【ASE-Lab.メンバーの声】 #11 〜帝京大学 藤本翔太君 編~
海外や全国各地から宇宙好きメンバーが集うASE-Lab.
都内に拠点を置かない団体の活動にメンバーは実際どのように参加しているのでしょうか……?
そんな疑問を持った皆さん!運営メンバーの濵田が調査してきました!
メンバーインタビュー企画第11弾!
今回は、ASE-Lab.内外問わず活発に活動し続ける藤本 翔太(ふじもと しょうた)君にインタビューしてまいりました!
はやぶさに魅入られて衛星開発業界に足を踏み入れた藤本君。
大きな夢の詰まった小さな衛星に懸ける、彼の熱意をご覧ください。
ー自己紹介をお願いします!
帝京大学理工学部 航空宇宙工学科 3年の藤本翔太と申します。
大学では、機械系の四力学(材料力学、流体力学、熱力学、機械力学)などを基本としたカリキュラムを講義で学んでいて、他には同じキャンパス内の情報電子工学科のロボット関連等の講義を受けに行ったりしています。
ASE-Lab.外での活動の一つとして宇宙システム研究会という帝京大学の団体に所属しています。そこで代表をやらせていただいていて、人工衛星を作ったり運用したりしています。
二つ目はFUSIONにも入っていて、ASE-Lab.にもメンバーがいるのですが彼らと一緒に、熱耐性や放射線耐性を備えた宇宙仕様のCanSatを作っています。
三つ目は日本宇宙少年団のつくば分団のリーダーをやらせていただいています。宇宙に興味のある小中学生にものづくりなどに興味を持ってもらう活動を行っています。
実際に大学2年生の時に、超小型衛星を作っている様子を子供達に見てもらったりと施設見学を行いました。
最近研究室にも仮配属されて、姿勢の数値解析やシミュレーションについて勉強していきたいなと思っています。
趣味はカラオケに行くことです。プログラミングも楽しいので趣味と言えるかもしれません(笑)
ー宇宙に携わるきっかけとは?
親が博物館やプラネタリウムに連れて行ってくれたのは大きな点ではあると思いますし、宇宙少年団で実際にロケットを打ち上げたことのある方との交流で基礎的なことやモチベーションを養ってきました。
人工衛星に関わるきっかけは、小学生のときにはやぶさの帰還のニュースを見て興味を持ち、はやぶさの姿勢制御がすごいということを知り、自分もやってみたいなと思ったことです。
JAXAの一般公開や宇宙少年団等で、人工衛星のシステムについていろいろ知っていきました。
はやぶさは問題の発生とその対処がドラマチックであり、特に「姿勢制御系」に関わる人に対してかっこいいと感じました。
あとは、今所属しているのがアストロダイナミクス(人工衛星の軌道や姿勢全般)の研究室で、指導教員がはやぶさに携わっていて、ここで研究・開発がしたいと思い帝京大学に来ました。
また、はやぶさが打ち上がったのが2003年5月で自分が生まれたのが同じ年の4月なので運命を感じている宇宙機の一つです。
ーASE-Lab.での活動について教えてください。
◯ ASE-Lab.ではどんな活動をしてきましたか?
当時Twitterで団体創設の投稿を見てこれは入らなきゃなと思い、即決で入りました。
これまで宇宙システム入門ゼミ、小型衛星ゼミ、話題の本を輪読するゼミ、LINUXゼミ、組み込みOSゼミ、飛行力学ゼミ、制御MATLABゼミに参加しました。
宇宙システム入門ゼミでは多段ロケットの計算について発表、小型衛星ゼミで人工衛星のバスシステムについて発表しました。
飛行力学ゼミに関しては、宇科連(宇宙科学技術連合講演会)で外部団体の方といっしょにやろうという形になり、その方々とゼミを実施することができました。
自分は、ASE-Lab.で衛星に関わる勉強を重点的にやることで、自分の勉強時間と所属団体への貢献を同時並行で進められたらいいなという気持ちで取り組んでいます。
Outputチャンネル [1]でも次にやりたいことを投稿していたりするのでぜひ覗いてみてください!
◯ ASE-Lab.に加入して良かったと思う点
例えば、衛星設計コンテストを開催するゼミがありましたよね。
ああいった、実際に衛星開発をやっている自分にも関わるようなことをみんなで勉強するゼミが色々とあり、自分たちが実際に手を動かしている部分と絡めた勉強ができるところがめちゃくちゃ良いなと思いました。
また、大学の講義だけだとプログラミングや電子工作の勉強が手薄になってしまうことが多いと思うので、そこを皆でケアしていけるのも良いなと思った部分です。
さらに、自分でゼミを企画したり、他の人の企画に乗っかったりと自主自学の機会を得られることも良いことだなと思いますし、世代や大学を問わず、繋がりができることも大きなポイントの一つかなと思っています。
◯ ASE-Lab.内で今後やりたいこと
これに関してはOutputチャンネルで挙げているのですが、『航法理論詳説』『三次元回転』『詳解三次元点群処理』の3つの書籍について学びたいなと思っています。
人工衛星を制御する際に、ナビゲーション(航法)・ガイダンス(誘導)・コントロール(制御)という3つの部門があるんですが、その航法の部分を勉強したくて『航法理論詳説』を選んでいます。詳解三次元点群処理っていうのは、自動運転で使うLiDARでの情報処理についてですね。
衛星のことをやっていて三次元のデータ処理に興味があるので、この3つのどれかを次にやりたいなと思っています。
「こういうのをやりたい!」と言ったらゼミに来てくれる人も結構いてくださってありがたいです。今後も自分の興味のある勉強を進めていきたいです。
ーASE-Lab.以外での活動について教えてください!
