マッキンゼーを落ちた私が泣きながらボスコンに受かった話(後編)
ベイン二次面接
ベインのオフィスは洗練されていて、会議室に案内してくれる方もとても美しい方だった。さすがは外資コンサル。
面接官が登場。『マネージャーの〇〇です。』眼鏡の奥で眼光がキラリと光る。
お題は「都内の違法駐車の数を求めよ」
聞いた瞬間、これは難しそう。と感じるが、なんとかくらいついて答えていく。
まず都内に走っている車の数を考えます。そのうち何割が違法駐車を行うか、という観点で計算していきます。
・東京都の人口はおよそ1000万人、さらに周辺の県のベットタウンも含めると3000万人程度と考えます。ここからざっくり世帯数を推定すると1500万世帯、家族世帯800万世帯、一人暮らし700万世帯とします。家族世帯は一家に一台、一人暮らしは7人に一人が持っているとするとおよそ900万台の車が都内領域の自家用車として存在します。
・次に商用車を考えます。商用車には営業車、輸送車がほとんどを占めると思いますが、輸送車は営業停止などを懸念して違法駐車はほとんどしない、かつ数にしても営業車の方が大きいと考え、今回は商用車に絞ります。3000万人の内、労働人口はおよそ2000万人程度と見積もります。(日本の人口分布よりも少し多いとして)この2000万人のうち、営業職の人口は5分の一程度と考えられるので、400万人、4人で一つの車をシェアしていると考えて、100万台とします。
・平日は営業車が多く、休日は自家用車が多いという構造になると思います。自家用車の平日利用を10%、商用車は80%、逆に休日は自家用車40%、商用車20%とすると、平日170万台、休日740万台
・これらの車はなんらかの形で駐車を必要とするが、そのうち車を駐車場に止める場合が大半であるため、このうち5~10%程度の車しか違法駐車の可能性はない。さらに休日利用の場合は多くの車が郊外での利用となり、違法駐車を必要としないことも多いので、こちらは1~5%程度の違法駐車の可能性と考える。
・これらを総合すると、平日8万台〜17万台、休日7万台〜35万台程度と見積もられる。
ここまでの回答で良かったポイントは以下
「走っている車の数から違法駐車の数を求める」というアプローチ
→このケースにはいくつかの計算方法が考えられる。①都内の道路の長さの総和と違法駐車の間隔から求める②都内で駐車を必要とする車の数と駐車場の数から求める③都内を走っている車の数から、違法駐車を行う割合を求める。これらの内、もっとも求めやすい数が、③の「都内を走っている車の数」であり、①の「道路の総和」や②の「駐車場の数」を求めようとすると、これはいくら計算してもあてずっぽうにしかならない。下手をすれば一桁も二桁もずれる。
自家用車と商用車を区別している。
→法人、個人をセグメントとして区別するのは基本的な考えだが、多くの場合個人のインパクトが大きくて法人はおまけにしかならない。今回のケースは違法駐車なので直感的にも営業車が大きな割合を占めていることがわかるため、法人個人両方を検討することが大事
輸送車を思い切って省いている。
→これは賛否あるかもしれないが、ここで輸送車も計算しようとするとさらに細かい計算が必要になり、複雑すぎる。一旦商用車=営業車として計算し、あとで輸送車を足してもいい。ただ都内を走っている車を数えた時に、トラックと乗用車の比率はせいぜい1:4程度なので、省いても問題ないと推測される。
続いて戦略的な面接に移行。
面接官:では、「違法駐車」と「渋滞」の関係性を答えてください
アセルス:??
面接官:「違法駐車」は原因でしょうか、結果でしょうか?
アセルス:渋滞に対しては原因だと思います。
面接官:よろしい。では東京都として渋滞を減らす方法を考え付く限り答えてください。
アセルス:ちょっと1-2分考えても良いでしょうか。
面接官:良いですよ。
1-2分で思考を整えたのち、回答
・まず、「渋滞」を構造化すると、ある道路の点における流入量 > 流出量 という図式が成り立つと思います。
流入量は「保有台数」「走っている車の割合」「その道路を選択する割合」などに影響され、流出量は「そもそもの車幅の狭さ」「工事による車幅の狭まり」「違法駐車による車幅の狭まり」「信号の非効率」「合流、分岐によるタイムロス」などに影響されます。
・ですので、基本的に上記の影響を与える要素を改善することが渋滞緩和に繋がります。まずは「炭素税」や「都内走行税」などの利用料を課すことで、走っている車の量そのものを減らすアプローチがあります。
・また流出量を増加させるために、違法駐車への罰則強化や取り締まり強化、駐車場の新設、信号の組み合わせの見直し、カーナビと組み合わせ迂回ルートを選択するように誘導するなどが考えられると思います。
他には突飛な考えかもしれませんが、全ての車のデータを衛星データでトラックし、最適な道を誘導するようなシステムを作るのも良いと思います。もしできればですが、、、(※今では当たり前の考えだが、当時はIoTの活用はそこまで進んでおらず。)
満足げに頷く面接官。いくつかの追加質問がある。
面接官:では、あなたが東京都の知事なら、どのように優先順位づけを行いますか?
