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往復40時間の列車旅


2003年の西安駅



南京から西安へ---18時間の列車旅

友人との賭け事がきっかけではじまった西安への旅行。
一緒に行くはずのメンバーは当日の昼過ぎまでのんびりしていたから半信半疑だったけど、昼食を食べたら怒涛の準備が始まり、2時間後には私たち皆南京火车站にいた。

南京から西安へ向かう列車は、夕方に出発して翌日の昼前に到着予定。
そう、それはあくまでも予定。
きっちり片道18時間になるわけもなく、結局後で計算したら往復40時間にもなる長距離旅だった。


2003年南京駅

私たちは韓国人二人、日本人二人の四人グループ。
知り合って2週間も経たないうちに打ち解けて、国籍で固まることもない。母語は止めよう、ということで、お互い拙い中国語で会話している。彼らと一緒だったからこそ、座ってばかりの長旅も楽しいものになったのだと思う。

硬卧の寝台と異文化交流


私たちは硬卧と呼ばれる、廉価な少し固めの寝台券を購入した。
向かい合う三段ベッドが2つ、つまり6人で一つの空間をシェアすることになる。

硬卧の車内
狭い通路

空間といってもドアやカーテンはなく、通路に備え付けられた簡易ベッドという感じ。私はじゃんけんでてっぺんの寝台になったけど、一番下になった友人はちょっとかわいそうだった。

中国では、空いている空間に自然と座るのが当たり前。だから友人のベッドの足元には、数時間ごとに見知らぬおじさんが、共用ソファに座るかの如く代わる代わるに腰を下ろしていた。そしてカードゲームで遊んでいる私たちを覗き込んでくる。そのおかしな状況に、何度も吹き出してしまった。

花札とトランプの魔力

中国人のおじさんたちは私たちが遊んでいる花札やトランプのゲームに興味津々で、特に花札は初めて目にする人が多く、気がつけば、私たちの周りには小さな人だかりができていた。中国の人たちは本当にゲームが好きらしい。
彼らは私たちが話している留学生語というか、一種方言のようなへんてこな中国語は「听不懂(何を言っているのかわからない)」だと言いながら、新しいゲームのルールを教え合い、楽しんでいた。

最初は断りもなく人の席に座る無作法さに不快感を覚えたけど、狭くて自由の効かない列車の不便さをみんなで共有しているうちに、だんだんと楽しくなってきた。

西安駅

変わりゆく風景と想い

南京から西安まではおよそ1200km。
窓の外の風景は次々と変わっていった。畑や田んぼ、山々、そして広い平野。どこか懐かしいような、でもやはり異国の風景。

中国は東西に5000kmほどあると言うけど、そのたった4分の1を進むだけなのに、最初黒っぽくブラウニーみたいに見えた大地は、列車が進むにつれて赤みが増したり黄味が増したり、土壌の色さえじわじわ変わっていく。

ぽつりぽつりと時折現れる小さな集落。
見たこともないような瓦葺や煉瓦や土壁や、時には赤や緑など様々なカラーリングの鉄筋コンクリートらしき住宅も。
彼らは何を考え、どんなふうに生活しているのだろう。いつか中国語をもっと上手く喋れるようになれば、こういった場所に住む人々とも会話できるようになるのかもしれない。

中国の大地は広大で、多様だ。ここに住む人々の生活もまた、きっと多様なのだろう。言葉が通じるようになれば、この国の人々の心にもっと近づけるかもしれない。とりあえず今はカタコトでもいい、目の前に広がる風景や人々をしっかりと目に焼き付けたいと思った。

到着した朝の西安駅
西安駅で荷下ろしされていたアヒルのヒヨコたち
朝の西安

2003年9月12日

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