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往復30時間の列車旅

賭け事が引き起こした西安旅行

留学先の大学で授業が始まってから3日目の夜、友人と一緒に四人で小さな賭け事をしていました。ルールは、勝った者の言うことを聞くというもの。その結果、ソンフンが勝ちました。

「ねえ、僕たち明後日から西安に行こう!」とソンフンが提案しました。最初はその無計画さに驚いたものの、動揺している我々三人の様子をよそに、彼はこうも続けました。

「人生は一度きり。この日、この時間、この瞬間はもう戻らない。だから今すぐに行こう。」

どこから借りて来たセリフだよ!と笑いましたが、今振り返ると、彼の言葉は全くその通りで、毎日続いていくと思っていた四人での時間は、その1ヶ月後、予告なく突然の終わりを迎えました。
彼の提案のおかげで素晴らしい時間を過ごせたことを、感謝しています。彼らと一緒だったからこそ、楽しく、忘れられない旅となりました。

2003年の西安駅

南京から西安へ---15時間の列車旅

連休でもなかったので、当日チケット4人分は、あっという間に購入できました。

私たちが乗ったのはt116というディーゼル機関車です。
上海から蘭州までの全長2185キロメートルを、
江蘇省、安徽省、河南省、陝西省、甘粛省の5省1市を通ります。

蘭州駅から上海駅までの片道の所要時間は27時間。南京から西安への片道はおよそ15時間。19時に出発して翌日の昼前に到着します。


2003年南京駅

硬卧の寝台と異文化交流


私たちは硬卧と呼ばれる、廉価な少し固めの寝台券を購入しました。
向かい合う三段ベッドが2つ、つまり6人で一つの空間をシェアすることになります。

硬卧の車内
狭い通路

空間といってもドアやカーテンはなく、通路に備え付けられた簡易ベッドという感じ。私はじゃんけんでてっぺんの寝台になったけど、一番下になった友人ジニョンはちょっとかわいそうでした。

なぜなら、中国では、空いている空間に自然と座るのが当たり前。だからジニョンのベッドの足元には、数時間ごとに見知らぬおじさんが、共用ソファに座るかの如く代わる代わるに腰を下ろしていました。そしてカードゲームで遊んでいる私たちを間近で覗き込んでくるのでした。

花札とトランプの魔力

中国人のおじさんたちは私たちが遊んでいる花札やトランプのゲームに興味津々で、特に花札は初めて目にする人が多く、気がつけば、私たちの周りには小さな人だかりができていました。列車は暇ですしね。

彼らは私たちが話している留学生語というか、一種方言のようなへんてこな中国語は「听不懂(何を言っているのかわからない)」だと言いながら、新しいゲームのルールを教え合い、楽しんでいました。

最初は断りもなく人の席に座る無作法さに不快感を覚えたけど、狭くて自由の効かない列車の不便さをみんなで共有している気がして、だんだんと楽しくなってきました。

西安駅

変わりゆく風景と想い

南京から西安まではおよそ1200km。
窓の外の風景は次々と変わっていきました。畑や田んぼ、山々、そして広い平野…どこか懐かしいような、でもやはり馴染みのない異国の風景です。

中国は東西に5000kmほどあると言うけど、そのたった4分の1を進むだけなのに、最初黒っぽくブラウニーみたいに見えた大地は、列車が進むにつれて赤みが増したり黄味が増したり、土壌の色さえじわじわ変わっていきます。

ぽつりぽつりと時折現れる小さな集落や、
見たこともないような瓦葺や煉瓦や土壁や、時には赤や緑など様々なカラーリングの鉄筋コンクリートらしき住宅も。

彼らは何を考え、どんなふうに生活しているのでしょう。いつか中国語をもっと上手く喋れるようになれば、こういった場所に住む人々とも会話できるようになるのかもしれないな、と思いました。

広大な大地の、多様な人々。言葉が通じるようになれば、この国の人々の心にもっと近づけるのでしょう。とりあえず今はカタコトでもいいから、目の前に広がる風景や人々をしっかりと目に焼き付けたいなと思いました。

到着した朝の西安駅
西安駅で荷下ろしされていたアヒルのヒヨコたち
朝の西安

2003年9月12日

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