アセルス:全ての打ち手を並べ、その期待効果を計算します。その上で、実行ハードルがあまりなく、効果の大きいものから順に行っていくべきだと思います。
面接官:よく分かりました。面接は以上になります。ありがとうございます。
後半の回答で良かったポイントは以下
「できる限り多く答えてください」に飛びつかない
→この手の質問をした時に、より多く答えたものが勝つ。と思っている受験者は意外に多い。ただし、ここでも構造化は非常に重要。構造化→ドライバー→ドライバーに対する対策という流れを踏むことで、どんなものに対しても構造化して考える人間だと印象付けることができるし、結果として漏れなく多くの施策を述べることができる。
ちょっと面白いことを言う
→炭素税や渋滞の罰則強化などは手堅い施策ではあるが、面白みに欠ける。自動車の交通データを衛星でトラックすることが面白いアイディアかは置いておいて、少し通常の思考から飛ばした答えも散りばめた方が、クリエイティビティも示せる。
後日の結果は合格。晴れて最終面接に進めることになった。
ベイン最終面接
とうとうここまで来たか。ブーズやベルガーなどを軒並み落ちた自分がベインの最終に臨めることがとても感慨深く感じた。
まだまだ甘い部分もあるが、1日5件以上ケース問題を自分の頭で考えることもしっかりと継続しており、ケースに対する基礎体力がついて来たように感じる。
さて、憧れた外資戦コンの最終面接はどのような質問がされるのだろうか。
会議室で待つこと数分。
入って来たのは、まさかの外国人のコンサルタント、、、心なしかブルースウィルスに似ていたのでブルースウィルスと呼ぶことにする。
ブルースウィルス:hi How are you?
アセルス:hi .....
ブルースウィルス:We ganna have interview in English, is that OK?
アセルス:(英語で面接やるって意味かな…?)オ、オッケー
お気づきだろうか。自分は大学時代全く英語は話せませんでした。笑
もちろん受験で勉強はしてたが、Nice to meet youくらいしか喋ったことはなかったです。
(ここに来て英語面接。死んだ。。。)
ブルースウィルス:So, tell me about youself.
アセルス:ohhhh hean....My name is Aserus. I am going to graduate xx university.......I
am interested in consulting!
ブルースウィルス:oh, okey.(苦笑い)
地獄は続く。
ブルース:what is your dream? how's consulting related to that?.
アセルス:ぐぬぬぬぬぬぬ… My dream is .... My dream is .... (理解できない英語)...
ブルース:okay. great. just moment.
ブルースは部屋を出て行った。
終わった、、、色んな意味で。でも最後『great.』って言ってくれたから、もしかしたら伝わったのかな。(そんなわけない)
間髪入れずに今度は日本人のおじ様が入ってくる。
「どうも日本代表の〇〇と申します。」
ビビる。が、これは最後のチャンス!死んでもアピールせねば。
お題は「君が事業を始めるなら何をする?」
これは今考えても凄まじい質問である。答える方もそれを判断する方も困難を極める。さすがは日本代表。
自分の答えはこんな感じ。たまたまこの直前に中国に行く機会があり、そこでの経験を交えて語る。
アセルス:そうですね。僕なら「中国で日本式の学習塾」を開きます。
代表:ほう。なぜですか?
アセルス:先日初めての海外旅行で中国に行ったのですが、都市の急速な変化を見て、思ったことがあります。
代表:というと?
