20230610──かめ滴く

玄関先の灰皿の横には子どもの頭ほどの大きさの甕
元々は大家のかじこさんがくれた芋焼酎が入っていた
甕雫という上等の焼酎である
それを住人で飲み切ってからはしばらく
古油を入れておく容器になっていた
天麩羅をしたあとの油を保管していたのである
そのあとは清水くんが梅干しを漬けるのに使ったが
黴が生えてしまった
清水くんは悲しそうに中身を捨てた
今その甕は灰皿の横に置いてある
残った塩が結晶している
行儀よく正方形に凝った塩の粒たちは
かえってぼくを不安にさせる
焼酎と油と梅干しを受け入れたこの甕の
深い谷底には
塩の花が咲いている
咲いている

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