星色Tickets(ACT2)_SCENE12
※場所選択でヒロイン絞り込み⑤
すもも③→演劇部部室・演劇部に出向いて必死に練習するすもも(重要①)
あげは④→あげはの家・双子の監視をあげはに頼まれる(重要②)
アリス④→演劇サークル部室・寝ている恭司にビズするアリス(重要②)
志那③→街・スーパーで志那とばったり出逢う
以下、アリス④シナリオ
//背景:演劇サークル部室_夕方
//SE:扉の開く音
アリス「失礼しま……恭司くん?」
恭司「んむぅ……」
アリス「ふふ、可愛い寝顔」
アリス「ほんとうに君はいつも一生懸命なんだね。その情熱が少しでも勉学に傾いてくれれば、わたしとしてはありがたいんだけどなぁ……」
恭司「すぅ……ん、んんっ」
アリス「諦めが悪くて、まっすぐで、正直で。果たしてロミオの周りにジュリエットは何人いるんだろうね」
アリス「……私も、君のジュリエットになれるかな?」
………。
……。
//背景:演劇サークル部室_夕方
瑠奈「ふぁ~それで雛鳥さん、この場面なんだけどっ!?」
星「藤沢先輩? 急にびくってしてどうし…………あ、あわわ、ハレンチ警報発令ですっ!」
恭司「いたぁ!?」
後頭部に強い衝撃が走り、俺は強制的に夢の世界から追い出された。
いけないいけない。一休みするつもりが、どっぷり寝ついてしまっていたらしい。
それは置いといて。
今の痛みはなにかと視線を下ろすと、足元に鉄製のマグネットが落ちていた。背後には雛鳥と藤沢がいる。
恭司「雛鳥か藤沢か知らんが、もうちょい優しく起こそうっていう温情はないのか?」
星「だ、だだだだってせんぱいがアリス先生といけないことしてるからっ!」
恭司「アリス先生?」
雛鳥の指さす先、つまりは隣を向くと、バツが悪そうに顔を逸らすアリス先生がいた。
恭司「……えっと、先生?」
まさか図星じゃないよね?
アリス「……ビ、ビズだよビズっ。か、勘違いされちゃって……!」
恭司「あー、そういうことですか」
相手の頬にキスをする。
その行為はフランスでビズと呼ばれており、簡潔に言ってしまえば挨拶だ。恋愛感情が云々とかいうのは一切なく、して当然の常識。
いつだったか、アリス先生に親睦を深めた証としてビズをしたいと迫られて以降、俺はアリス先生から頬にキスされる行為を甘んじて受け入れている。
否定する理由なんてあるはずがない。
アリス先生の物悲しさが解消されて。俺は、アリス先生に信頼されてるんだなって改めて実感できて。
これぞまさしくWin―Win。両者に幸福だけがもたらされる理想の取引だ。
恭司「勘違いだよふたりとも。キスは挨拶にすぎないから」
瑠奈「き、キスは挨拶にすぎない?」
赤面に続いて狼狽というこれまた貴重な一幕。今日は藤沢サービスデーだ。
恭司「そうそう。ほら、日本人はおはようって挨拶を交わすだろ? 俺とアリス先生にとっては、それがキスなんだ」
星「き……ちゅ、ちゅーが挨拶? う、嘘だよねせんぱい?」
ちゅーって言葉のほうがキスよりえっちに感じるのは俺だけか?
恭司「なに怯えてるんだ雛鳥。俺が嘘をついたことなんてあったか?」
胸に固く誓ってるんだ。誰に対しても正直に、誠実でいるって。
あいつみたいな人間には、絶対ならないって。
……まぁ一部例外的な状況もあるけど。
星「……って、いい感じにまとめてるけど言ってること最悪だよばかぁ!」
恭司「ぐほっ!」
直線を描いたマグネットが額に命中し、俺は糸の切れた人形のようにぐでんと項垂れる。
アリス「恭司くん……どうして君の説明力はそんなに残念なのかなぁ」
恭司「アリス先生、俺、俺さ……」
アリス「言われなくてもわかってる。誤解を生まないためにも、もっと日本語の勉強頑張ろ?」
恭司「去り際に、まさかまさかの、お約束。でも現文は、やりたくないよぉ~」
アリス「どうしてそこまで現代文を忌避するかなぁ」
だって、面白くないもん。
//SE:扉の開く音
すもも「ただい……き、きーくんが死んどる……」
その後、アリス先生の説明のおかげで誤解は解けたけど、かといってふたりが機嫌を直すことはなくて。
すもも「灯台下暗しだねぇ~」
そんなふたりを見ながら、すももはくすくす微笑を漏らす。
恭司「そうだな。俺の灯台の灯りは危殆に瀕して、行く先を照らせなくなったみたいだ」
すもも「うん、その解釈はまぁまぁ面白いんだけど、もう少し、日本語の勉強頑張ろ?」
恭司「すももまでなんでそんなこと言うんだよぅ……」
ちなみに、先週行われた中間テストの現代文は四十二点だった。
赤点を取らないだけ進歩したねって誰か褒めてよぅ……
………。
……。
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