アセルス:都市がものすごい速度で成長しているということです。その中で、消費も変化していると感じたからです。今は食やブランド品へのニーズが高まっているが、だんだん西洋式のマッサージや化粧品など美容サービスへ欲求がシフトしている。マズローの欲求段階ではないですが、物欲の後には必ず承認欲求や自己実現欲求が高まります。さらに中国は一人っ子政策の影響が強いため、子供への投資も大きいはず。そこに日本の「受験文化」を支える学習塾の授業のやり方や制度などを持ち込み、向こうで富裕層向けの学習塾をひらけば、かなりのニーズが生まれるのではないかと感じました。
代表:なるほど。
質疑応答はこれだけだった。自分のアイディアに突っ込んだ質問もなし。
その後少し趣味の話などを聞かれ、面接は終了。どうだったんだろうか。やっぱり英語が出来なさ過ぎて、最後の面接で相当なパフォーマンスが出せない限り落とされるのだろうか、、、
数日後、電話がかかってくる
女性の声:私ベインアンドカンパニーの採用担当の〇〇と申します。お時間よろしいでしょうか。
アセルス:はい。
手に汗が滲んできた。
女性の声:今回の選考の結果、
女性の声:アセルスさんには是非弊社にご入社いただきたいとの結論になりました。
アセルス:(キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!)
女性の声:つきましてはオファーセッションを行いたいと思いますので、弊社へお越しいただける日程をお教えください。
アセルス:ありがとうございます!
日程調整後、電話を切る。
嬉し過ぎて言葉にならない。正直大学受験よりも何倍も嬉しい。泣
なんとボスコンの採用を受ける前にベインのオファーを獲得してしまった。。。
就活を初めて 3ヶ月。とうとう念願の外資コンサルのオファーを獲得したのだった。
しかし振り返った時に、この最終面接だけは今でもよく分からない。一応「マズローの欲求段階」というフレームワークと、中国における実体験を絡めて回答したが、そんなに刺さってた印象はない。英語面接も散々だったし、、、
このように、コンサルの面接と言えども最終面接では結構パーソナリティやフィットが問われることがある。一方で最終でもゴリゴリのケースを聞かれることもある。
コンサルの最終面接までは純粋なケース面接の出来映えが全てなので、これまで色々な学生の方をサポートした経験からも、最終面接まで持っていくことにはかなりの自信がある。ただ、最終面接についてはやはり不確定要素があるので、そこは本人で突破するしかない。
次回からは晴れてボスコンの採用に挑む
ボスコン面接
実はボスコンの選考とベインの選考は2月〜3月あたりで時系列は並行していた。
ベイン筆記&一次面接
↓
ボスコン筆記
↓
ボスコン一次面接&二次面接
↓
ベイン二次面接
↓
ボスコン三次面接
↓
ベイン最終
↓
ボスコンインターンといった具合だ。
そう。この時点でネタバレしてしまっているが、ボスコンはインターンまで無事進むことができたのである。以下振り返っていきたい。
<一次面接>
正直あまり覚えていない。多分ペットかペットフードについての市場規模算定だったように思う。
回答としては、
世帯数(一人暮らし、家族) × ペットを持っている率で計算した。
世帯数はざっくり5000万世帯、一人暮らし2000万、家族3000万世帯として計算。
イメージ世帯数の方が一人暮らしよりもペットを飼っている率が高いと考え、飼育率は
家族:30%
一人暮らし:20%
として想定。(自分の知人やこれまで訪問した家からのざっくり統計)
ペットの数 = 3000万 × 30% + 2000万 × 20% = 約1300万
というさらっとした答えだったかと。
恐らく合格だったのだろう。大きな封筒を渡され、廊下の突き当たりの部屋に行くように指示される。
<二次面接>
お題は:「日本の自転車の数を求めよ」
ん〜さっきのペットと同じ求め方しかできないな、、、大丈夫かなと思いつつ、そのままま計算。
世帯数×自転車持っている率で考えます。
家族世帯3000万 × 自転車平均保有台数1(3人家族が平均だとして、母親、子供1人の50%が持っていると仮定) = 3000万
一人世帯2000万 × 自転車平均保有台数0.3(30%が持っていると仮定) = 600万
合計3600万台
面接官の顔色が曇る。
しくったか?やはり仮定の置き方がざっくり過ぎたか?んーでも3000万台ってめちゃくちゃ多いよな…多過ぎたかな?
面接官:あなたの計算の精度を上げるためにはどうすればいいですか?
