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チョコレートの選び方に関する提案

  凍てつくシベリアから渡ってきた北風を頬で感じながらナッツとチョコレートが砕ける硬質な音の響きに耳を澄ませ、目を閉じて香りを感じる季節が待ち遠しい。私は親しい友人と北風の中を歩き、アイリスブルーの空を見渡して木々のざわめきと同様の音と匂いとして洋菓子を味わうのが好きだ。このとき、味わいを意図的に言語化しない。商品の特性を言語化して伝えるのは、かつて学部生時代に洋菓子販売員としてアルバイトをしていたときの当然の務めだった。季節の移り変わりを目と舌で感じつつ、商品の提案を通して目の前の客その人だけではなくその贈り物が届けられるであろう見知らぬ誰かにまで甘く嬉しい時間を届けることのできる仕事は楽しかった。しかし、葉を落とした木々が語り合う場所では、特徴を理解した者による説明に基づいて選んだ洋菓子が、敢えて人の発する甲高い言葉で間延びした形容詞や副詞によって騒々しく語り直される必要はない。私が元洋菓子販売員であると明記するのは、チョコレートの保管方法および味わい方に関する知識に信憑性を与えるためである。ここではそのような場を楽しむためのチョコレート選びの基準と保管方法、より美味しく味わうために相性の良い飲み物を紹介する。常温保存可能な焼き菓子はチョコレートおよびその製品に限定されないが、おそらく選び方と保管方法がマドレーヌよりは難しいためここではチョコレートに限定する。内容は以下の通り。ちなみに私は焼き菓子の棚の前ではラム酒漬けのドライフルーツを使ったパウンドケーキとクルミの入ったブラウニー、クリスマスなら迷わずパネットーネとシュトレン(トは短母音!!)を選ぶ。

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