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都電荒川線の旅

私の住む街には都電が走っている。早稲田と三ノ輪橋を結ぶ30駅を走る。

都電
チンチン電車 
都電荒川線
東京さくらトラム

どの呼び方でも、都電が走る地元の人には通じるはず。
公式サイトを見たら、現在「東京さくらトラム」が正式名称とのことだが、このnoteは私にいちばん馴染みのある都電(荒川線)で書かせてください。


我が家では「都電」か「チンチン電車」と呼んでいる。
チンチン電車と言う方が、兄弟が喜ぶから、前半部をはっきりリズミカルに発音してふたりを笑わせたりしてもいる。

ご存じの方も多いだろうが、この電車が発車するときに
チンチーーーン!
と音が鳴るのに由来しているらしい。

東京都内での路面電車はめずらしいからだろうか。
遠方から目的を持って乗りに来ているような方々も見かける。
一日都電に乗車しながら名所めぐりをする、のように。


地元民にとっては、都電は生活の足のひとつであり、街を走る元気なマスコットのような存在だ。

巣鴨に市のたつ日は、おばあちゃんとおじいちゃんで車内はぎゅうぎゅうのすし詰め状態になる。

ハロウィンの時は車内に装飾が施され、天井からジャック・オー・ランタンや黒猫や魔女がぶら下がって揺れていたこともある。

運転手さんたちはやさしい方が多くて、線路沿いで子どもが手を振ると振り返してくれたり、「チン!」と小さく鳴らしてくれたりもした。

小さなお子さんや赤ちゃん連れが乗ってくると、乗客は少しずつ奥に移動する。おばあちゃん達が泣いてる赤ちゃんの顔をのぞいてニコッと微笑む。

たまに「貸し切り」となっている都電を見かける。誰が、どのような目的で?と気になるし、電車を貸切るなんてすごいなぁと思う。


我が家と都電
うちの兄弟は電車好きなので、都電にはたいへんお世話になった。今もなっている。
乳幼児期は、どれだけぐずっていても都電が見える場所に行けば機嫌が直ったし(ただし、今度は引き離すときが大変)ほんの一駅二駅でも都電に乗るとご機嫌になった。

早稲田から三ノ輪橋まで全駅乗るだとか、飛鳥山公園に友達と遊びに行ったり、梶原で「都電もなか」を買ったり、荒川車庫前の「都電おもいで広場」で遊んだり、都電にまつわる思い出が尽きない。


長男と都電
子ども達の小学校への通学路は、都電の線路を越える。
踏切には、登下校の時間帯には交通指導員さんが必ず立ってくださる。
旗を手に、踏切を渡る児童らに声をかけながら、毎日安全に誘導してくださっている。

うちの長男は、電車が大好き。
1年生のとき、こんなことを同級生女子たちから聞かされた。

「(長男)くんのママ、聞いて、聞いて。
(長男)くんったらね、踏切の前で都電が走ると、もう都電の方に身体が行っちゃうの。それでね、そのまま都電を追いかけていきそうになっちゃうんだよ。だからね、私が後ろから、(長男)くんのランドセルを、くいっって引っ張ってあげるの。そうするとね、(長男)くん、ハッとして、あ、学校に行くんだったね、ってなって、私たちと一緒に学校に行くんだよ~」

ありがとうね。
しっかり者の女の子ちゃん達のおかげで、うちの子は都電を追いかけないで毎朝登校できているんだね。本当にありがとう。ありがとう。
私は心から感謝した。

そのことを長男に話すと

「あ、あれね。そう、オレ、都電見ると、つい一緒に走ってついて行きたくなっちゃうからさー。でもさ、三ノ輪橋方面に行っちゃだめだよね、早稲田の方じゃなきゃ」

と言うので、

三ノ輪橋でも早稲田でもない、君が行くのは小学校!!!

と笑ったのはもう5年も前のこと。

春からは中学校に行くんだね。
あの、ランドセルが歩いているくらい小さかった子が、学生服を着て中学校に行くのかと思うと……不思議。

「中学の帰り、雨が降ってきたりしたら都電に乗って帰ってきてもいい?」

長男の通う地元の中学校は、うちから歩いて通えるのだが、天候のわるい日や荷物の多い日は都電を利用している子も多いと先輩ママに聞いていた。
嬉しそうに話す長男は、これから始まる新しい環境に緊張しながらも、大好きな電車にひとりで乗る大人な時間も楽しみにしているようだ。

都電に見守られて大きくなったうちの子ども達。
これからもどうぞよろしくお願いいたします、都電さん。










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