アセルス:世代ごとに保有率が違うので、それを確認していきます。
面接官:どうぞ
アセルス:まず一人暮らしを学生、社会人、高齢者に分けます。人口比率は2:6:2とします。学生の保有率を70%、社会人の保有率を30%、高齢者の保有率を70%として、人口比率をかけ合わせると、( 2×70% + 6×30% + 2×30% ) ÷ 10 = 38%、ざっくり40%とおきます。
アセルス:次に家族を二人暮らし、子供1人、子供2人以上で人口比率を4:4:2とします。二人暮らしの保有台数を0.5、子供一人の場合は1、子供二人の場合は2とします。すると加重平均で保有台数1となります。
アセルス:よって合計は3800万台になります。(あれ、あんまり変わらないな。。。)
面接官:わかりました。面接は以上となります。
面接官の渋い顔は終始変わらなかった。
面接後早速ネットで自転車の保有台数を調べると、約7000万台。
あちゃーこれは結構外しているので厳しいな。やばいかな、、、
ビクビクしながら待っていると、なんと三次面接の知らせが来る。素直に嬉しい。
*余談だが、当時自分が思っていた「三次面接」は特別な意味を持っていた。他の学生の話を聞くと、二次面接から直接インターンへの切符を手にした者もいたので不思議に思っていたが、実はこの三次面接は「二次面接が微妙だった人の敗者復活戦」だったのである。笑
おそらく二次面接で「合格」「微妙」「不合格」の判定を行って、三次で「微妙」を振り分けていたのだろう。
とはいえ「微妙」に入れただけでも良しとせねば。
<三次面接>
お題:「眼鏡の市場規模を求めてください。」
自分が眼鏡からコンタクトに変えた経験があったので、「眼鏡→コンタクトの動きが中学〜高校くらいで起こることは計算に入れた方た良いな」と思いつつ計算
世代で考えます。男女の違いはないと考えます。
幼稚園以下で眼鏡は確率が低いので、世代を以下に分けます。
<小学生 500万人>目が悪い場合はほぼ眼鏡なので、目が悪い率=眼鏡保有率、20%くらい?度数が変わるので眼鏡の買い換え年数はおよそ2年くらい
<中学生〜大学生 1000万人>目が悪いが、コンタクトを使うことが多いので、、、、と言いかけて気づく。「そうだ、コンタクトでも寝る前は眼鏡を使う!」
慌てて修正。
「コンタクトを使うことも多いですが、結局夜は眼鏡なので、一人一つは持っている」よって目が悪い率=眼鏡保有率、さらに目が悪くなっている可能性が高く、50%くらい
同じく眼鏡の買い換え年数は2年くらい
<社会人 7000万人>中学生〜大学生とほぼ同じだが、一定数はオシャレ眼鏡をもつ人もあらわるので、50%の内半分は二つ目を買うと考えて、眼鏡保有率を75%と設定
眼鏡の買い換えはコンタクトだと3~5年くらい、オシャレ眼鏡なら2年くらいなので、平均3年とする
<高齢者 3000万人>さらに遠視などが進み、眼鏡保有率は上がるので、80%と設定(オシャレ眼鏡はなし)
眼鏡買い替えは5年くらい
合計すると、眼鏡の保有台数はそれぞれ
小学生:100万個
中学〜大学:500万個
社会人:5250万個
高齢者:2400万個
ここから買い換え年数を考慮した購入数は、
小学生:100 ÷ 2 = 50万個
中学〜大学:500 ÷ 2 = 250万個
社会人:5250 ÷ 3 = 1750万個
高齢者:2400 ÷ 5 = 480万個
合計2530万個
レンズ付き単価を14,000円と考えると、市場規模はざっくり3500億円。
面接官:では、眼鏡市場は増えていると思いますか、減っていると思いますか?
アセルス:増える要素としてはゲームや携帯の普及から視力が低下しているということ、オシャレ眼鏡の普及。一方減る要素としては少子化、コンタクトによる買い換え頻度の低下が挙げられます。総合すると横ばいもしくは少し減っているのではないでしょうか?
面接官:なるほど。では眼鏡メーカーの販売拡大を狙うならどうしますか?
