【完全解説】VTuberって結局何者?
最近よく耳にする言葉、「VTuber」。つい最近生まれた言葉なので何が何だか全然分からない人も多くいることでしょう。
一方、なんとなく知識を持っている人もいると思います。「キズナアイでしょ?」「ニコ生主もどきでしょ?」「絵畜生でしょ?」「中身は全員おじさんなんでしょ?」「バーチャルキャバクラでしょ?」「人工知能でしょ?」「すとぷりでしょ?」などなど。
本記事ではそのような様々な理解度の人に対して、少しでもVTuberへの理解を深めてもらうことを目的としています。Part1まで読めばVTuberの初歩、Part2まで読めばVTuberの基本、Part3まで読めばVTuberについての大体の知識が得られるようになっています。Part4はおまけです。参考までに読んでいただければ幸いです。
Part1. VTuberってそもそも何?
皆さんはYouTubeというサイトをご存じでしょうか?
YouTube(ユーチューブ)というサイトではインターネット上で動画を共有することが出来ます。さらに、それぞれの動画には広告をつけることができ、動画の投稿者が広告収入を得られる仕組みになっています。
そこで、自分の作った動画をYouTubeに投稿して、その広告収入で生計を立てる人が現れました。YouTuber(ユーチューバー)です。代表的なYouTuberにヒカキンが挙げられます。
さて、本題のVTuber(ブイチューバー)についてです。正式名称は「バーチャルYouTuber」です。すなわちバーチャルなYouTuberです。意味不明だと思いますが、見れば何となく分かります。
▼VTuberの動画
ざっくり言えば、「アニメっぽいキャラクターが喋ってる」のがVTuberです。一番最初に話題になったVTuberがキズナアイです(上の動画でピンク色の人)。現実世界には存在しない、バーチャル世界のYouTuberなので「バーチャルYouTuber」と呼ばれます。今ではYouTubeとは関係なく、キャラクター自体をVTuberと呼ぶことも多いです。
さて、バーチャル世界だと謳っていますが、ほとんどのVTuberは生身の人間が演じています。機械音声などではなく、人間が喋っていて、さらに体も人間が動かしています。VTuberとは生身の人間がアニメっぽいキャラを演じるものだと思っていてください。
しかし重要なポイントとして、「生身の人間」という概念について、我々は触れてはいけません。簡単に言えばゆるキャラです。くまモンは人間が着ぐるみの中に入っていますが、我々はそれにくまモンとして接していますね。それと同じように、VTuberはキャラクターに人間が入っていますが、我々はキャラクターとして接する必要があります。
これがまずVTuberの前提知識です。
Part2. 現在のVTuberって何者?
さて、ここまで読んできて違和感を覚えた人も多いでしょう。
「いや、VTuberって中身の人間ありきのコンテンツだよね……」
そうです。VTuberはガワ(キャラクターのイラストのこと)も重要ですが、さらに重要なのは中身、中の人です。これについては賛否あるでしょう。「やっぱりキャラクター性が大事である」「中の人が人間味を消して、ロールプレイに徹するのが望ましい」と思う人もいることでしょう。
しかし、実際人気が出たのは中の人の魅力が出たVTuberでした。ロールプレイは控えめか、もしくは全くなし。あまりバーチャル感が無くなってきましたが、それが現在のVTuberの主流です。くまモンであることよりも、誰がくまモンを演じるかが重要なのです。
ではどうしてこんなことになったのでしょうか。理由はこれです。
・中身の魅力を出した方が面白いと分かった
VTuberが出てきた当初はバーチャル世界のキャラクターという真新しさがウケましたが、時間が経つにつれその感動は薄れていきました。そこでVTuberは動画自体の面白さで勝負する必要に迫られました。しかし問題なのは、キャラに縛られていると動画が面白くならないということでした。
VTuberのキャラクターとは、要するに背景に物語のないアニメキャラです。そのままでは魅力に欠けています。そのため、一定数のVTuberは背景に物語を設定しますが、それが動画に活きることはあまりありません。むしろ邪魔になることさえあります。「キャラに縛られずに自由に喋った方が面白いよね」というのは、2017年頃には既に多くの人が思うようになっていました。確かに、ロールプレイに徹するのはVTuberとしては美しいです。しかし結局のところ面白いのはキャラからの脱線(中の人の表出)であったりします。
