまさんのワークショップの材料のとう、籐を柔らかくするためにお湯をはるたらい、差し入れのお菓子やお茶、冷蔵庫に寝る長野からきたおやき(微熱さん手作り)……

微熱さんがお湯を沸かし、ねむいねこさんが近所のスーパーにお買い物に行ってくれて、準備は万端。

30分はあっという間で、気がつくとスタート時間だった。

ひとり、またひとりと参加者の方々がやってくる。

入り口で参加費をいただき、名札に名前を書く。

どこに居てもいいし、何をしてもいい。
何もしなくてもいい。
本を読むことも、その人の自由。

14時からワークショップが始まるのは決まっていたのだが、あとはどんなふうに過ごしてもいい場所だった。入退出も自由。(退出のときは微熱さんに一声かけるお約束)

ブックカフェは、手前の、ワークショップをするスペース(テーブルと椅子)と、奥の、本がある部屋(テーブルとソファー)の二つの部屋に分かれていた。
仕切りはない。

奥の部屋のテーブルに広げられた本には、丁寧なポップが添えられているものも多く、本を送ってくれた人の気持ちが伝わってきた。

私はワークショップの様子を近くから眺めたり、奥の、本のある部屋を遠くから眺めたり、ソファーに座って本を読んだりして過ごした。

猫柄のエプロンをまとった微熱さんは珈琲を淹れ、「ブラック?ミルクもあるよ」と絶妙なタイミングでみんなにサーブしていた。

紅茶やジュースもたっぷりあって、差し入れのお菓子もたくさん。

電子レンジのチン!の音。
微熱さんが作って長野から持ってきてくれたおやきが、レンジで温められる。
次々とほかほかのおやきが振る舞われる。

かぼちゃみたらし、つぶあん、カレー、ピザ。

その美味しさに誰もが「もう一つ欲しいな」となった。
遠慮なんかしていられない美味しさだった。
皮も中身もすごいし、おやきのサイズが小さめで、ついついもう一つ、いただきたくなる。

私が過去に食べてたおやきとは違いすぎる。
本とおやきは合うなぁ。

おかわり注文を受けるたびに、微熱さんは笑顔だった。

ブックカフェに集う人たちは、微熱さんの催しだからきたのだと思う。

だが、入ってきてからの様子を見て感じたのは、それぞれが、心地よく「個々であること」だった。

本を読みに、選びにきたこと。

おやきを食べにきたこと。
珈琲やお茶を飲みにきたこと。

微熱さんに会いにきたこと。

今回のブックカフェには「おやきと文学」というタイトルがついていたのだが、まさしくそうだった。

図書館でも本屋さんでも古本市でもないブックカフェという体験を、私は初めて味わった。

それが微熱さんの催したイベントで、そこに自分が参加できたことがすごく嬉しい。

微熱さんが淹れてくれる豊潤な珈琲や、包み紙で包まれ、片手で食べられるようになっているおやきが、ブックカフェの時間をより豊かにしてくれたと思う。

そしてくまさんのワークショップも、微熱ブックカフェで開催されていたことがよかったと感じた。

「本を読む」と「ものを作る」が、互いに混じり合って流れて、いい空気を醸し出していたと思う。

籐が編み上がっていくのを直近で見ていることが出来て、自分も参加したかのような気持ちになった。

ワークショップ参加者の方々の作品は本当に初めて?と思うくらい、それぞれに素敵だったし、教えているくまさんにもしっかりと見惚れていた。

ブックカフェ参加のお土産に、ブックカバーとしおりをいただいた。

noteで拝見していたけれど、実物にはさらに感激だった。
色がすごくきれい。
ブックカバーに使うのがもったいないと思うけれど、やはりカバーに使いたいと思う。
何かを包みたくなる紙だ。
そして、丸みを帯びたデザインのしおり、とてもかわいい。

このしおり誕生のエピソード noteも好きだ。


ねぇ、微熱さん。

私はこんなに不思議で、そして豊かな時間を過ごせた経験、そんなにないよ。
ゼロではないけれど、数えられるくらいしかない。

あの日ブックカフェに来た方々は、どこからどうやって来て、どうやって帰っていったのだろうと思うくらい不思議。
私自身も含めて。
あの日の強風に吹かれてたどり着いたのかなぁ。

おだやかで、やさしくて、美味しい時間が流れていたことが不思議。

日常からワープした異空間のようだった。

誰と誰が仲良くて、フォローしてるとかしてないとか、 noteをやってるとかやってないとか、そういうのが何一つ無かったよね。

どうして私ここに居るのかなとか、ここに居ていいのかなとか、微塵も思わずに居ることが出来た。

持って帰ってこなかった本も、思い出せるよ。

手元にある4冊の本と、お土産のブックカバーとしおり。

これがあるってことは夢じゃない。

私はあの夜道で、若者のエキスを吸って帰ってきたのだと思う。

またいつかどこかで、ブックカフェがありますように。

微熱さんと、お会いできたみなさまに、心から感謝です。

ヘッダーの写真はブックカフェに持って行き、使ってもらっていた、りすのブックエンドです。(本の部屋の、テレビ前で使用)

4月に母と行った骨董市で見つけました。

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