アセルス:視力矯正という意味での眼鏡販売は難しいと思います。やはり社会人を狙ったオシャレ眼鏡によって、二つ目、三つ目の眼鏡を購入してもらうように仕向ける必要があるかと。有名ブランドとのコラボやスポーツタイプなどが良いかと思います。
面接官:ありがとうございます。
今回は自分に身近な商品だったので、気の利いたことも言いやすかった。かなりの手応え。面接官も満足気である。
結果は、、、合格
晴れてボスコンの最終課題、インターンに参加することになる。
インターン初日
ボスコンのインターンのために、赤坂見附に向かう。
思えばマッキンゼーを落ち、その後ベルガーなども軒並み落ちた自分が、なんとベインの内定を携えながらボスコンのインターンに向かうことができるとは。感慨深い物だなあ。
到着するとすでに自分を除く17名の学生は大きな丸テーブルを囲むように座っている。独特の張り詰めた緊張感が漂っている。
だが、自分にはベインの内定という最強の武器がある。遥かな上空から大地を見渡す鷹のように、着席しながら優雅にメンバーを観察する。
全員あのケース面接をくぐり抜けてきた猛者達。顔つきも凛々しい。自分の隣はAKBの高橋みなみ似の女性院生(確か早稲田だったような記憶。)である。軽く会釈をする。
コンサルタントが入ってきて我に返る。
軽い挨拶のあと、インターンの概要を説明。内容を整理するとどうやら
・二人一組でワンチーム
・期間は木曜開始の4日(土日を含むと6日)、中間報告が2日目に、最終報告が4日目にある
・チームには二人のメンターが付く
・ある業界の企業一社につきワンチームがあてがわれ、個別の戦略を作る
与えられた情報は5年分の有価証券報告書、担当企業の5年分の記事検索結果(日経テレコンの記事検索)
・自分はお隣の女性院生と組むことに。
ちなみにメンターの方も中途採用。ゴールドマンサックス→ボスコンらしい。経歴がヤバすぎるw
「ではあとは各自自由に時間を使ってください。質問はメンターにお願いします。」
話の進め方をメンターと相談する。メンターのオススメとしては。
まずざっくり資料や市場を調べて内容を把握
↓
仮説を考える
↓
それを検証するように追加で調査を行う
なるほど。調べることに時間を使いすぎず、仮説をまず考える。新しい概念だ。高橋みなみ似(以降「高橋さん」とする)も納得し、その方向で進めることにする。
用意された部屋に移動し、まずは資料を読み漁る。ちなみに自分達の課題は「ある大手アパレルブランドの戦略」自分が自社について、高橋さんは競合について調べることに。
まずは有価証券報告書とやらを読もうか
…全然分からん。どこをどう見れば良いのかも分からん。2時間くらいかけてようやく売上と利益を書きだす。売上は横ばい、利益も横ばいである。利益率は10%程度だ。だからなんだ。笑
高橋さんも苦戦しており、「競合が最近新ショップをオープンした」とか「低価格なブランドバックが売れてる」などの情報しか分からない。
始めてから気づくが、これはむちゃくちゃ難しい。ケースは頭の中で完結する空想の世界だが、実際に世の中にあるデータや情報を探し出すことにまず時間が鬼のようにかかるし、今の時点ではどんな情報が必要なのかも分からない、、、
このままではヤバいと思った自分が、情報収集をストップしてまずは何を調べるか整理しようと説得。高橋さんもオーケー。
アパレルブランドを調べる切り口を二人で考える
商品カテゴリー(ジュエリー、バック、服、小物)
男女
価格帯
地域
提携小売(どの店に入っているか)
それっぽいのはいっぱい出てくるが、それぞれどう調べたらいいか分からない。時間はすでに4時である。途方に暮れる。
そこにメンター登場。
すかざす泣きつく。
メンター:やりたいことは分かるけど、今出してくれてる軸それぞれにデータで分析しようとしたら、絶対時間が足りない。どの軸で戦略を考えるのかはエイヤで決めて、それに沿って分析していかないと
アセルス:なるほどですね。ちなみのどの軸が大事だと思いますか?
メンター:それはチームで話し合ってください。
アセルス:ですよね…
どれか決めよう。と思った矢先にディナータイム。初日はボスコンの1年目の方々と懇親会ディナーが入っていた。
正直もっと作業したい…ディナーとか時間の無駄だなあと思いつつ、せっかく来てもらったので、行かない訳にも行かず。
ディナーでは色々と学生時代の面白い話もしつつ、インターンの話題に。
アセルス:皆さんはどういう部分が評価されてインターン突破したと思いますか?(我ながらこれは良い質問だった。)
社員Aさん:私の場合は行動力かな?街歩いている人に質問して、簡易的なアンケート取って、N=10だけどサーベイ結果として出したりした。それがウケたかな。
アセルス:ふむふむ(これは私達もフィールドに行った方が良いかもな)
社員Bさん:自分はとにかく色んな人に話をぶつけてみたかな。それで得られたことは大きかったと思うよ。
アセルス:歩いてる社員さんに質問しても良いんですか?
社員Aさん:全然良いよー!ちゃんとインターンで〇〇について聞きたくて、って言えば答えてくれるよ。
アセルス:(さすがボスコンの社員さん。心が広い。)
かなりの収穫を得た。これはあと四日間に大いに活かせる。
高橋さんは家が遠いらしく、終電が早いので9時頃には帰宅。自分は遅くまで残りたかったので、許可を得て深夜まで色々と考えることに。
現実に戦略を考える難しさと、ボスコンの懐の深さを感じながら、初日が終わる。
二日目
今日の夜には中間報告があるものの、何も出来ていない状態。
昨日の夜になんとか店舗数や売上地域、価格帯などの情報だけは調べたが、戦略の軸となる分析などは全く手付かず。
めちゃくちゃ焦るアセルス。
高橋さんは涼しい顔で黙々と調べている。
昨日聞いた成功体験を真似て、自分も実際の顧客に意見を聞いてみることに。
自分の母親や女友達に対して電話をかけてブランドについての意見を貰うことにした。
母:あーそのブランドなら妹(私の叔母)が詳しいよ。なんか特別メンバーみたいなのがあるらしくて。聞いてみれば?