中身の魅力で2018年にバズったVTuberが月ノ美兎(つきのみと)です。
清楚な委員長キャラでありながらアングラな映画やゲームを嗜むギャップや、女子高生とは思えないサブカル知識が人気を博しました。彼女が所属するにじさんじはVTuberの事務所として、VTuber界の方向性を大きく変えることになります。それは「2Dガワ」「生配信」という現在のVTuberの根幹です。
2Dガワとは「別に体動かさなくていいよね」という発想のもと、顔・頭だけが動くガワのことです。キズナアイなどの3Dガワと区別して2Dガワと呼びます。これによりVTuber新規参入のハードルがめちゃくちゃ下がりました。
そして、生配信です。それ以前にも生配信をしているVTuberはいましたが、にじさんじによりそれが主流になりました。動画を作る労力をかけずとも、雑談やゲーム実況をそのまま流せばいいということになり、これもまた新規参入のハードルを下げました。
これらのVTuber界の変革によって起こったのが、ゲーム実況者・ニコ生主の参入です。実況者や生主は、顔に自信がない、身バレ回避、などの理由により顔出しに消極的な人が多くいました。そんな人たちでもVTuberなら素顔を隠しながら活動することができ、さらに魅力的なガワを使うことで付加価値をつけることもできるということで、一気に参入が進みました。
こういうわけでVTuberは
バーチャルのキャラクター → ガワを被った実況者、生主
へと重心がずれていくことになりました。
(補足)
ここまで読むと、今やガワはただの覆面かのように思うかもしれません。ですがもちろん今でも多少のロールプレイはあります(個人差はある)。さらに、哲学的な話になりますが、ガワを被るという行為を経ることによって、中の人そのままではない新しいキャラクターが創造されるのだと私は思っています。言い訳くさくなってしまいましたが、ガワは単なる覆面であると一概に言うことは出来ないと強調しておきます。
Part3. 現在のVTuberについて詳しく
現在のVTuberは生配信が主流です。配信するサイトはYouTube、Twitchなどが挙げられます。TwitchでもVTuberと呼びます。普段はYouTubeで配信しながら、たまにツイキャスでガワを表示せずに声だけの配信をする人もいます。ガワがなくても、それはれっきとしたVTuberの配信なのです。
生配信の魅力は配信者、視聴者と時間を共有できるところです。配信がどうなるのか誰にも分からない、リアルタイムでしか味わえないドキドキ。さらには配信者とコメントでコミュニケーションを取ったり、コメント欄で視聴者と一緒に盛り上がったりすることで感じる安心感。そういう生配信の魅力は想像以上に凄まじく、VTuberの視聴者は2時間、3時間の配信でも平気で見続けたりします。とはいえ、時間が無くて生では配信を追えない人もいます。そういう人はアーカイブ視聴をしたり、切り抜き動画を見たりします。
さて、コメントのやりとりがひとつのVTuberの魅力ではありますが、人気Vtuberになるにつれて、自分のコメントが配信者の目に留まりにくくなります。そういったことを防ぐために視聴者はスパチャを投げます。スパチャは「スーパーチャット」の略で、YouTubeLiveの機能です。これはすなわち投げ銭システムで、お金を払うことで自分のコメントを強調することができます。
また、スパチャの金額によって強調できる時間が変わります。赤スパ(赤色のスパチャ)が一番上のレベルで、金額は1万円~5万円です。人気のVTuberだと、ひとつの配信で赤スパがいくつも飛び交います。すなわち、めちゃくちゃ儲かります。配信者は儲かってハッピー、視聴者はコメントを読んでもらってハッピー(もしくは貢げてハッピー)、とWin-Winの関係です。
ここまでVTuberの生配信について語ってきました。
もちろん、今でも動画がメインのVTuberはいますが、そういった人たちは「動画勢」と呼ばれ、主流ではありません。さらに、歌を中心に活動している「歌勢」もいて、VTuberといっても本当に多種多様なのですが、Twitterとかの議題で用いられるような「VTuber」は大半が生配信のVTuberを指します。
ここからは、有名な生配信のVTuberを二人紹介します。
一人目はホロライブ所属の兎田ぺこら(うさだぺこら)。
ホロライブはVTuber事務所の一つで、主な特徴としては全員が女性で、アイドルとしての活動も行う点が挙げられます。兎田ぺこらさん(ぺこちゃん、ぺこーら)は、特徴的な可愛らしい姿や声、面白い実況、リアクション、さらには配信へのストイックな姿勢が評価され、絶大なる人気を誇っています。
