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デンマーク映画「その瞳に映るのは(The Bombardment)」感想とイギリス空軍によるカルタゴ作戦の解説

序盤のあらすじ


映画の舞台は1945年のデンマークです。
第2次世界大戦末期、デンマークはナチスドイツに事実上占領されており、ナチス予備警察(HIPO)はデンマークのレジスタンスを取り締まり、
子どもたちにはナチスのプロパガンダが浸透し、
殺されるユダヤ人を思って自分に鞭を打つ修道女は周囲から浮いている、
社会がナチスと反ナチスに分断されている状況でした。
ユトレヒト半島の田舎に住む少年ヘンリーは、結婚式に向かう途中だった若い女性たちの乗った民間のタクシーがドイツ車両だと誤認され爆撃されるところを目撃します。
これをきっかけにPTSDによる失語症を発症したヘンリーは、トラウマのトリガーとなる「広い空」のない都市コペンハーゲンの叔母の家で、療養することになります。

カルタゴ作戦(史実)


実際にあったイギリス空軍による軍事作戦「カルタゴ作戦」が描かれます。
作戦の目的はコペンハーゲン市の中心にあったゲシュタポ本部シェルハウスを爆撃することでした。
場所が建物の密集する都市部であることから、爆撃の精度を上げるために爆撃機は超低空飛行で、
無線を切って(ラジオや敵基地無線と混線するから?)、
シェルハウスを爆撃します。
これによりシェルハウスは甚大な被害を受け、さらに捕らえていたレジスタンスの一部の脱走をゆるすことになります。
しかし低空飛行(建物の屋根と同じ高度)ゆえに街の障害物を避けきれなかった一機が、目標から1.6キロ南西にあったカトリック系の学校の倉庫に墜落し、
後続機は敷地内が燃えている校舎をシェルハウスと誤認し、次々と爆弾を落としていきました。
これにより、児童86人、学校関係者19人(大半が修道女)を含む民間人125人が死亡しました。

損壊したシェルハウス


誤爆されたカトリック系のジャンヌダルク学校の校舎

90分で泣く


学校に通う子どもたち、レジスタンスとHIPO、修道女たち、イギリス空軍パイロットなど、さまざまな視点から歴史的な悲劇を描く群像劇ですが、コンパクトに90分にまとまっています。

個人的には
民間タクシーが誤爆された報告を受けて「自分たちかも」ときちんと心配できたパイロットたちは慎重に位置確認して誤爆することを免れるのに、無線を切っているので他の機に警告ができなくて歯がゆいのと、
卵の殻のように壊れてしまった少年ヘンリーの心が、緊急事態に際して再起するシーンが印象的でした。

大前提ですが子どもたちが犠牲になるシーンがあるので、精神が元気なときに観たほうがいいです。
元気でも泣きます。

https://www.netflix.com/nz/title/81186240


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