叔母:あーそのブランド好きなんよ!今特別会員で、年に4回くらい招待されて、そこで結構高いジュエリーとかばんばん売れてるよ!
アセルス:え?そうなの?みんなどれくらい買ってる?
叔母:ん〜数十万位は買ってるんじゃない?人数もかなりの規模だしね。
アセルス:(マジか、年間に直すと売上の1/3くらいじゃん。。。)
叔母:会員はある程度選ばれた人しかなれないから、収入とか見てるのかも!
アセルス:なるほど。ありがとう!また聞いてもいい?
叔母:いつでも良いよ〜
電話を切ってガッツポーズ。
これはめちゃくちゃ面白い内容。その後記事検索などでも情報を確認し、整理するとこういうことだった
1000人ほどの「特別会員」は年に4回開催される特別販売会場で一人数十万円ほどを購入し、数十億の売上になっている。
これはブランド売上の1/3を占める非常に大きな収入源であり、「特別会員」の戦略を他のブランドも模倣しつつある。
急いで高橋さんに共有し、高橋さんも「コレはすごい!」のコメント。一方高橋さんも午前中色々と考えた結果、「高齢者」のブランド購入が増えているというトレンドを発見していた。
それぞれの考えを合わせて。戦略の軸は二つ
富裕層をターゲットとした「特別会員」を増やす戦略
高齢者をターゲットとした戦略
そこにメンターが登場し、今朝の情報を共有。
「それはグッドインサイトだね。」とよく分からない褒め方をされる。
資料のまとめ方をメンターと相談し、午後はひたすらパワーポイント。
本番の中間発表に臨む。
中間発表
中間発表では自分たちがトップバッター。プレゼンの流れは以下。
自社ブランドの過去5年の業績が横ばい
顧客セグメント別の売上において、富裕層の割合が大きく、高齢者割合は少ない
富裕層獲得についての競合の動き
高齢者獲得についての競合の動き
今後はこの二つの戦略を軸に考えること
ネクストステップ
叔母さんからの電話の内容をふんだんに使い、「現場で調べた」感をしっかりと出した。居並ぶ他チームのメンターからも様々な質問が飛び交い、かなり盛り上がったプレゼントなった。
その後他チームのプレゼンを聞くが、正直完成度は低い。みなネットで調べた内容をパワポに落としているだけで、特定のセグメントに対する情報や目線がなく、パッとしない。
やはり「特別会員」の内容を組み込めたことで大きく変わった。
叔母さんサンキュー!!
結果的に自分たちのチームのプレゼンがかなり良く映ることとなり、プレゼン後メンターから「ひいき目なしに、君らのプレゼンが一番良かったよ。」と言われる。
高橋さんとも思わずハイタッチである。
「これでボスコンも行けるかもな」と内心思いながら二日目は終了したのだが、ここから最終報告までに地獄を見ることになる。。。
二日目まさかの仲間割れ?!
二日目の中間発表にかなりの手応えを感じた自分は、朝から意気揚々である。ジョナサンのシャケ定食もいつもより美味しく感じられる。
爽やかな気分で気分で作業ルームで分析を開始。今日から二日で具体的な打ち手を考え、きちっとしたプレゼン内容に落とし込まないといけない。
10時頃になって高橋さんが登場。なんだか顔色が悪い気が、、、気のせいかな?
二人で打ち手について話しを始めると、高橋さんがポツリと一言。
てか、なんで富裕層セグメントに注力するですっけ?
は??
いやいや、中間発表までに散々話したじゃん。というイラつきを押さえながら、説明。
アセルス:それは、セグメントとしての売上が全体の30%程度もあると思われるし、この部分は顧客単価も高くて、今成長してるセグメントだから
高橋さん:でも、売上30%って、アセルスさんが電話で聞いて来た情報をベースにした計算ですよね?正しいんですか?
アセルス:統計データとかではないから必ずしも正しくはないけど、実際にその場に行った人の購入金額とか体験をベースにしてるから、そこまで間違ってると言えないけど。てか、それ疑い始めたら、僕ら戦略なくない?