二人目はにじさんじ所属の葛葉(くずは)。
にじさんじもVTuber事務所の一つですが、ホロライブと異なり男女混合で、活動スタイルもかなりバラバラです。VTuberは当初男性ファンが多く、葛葉さんはデビュー当時珍しい男性VTuberでした。しかし独特のワードセンスや頭の回転の速さ、類まれなるゲームセンスによって男女問わず人気を集め、VTuber界隈に女性ファンを増やすきっかけになりました。
兎田ぺこらさんが所属するホロライブと、葛葉さんが所属するにじさんじは、2024年現在、二大VTuber事務所として君臨しています。他にもeSportsに特化しているぶいすぽっ!であったり、ななしいんく、.LIVE、あおぎり高校など、この他にも多くの事務所があります。また、事務所に所属していないVTuberもいて、そういった人たちは「個人勢」と呼ばれています。
例に挙げた2人は現在のVTuberの主流として紹介しましたが、これ以外にもマニアックな活動をしているVTuberはたくさんいます。Part4ではそんな多種多様なVTuberを紹介します。
Part4. 多様なVTuber
ここからはさらに話が広がります。VTuberの定義は今やめちゃくちゃです。あれもあり、これもありとなって、今では「名乗ったらその時点でVTuber」という風になっています。でもひとつ言えることは、VTuberは現実世界でのルッキズムや身バレ、社会的役割からの自由の体現です。現実世界では出来ないことも、ガワさえ被ってしまえばもう何でもありなのです。その点ではVTuberは未だに「バーチャルYouTuber」なのかもしれません。この章ではそんな多種多様なVtuberを紹介していきます。
まず紹介するのは「バ美肉」。これは古くからある概念で、「バーチャル美少女受肉」の略ですが、ガワは少女だけど中身はおじさんというハナカマキリみたいなVTuberのことを指します。これを知ったトラウマからか、「VTuberは全員おっさんなんだ」と思い込んでいる人もいますが、バ美肉は非常に稀です。
代表的なバ美肉Vtuberとして兎鞠まり(とまりまり)を紹介します。可愛らしい声ですが、中身が男性であることを公表しています。
次に紹介するのは歌系VTuber。
歌うVTuberと聞いて、去年の紅白に出演したすとぷりを思い浮かべる人もいるでしょうか。しかし彼らはVTuberとは名乗っていません。多分。テレビではガワを被るものの、リアルのイベントでは素顔を見せているようです。
実は今から紹介する人たちも多くがVTuberを名乗っておらず、バーチャルアイドルやバーチャルアーティストと名乗っていますが、バーチャル世界の仲間だということで紹介します。
星街すいせい(ホロライブ所属)
花譜(神椿所属)
凪原涼菜(RIOT MUSIC所属)
Nornis(戌亥とこ&町田ちま)(にじさんじ所属)
続いて紹介するのは漫画家、絵師VTuber。
VTuber文化はイラストを必要とするため、絵師や漫画家と相性が良く、中には自分がVtuberになってしまう人もいます。有名なVtuberとして、しぐれうい、佃煮のりお、伊東ライフなどが挙げられます。
最後に、動画勢を紹介します。
代表的な動画勢として、ぽんぽこちゃんねる、ヘアピンまみれ、ナポ・レボリューションなどが挙げられます(全員個人勢です)。生配信とは違って編集が加えられているため、面白さの密度が高く、配信を見ている時間が無い人にもオススメです。
挙げ始めるとキリがないので、この辺までにしておきます。VTuberは星の数ほどいるので、是非皆さんも好きなVTuberを探してみてください。
おわりに
巷に溢れるVTuberの言説は、的が外れているものが多いです。というのもVTuberの視聴者は一枚岩ではないからです。「バチャ豚」というVTuberファンを指す蔑称も、いわゆる旧来の男性オタクには刺さる言葉で、現に私にも軽く刺さっていますが、果たして全員に刺さるかと言われると微妙なところです。
まず、Vtuberには女性ファンも多い。単にゲームが好きでゲーム実況を見る人も多い。ただ歌が好きで聞いている人もいれば、Youtuberを見るのと同じテンションでVtuberを見る人も多い。
正確にキモオタを一突きするためには、これらを理解しないといけません。「VTuber」を一括りにして批判すると余計な人たちまで刺して無駄に反感を買いかねません。この記事がVtuber理解の一助になれば幸いです。
一気に書き上げたので、変な文章になっている箇所があるかもしれません。お許しください。
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