◯ 宇宙システム研究会に入るきっかけ
宇宙システム研究会は衛星班とロケット班に分かれていて、衛星班ではTeikyoSat-4という人工衛星の開発・運用とTeikyoSat-5の開発を行っています。
私は衛星班に所属し、姿勢制御系のソフトウェア関連を担当しています。
工業高校に通っていたので、大学に通うことは少し諦めていた面がありました。しかし1年生のときに帝京大学のオープンキャンパスで衛星を作っていることを知り、ここで衛星を作りたいと思いました。これが諦めかけていた宇宙業界に引き戻されるきっかけとなりました。
推薦で合格したため早めに入学が決まっていたので、高大連携制度を利用して高校3年の12月からTeikyoSat-4に携わらせていただき、熱真空試験や設計審査会に参加させていただきました。そして大学1年生になってから本格的に開発に携わり、2021年11月9日に革新的衛星技術実証2号機のテーマの一つとして、イプシロンロケット5号機にて打ち上げていただき、軌道投入に成功し、現在も運用を行っています。
◯ TeikyoSat-4について
TeikyoSat-4は「多目的宇宙環境利用実証衛星」です。
このように書くと難しく見えるかもしれませんが、要するにちっちゃい衛星で、宇宙の環境をつかって、いろいろできたらうれしいよねってことをやろうとしています。
具体的には、以下のようなミッションを行えるよう設計・実装しました。
人工衛星の共通技術(バス)システムの実証
アマチュア無線帯域の高速通信実証
bio satelliteとしての生命科学実験
特にユニークなのは3番目の生命科学実験で、「キイロタマホコリカビ」という細胞性粘菌を搭載しています。
例えば人間が宇宙で実験をすると、費用がかかったりバイオセーフティーレベルの制限があったりとどうしても実験できる内容に限りがあります。また、今後ISSが廃止になる話もありますし、ISSに代わる実験室ができたら良いですよね。
つまり、TeikyoSat-4はISSでやるような実験を少ないコストで行うという小型衛星の強みを活かした人工衛星になっています。
現在もTeikyoSat-4は地上から約560kmの軌道を周回しており、元気なモールス信号を聞かせてくれています。得られる成果を最大化できるよう、運用しているところです。
TeikyoSat-4の「次」の衛星として、TeikyoSat-5の検討も行っています。これまでに得た教訓を生かしつつ、システム設計に重要な「システムズエンジニアリング」の考え方を取り入れた設計・検討を行っています。そのほかにも、衛星の設計や開発・運用に関する知識や技術を獲得する取り組みを行っています。
◯ FUSiONでの活動について
FUSiONでは地上局っていうのに携わっていて、CanSatで取ったデータをパソコンに表示したり、CanSatに命令を送ったりする機能等を実装しています。。
CanSat自体のプログラムとそれをパソコンで人間が動かすプログラムの大きく2つがあって、自分はその人間が動かす部分のプログラムに関わっています。
最終目標としているARISS [1]では人間が操作してはいけないというルールがあったりするので自律制御を行っています。あとは、デバッグのために人間がコマンドを送れるようにしてます。
また実際の衛星は衛星自体のプログラムだけで動いているのではなく、地上局との交信も行われています。なので、実際の衛星に近づけたいという意図もあります。
今年の3月に種子島ロケットコンテストが控えているので、今は皆さんと一緒に着々と準備を進めています!
また、昨年末のアドベントカレンダーにも参加しているので、ぜひ読んでいただければと思います!
藤本さんの書いたアドベントカレンダー記事はこちら!
ー憧れの人・刺激を受けた人はいますか?
刺激を受けた人でいえばあべま(ASE-Lab.代表の阿部舞哉のこと)ですかね(笑)
ASE-Lab.の記事などを読んで、同世代ですごい人がいるもんだな、自分も頑張らなきゃなと感じていました。
あと例えば、はやぶさ2 のプロジェクトマネージャーの津田さん(津田雄一さん)とかは憧れの存在ではありますね。宇宙研の研究者の方々のような人を目指したいと思っています。
ー最後に将来の目標について教えてください!
将来はISASに行って深宇宙探査系のことをやりたいなと思っています。
また、少なくとも絶対にやりたいってことがあって。それは修士課程に進むことです。
そのまま博士までとって研究者になれると嬉しいなと思ってはいますが、どうしても教員のポストが少なかったりするので、臨機応変で行けそうなところに行こうと思っています。そのときはメーカーさんやベンチャーに就職したりしたいなと思っています!
TeikyoSat-4の紹介動画はこちら!
この記事を読んで私達の活動に興味を持ってくださった学生さん!
是非弊団体のウェブを覗いてみてください↓ こちらから参加登録も出来ます。
団体ホームページ
取材・文・編集:岐阜大学工学部 電気電子・情報工学科 応用物理コース3年 濵田莉来(広報部メンバー)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?