見出し画像

ダグマ 天国への起爆ボタン【アジアンドキュメンタリーズ】

 アジアンドキュメンタリーズ二本目は『ダグマ 天国への起爆ボタン』を鑑賞。ダグマ(ボタン)一つでトラックに積んだ大量の爆弾を爆破させる、自爆テロ志願者の日常を切り取る。

 テロの中でも自爆テロほど恐ろしいものは無い。失うものが何も無い怖さは何よりも怖い。そして許されざる行為だ。でも本当に失うものは無いのか?そうだと決めつけていただけかもしれない。

 自爆テロは殉教者リストと呼ばれるリストにより順番待ちをしている。自分の番になった時アラーの名のもとに自爆を敢行することで、天国へ連れてってもらえるというものである。

 日本人からしたらバカバカしい話だ。でも、国と文化と宗教が違えば常識は覆る。生きる日常を送るのは、いつか来る死ぬためのもの。死ぬために死ねない。作戦決行を今か今かと待ち望み、意気揚々としている。作戦は様々な理由により、何度か中止され、生き長らえるが、作戦中止後の興奮はあたかもディズニーランドに行った後の子供のようだった。

 志願者の一人が順番待ちの間に結婚、父親となった。そのことで揺らぐ葛藤。あれだけの信念を持っていながらも殉教者から一人の人間に変化する。徐々に自身の選択に迷いを見せるそのリアルな葛藤が心に響く。

 自爆テロという行為はどのような価値観を持ってしても、決して許されるものではない。でも、それを行うテロリストもまた一人の血の通った人間であることを気づかせてくれた重厚なドキュメンタリーでした。

では、きっと、またいつか


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?