高橋さん:いや、高齢者が成長するっていう戦略はできると思うけど。
アセルス:うーんでもそれ、誰でも考えらる…じゃなくて、それだけだと弱くない?
高橋さん:まあそうですよね、、、でも富裕層フォーカスってなんかしっくりこないんですよね〜。
結構省略して書いたが、こういう議論を1-2時間くらいはやってた。他のメンバーから後から聞いた話だと、喧嘩してると思うくらい激しく言い合ってたらしい。
アセルス:分かった。とりあえずこのままだと時間がもったいないから、俺が富裕層セグメントのストーリーを作って、高橋さんが高齢者向けのストーリーを作れば良くない?
高橋さん:う〜ん、、、まあそうですね…
アセルス:(どないやねん!時間ねーんだよ!笑)とりあえずそうしよう!
というわけで富裕層を攻めるというストーリーはなんとか守った。
実際のコンサル実務でもこういうことは起きる。そういう場合はだいたいマネージャーや上のクラスの人間が行司役をやってくれて、どっちが正しいかジャッジしてくれるが、インターンではみんなが並列なので、決着をつけることがとても難しい。チームメイトを怒らせずに、自分の意見もある程度通す技術が要求される。
塚地さん登場
なんとか高橋さんに高齢者セグメントを(×押し付け)担当してもらい、自分は打ち手を考えていく。この時思っていた打ち手は以下。
富裕層プラチナカードを作って、クレジットカード会社と提携
他の百貨店などの富裕層イベントに参加し、そこで勧誘する
一定以上の購入履歴のあるお客様を富裕層イベントに招待して、もっと買ってもらう
東京ガールズコレクションなどのイベントを開催し、そこに行けるという特典もつけて、勧誘する
まあまあかな?と思っているとこに全く知らないメンターでもないBCGの社員の方が登場。自分に議論を吹っかけてくる。ドランクドラゴンの塚地のような見た目。
塚地さん:富裕層セグメントは分かったけど、どうやって獲得するの?
アセルス:他の百貨店の富裕層から奪ったり…TGCなどを開催して特別感を…
塚地さん:そんなかで一番面白いのは?
アセルス:TGCの開催ですかね。(ちょっと面白味のある施策の方がウケるかな?)
塚地さん:そう。(「ダメだなこいつ。」)
アセルス:塚地さんならこの施策で富裕層が集まると思いますか?
塚地さん:俺は無理だと思うよ。
アセルス:じゃあどういうのならいいですか?
塚地さん:それは自分で考えなよ。
塚地さんはイライラした顔で去って行った。
再び地獄である。。。このままではヤバイ!
なんとなく打ち手は面白いことを言っとけば良いと思っていたが、それは大きな間違いだと気づく。
「もっと本気で経営者に話せるようなレベルじゃないとダメだ…」
富裕層をいくつかの段階に分けることにする。
① 今まで富裕層ではなく、新しく富裕層になった人
② すでに富裕層だが、アパレルブランドの特別会員カードなどを持っていない人
③ 富裕層で、他社のアパレルブランドの特別会員カードなどを持っている人
①については、「富裕層になったら人は何をするか?」という観点で考えた。
世の中のお金持ちをイメージすると出て来るのは「自動車」と「マイホーム」。これだ!自動車ディーラーや戸建販売会社と提携し、その場でプラチナカードに招待すればいい!
②については、自社ブランドの購入金額を調べ、多く購入している人へアプローチすればいい。その際、新規加入で海外旅行や、国内の高級トラベルのプレゼントを行う。
③については、他ブランドの富裕層イベントにいくのではなく、他ブランドの富裕層顧客向けの営業マンをスカウトしてくればいい!
この3つの案を考え、塚地さんのデスクを調べて突撃した。自分が考えたフレームワークと打ち手をマシンガンのように語る。
アセルス:③については、富裕層顧客が営業マンとコネクションが強いことから、営業マン自体をスカウトし、富裕層顧客を引っ張ってこようと思います!
塚地さん:…ふーん。まあいいんじゃない?
アセルス:どう思いますか?
塚地さん:まあさっきよりは良くなったかな。きみ能力は置いといて、ガッツはあるね。
お礼を言って退室する自分。やはり悪印象のまま終わりたいくないので、わざわざデスクまで詰め掛けた意味はあったかもしれない。
気づけばもう夜遅くになってしまっていた。プレゼンは明日の午後なのに、資料は何もできていない。高橋さんの部分もきになるが、それは明日。まずは自分のセクションを今日中に仕上げないと。
仕事か友情か
このBCGのインターンには忘れられないエピソードがあるので紹介しておく。
塚地さんと話してから、部屋に戻ってパワポの構成を考えていると不意に電話が鳴った。親友の田中からの電話だ。
アセルス:もしもし
田中:おう、悪い今大丈夫?
