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星色Tickets(ACT2)_SCENE11

※共通

//背景:家庭科室_夕方

米山「こんな感じの衣装に仕上げようと思うのですが……どうでしょうか?」
恭司「さすがは福原先輩の後継。完璧だよ」
米山「ありがとうございます。では明日、雛鳥さんを家庭科室まで連れてきてください。正確に採寸したいので、スリーサイズまでしっかり教えていただけるとありがたいです」
恭司「わかった、伝えとく」
恭司「改めて米山よねやまさん。俺のわがままを聞いてくれてありがとう」
米山「いえいえそんな。福原先輩から引き継いでいたことですので」
 
現・家庭部部長の米山さんは、ぴんと背筋の伸びた、凛とした佇まいでかぶりを振る。

米山「それに岸本くん、去年からずっと頑張っていますから。微力ながら岸本くんの夢にお力添えできて幸栄です」
恭司「ほんとうにありがとう。結果を残せるよう頑張るよ」

//SE:扉の開く音

控えめに手を振る米山さんに深々と頭を下げて、家庭科室を後にする。

//背景:廊下(夕方)

六月も折り返し地点を回り、俺たち演劇サークルの活動はより活発になっていた。

藤沢は常軌を逸した速筆で早くも脚本を半分以上書き上げ、雛鳥は台本を覚えながら練習に励み、すももは、時には雛鳥に、時には演劇部に教えを請いながら玄人役者になろうと努力している。

みんながんばってるな。

……なんて他人事みたく言ってる俺も、三人に負けず劣らずがんばってるわけで。

//SE:扉の開く音
//背景:軽音楽部部室_夕方

恭司「失礼します。門松、作曲の方は順調か?」

旧校舎一階にある家庭科室の次は、その通路の最奥にある軽音楽部の部室。

今日も予定がびっしりだ。

門田「門田かどた久松ひさまつを混合して門松はやめろって言ってるだろ」

この部屋は防音加工されているらしく、声がやたらと反響するのが特徴だ。

門田「作曲の方は順調だよ。久松、音源あるか?」
久松「あるよー。ちょうど今、三曲目の編集が済んだとこ」
久松「どうする恭ちゃん、聴いてく?」

ちなみにこのふたり、俺を一瞥することなくパソコン操作に没頭している。

恭司「うん、聴いてく。ところで門松、藤沢の脚本どうだった?」

けど話を聞いていないわけではなくて、久松に関して言えばヘッドホンを装着しているにもかかわらず恙なくコミュニケーションが成立するのだから不思議なものだ。

久松は今も音源制作に励んでいるようだが、一方の門田は、ヘッドホンもしないで美少女ゲームに熱中している。

女の子『たっくん……その、ダメ、かな?』

艶めかしいアニメ声が、やまびこのように部屋の中で反響する。

……いや、お前こそヘッドホンすべきだろ。

門田「だから門松はやめろって」
門田「……そうだな、さすが風宮学園一の鬼才ってまっさきに思ったかな。文面を見ただけで音楽が浮かんできたし」

そんな残念系オタク代表みたいな門田だが、こいつの作るBGMは商品価値が付くんじゃないかってくらいにすごい。

実際、YouTubeに投稿したBGMの再生数を資金源にして美少女ゲームに投資しているとかなんとか……

久松「ま、門ちん発狂してたし」

そんな個人でもプロレベルの門田のBGMに久松の編集技術が加われば、それはもう、鬼に金棒どころか劉備に孔明。

久松の父親は有名なラッパーらしく、その影響で幼少期から音源編集に携わっていたとかなんとか……

門田「久松なんて号泣してたじゃねぇか。てか、どうすればアリシア推しになるんだよ」
久松「は? 真面目に文章噛み砕けばアリシア推し以外ありえないと思うんだけど」
門田「あ? やんのかてめぇこら」
久松「門ちんはギャルゲーに頭侵されて腐ってんだよ」
恭司「喧嘩はやめて……」

そんな天才ふたりで結成された軽音楽部も、俺の夢に協力してくれる頼もしい仲間だ。

まぁ、こいつら変わり者すぎて全然友だちいないんだけどそれはさておき。

門田「あ、そいえば恭司、この間クリアしたゲームがすっげぇ名作だったから来週やろうな」
恭司「あ、あぁ、楽しみにしてる!」

演劇の完成度をあげるためなら、喜んで徹夜でプレイしよう。

久松「なに言ってんの門ちん。恭ちゃんは来週俺と遊ぶ先約があるんだけど」
門田「は? 先約とかねぇから。恭司は俺のもんだから」
久松「聞き捨てならないね。恭ちゃんは俺の親友なんだけど」
門田「喧嘩はやめて……」

茶髪ドレッドの門田と銀髪オールバック久松が口論をはじめれば、それはもうただの不良同士の喧嘩の一幕でしかなくて……

……というか君たち、そんなに友だちを渇望してるならまずは髪色と髪型直そうよ……

………。

……。


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