アセルス:あ、今インターンの最中でさ…
田中:そっか、悪かった。じゃあええわ。
明らかに様子がおかしい。なんかあったんじゃないか?でも今パワポを仕上げないと、明日のプレゼンがヤバイ!
その時ふともう一人の自分が話しかける。
今田中と話さないなら、お前は仕事始めたらもう友達誰とも話さなくなるんじゃね?それでいいの?
アセルス:いや、大丈夫だから話聞くよ。どした?
田中:いいん?
アセルス:おうもちろん。
田中:サンキュー。実は今日彼女と別れてさ、、、
話を聞くと、その夜に彼女から別れを切り出されたらしかった。田中はいつもとても嬉しそうにその彼女のことを語るのを知っていたので、こちらも心苦しくなった。そして本当に電話を切らなくて良かったと思った。
休憩室から見える赤坂見附の夜景を眺めながら、田中と2時間くらい話をした。
電話を切った時には、12時を過ぎていた。
「今日は徹夜だな。」
今でも田中は大親友の一人だ。
最終プレゼン
富裕層のパートは徹夜で仕上げたので、ある程度ストーリーは固まっていた。プレゼンの構成は
富裕層マーケットが収益的にも大きく、また成長している点
富裕層セグメントをさらに3つに分類
それぞれの分類についての打ち手説明スライド
高橋さんの進捗は良く分かっていなかったが、ある程度高齢者向けのパワポを作っていた模様。
全体を統合し、それぞれの自分のパートをプレゼンすることにする。
四日間の総仕上げのプレゼンが始まる。
中間発表よりも多い、30人規模の社員の方が見守る。塚地さんもいた。
無事プレゼンは終わり、自分のパートの打ち手を話すときは、「なるほど」みたいな声もチラホラ聞こえた。かなり良いと思ってくれたようだ。
その後打ち上げの飲み会があり、無事全プログラムは終了。
仲良くなったメンバーとも別れを告げ、家路に着いた。
その後
後日ボスコンから合格を知らせる電話が鳴る。
人事:アセルスさん
アセルス:はい
人事:アセルスさんには是非、弊社にご参画いただきたいと思っております。
アセルス:ありがとうございます!
人事:一方で、アセルスさんはベインからも内定が出ているとお聞きしております。
アセルス:はい
人事:ですので、弊社のことをより理解して頂きたく、〇〇とのディナーをセッティングさせて頂きました。
ここから怒涛のディナーセッションが始まる。ベインとボスコンの内定を貰った自分はありがたいことに、両者のパートナーや若手とのディナーセッションを次々と設定され、「是非ウチに欲しい」と勧誘をいただいたりもした。
マッキンゼーを筆記落ちして、その後も軒並み不合格だった自分がこんな待遇を受けていることが不思議であり、まさに大逆転といった感じだった。
マッキンゼーを落ちたあの日に泣きながら誓って、努力したことは、無駄ではなかった。報われたと思えた日々だった。
その後憧れの外資コンサルに入社し、7年以上も日本だけでなく世界中でプロジェクトをこなし、圧倒的な成長と華やかな世界を経験することができている。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
雑多な文章にも関わらず、最後まで読んで頂きありがとうございました。
自分がこのブログを通じて伝えたかったキーメッセージを書かせて頂きます。
「努力し続ける」ことの重要性。
マッキンゼーを落ちた状態で、なんの準備もせずにボスコン、ベインを受けてもきっと不合格だったと思います。自分なりに現状を分析し、やるべきことを計画し、訓練を続けたことがベイン、ボスコンの合格に繋がったように思います。
「諦めない」ということ。
いくつかのコンサルで不合格だったとしても、次で受かるかもしれない。「自分には無理だ」なんて思う必要はありません。未熟だった部分は変えることができます。
自分を信じること。
就職活動や転職活動で不合格を食らった時には、時として自分自身を否定されたように感じることも少なくありません。自分がマッキンゼーを落ちたときやその他のコンサルファームを落ちたときもそんな気分でした。でも、それはあくまでその会社のその瞬間の判断であって、絶対的なものではありません。「自分自身の価値は自分で決める」くらいの気持ちでやりきって、それでもダメなら「アイツら人を見る目ないな」くらいに思ってやりましょう。人生は長いです。
最後になりましたが、今後もコンサルに関する役に立つ内容をちょこちょこ上げていければと思いますので、お楽しみに!また読みに来てもらえればと思います。
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