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星色Tickets(ACT2)_SCENE16

※場所選択でヒロイン絞り込み⑧
瑠奈⑤→重要①&②で解放 
    相合傘をして帰る恭司と瑠奈
アリス⑤→重要①&②で解放 
     生徒指導に理不尽に怒られる恭司をかばうアリス
志那⑤→重要①&②で解放 
    お見舞いに来た恭司を引き留める志那
小波②→父親から手紙が届いて悲しむ小波を海に連れて行く

※小波シナリオ①・②どちらも読んだ場合、小波END(ノーマルEND)となる。

以下、小波シナリオ②

//背景:恭司の家(恭司の部屋)_朝

恭司「ふぁ~」

今日は土曜日。学生の公休日ともいう。

//SE:カーテンの開く音

恭司「うん、今日もいい天気だな!」

なんて、清々しい青を眺めて、清々しい顔で言えるのは、今週から土曜日の家電量販店のバイトがなくなったからだ。

演劇大会当日も近いし、金銭のやりくりに困っている訳でもないので、家電量販店のバイトの方は徐々にフェードアウトしようと考えている。

書店のほうは、可愛い後輩が悲しんじゃうから辞められそうにないけど。

//背景:恭司の家(リビング)_朝

恭司「おはよう小波」
小波「……」

平日休日問わず、小波の朝は俺より早い。俺があいさつすれば、朝陽に負けない笑顔と共にあいさつが返されて……

恭司「小波?」
小波「っ! お、おはようお兄ちゃん!」
恭司「うん、おはよう。その手紙、誰からだ?」

俺の朝一番のカンフル剤を奪いやがって。

小波「……えっと」
恭司「言いたくないなら無理に言わなくていいぞ」

今の反応でおおよそ察しがついたし。

ま、可愛い妹を持つ兄の宿命だよな。この妬心が胸で疼くのは。

小波「……ううん、ちゃんと伝えるよ」
恭司「いいのか? 特定して審査しちゃうぞ?」
小波「それはやりすぎ」
小波「……お兄ちゃんが思ってるような相手じゃないよ」
小波「相手はね……お父さん」
恭司「っ!」

直後、頭に血が集中して軽いめまいがした。

小波「えっとね……その、今度会わないかって」
恭司「小波、手紙貸して」
小波「あ、口頭で伝えるより文面見たほうが早いもんね」

//SE:手紙を破く音

小波「あ……」
恭司「なにもなかった。いいな?」
小波「……うん」

こくりと小さく頷く小波は、なんだか煮え切らない顔をしていて。

恭司「あいつに会いたいのか?」
小波「……矛盾してるんだ」
小波「会いたくないけど、会わなきゃいけないなって思うの」
恭司「どうしてそう思うんだ?」

俺はあんな奴と二度と顔を合わせたくない。同じ血が通ってると思うだけで吐き気がする。

小波「謝りたいの」
恭司「は?」
小波「だって、全部わたしのせいじゃん」
小波「わたしがこんな体質じゃなければ、お父さんはきっとわたしに人並みの愛を注いでくれた。お母さんは仕事漬けにならずに済んだ。お兄ちゃんはお父さんを嫌いにならず大好きなままでいられた」
小波「全部全部、わたしのせいだから」
小波「怖いとか気乗りしないとか言ってる場合じゃない。わたしには、岸本家の幸福を奪ってしまったことを謝罪する責任がある」
恭司「小波……」

お前、気づいてないだろ。

小波「お兄ちゃんもそう思うよね?」

強情な態度を取りつつも、声が震えて、瞳も揺らいでるって。

恭司「……なぁ小波。今日暇か?」
小波「特に予定はないよ。それよりも――」
恭司「ならちょっと俺に付き合ってくれよ」
小波「……うん、わかった」
小波「お休みの日にお兄ちゃんとおでかけするのひさしぶりだね」

まぁバイト漬けの毎日だったからなぁ。……過去形にするには早いか。

けどさ小波、俺はそれを苦に感じたことはないよ。

………。

……。

//背景:海

小波「わ~」
恭司「絶景だな」

朝食を食べ終えてすぐ電車に乗り、俺たちは電車で三十分進んだ先にある海岸にやってきた。

堤防から水平線の果てまで続くオーシャンブルーを見て歓喜の声を上げ、砂浜を踏み締めてきゃっきゃっとはしゃぎ、小波は楽しそうだ。

恭司「さざ波ってさ、動揺とか小さな争いって意味があるんだよ。知ってる?」
小波「ううん、今はじめて知った」
恭司「そっか」

寄せては返す波の音が心地いい。いつまでも聴いていたくなる。

小波「動揺に小さな争いか。……わたしにお似合いだ」
恭司「俺は凪いだ海よりも、さざ波の絶えない海のほうが好きだよ」
小波「え?」
恭司「凪は静かすぎる。大波は激しすぎる。その中間にあるさざ波を、俺は多くの人が好いていると思うよ」
恭司「寄せて、返して。波には緩急があって。高潮のときもあれば、低潮のときもある。なんだか人生みたいだな」
恭司「ま、要するに波ってのは常に一定の高さが維持されるわけじゃないんだ。だから小波、常にさざ波でいる必要はないんだぞ」
小波「……はは、なに言ってるのお兄ちゃん」
恭司「こわかったんだろ」

俺が何年、お兄ちゃんをやっていると思っているんだ。

恭司「あいつの手紙を読んで嫌な気分になったなら、繕わなくたっていい。こわかったって、はっきり言えばいいんだ」
小波「……お兄ちゃんはなんでもお見通しなんだね」
恭司「ま、お兄ちゃんだからな」

小波が不安に包まれていなかったのなら、あいつと一度、顔を合わせるのも悪くはないと思った。俺もあいつに土下座させたいからな。

けど、小波はまだ、あの頃の恐怖を克服できずにいる。そんな状況であいつとあったら、小波の身になにか起こるかもしれない。それだけは避けたかった。

だって小波は、俺の世界で一番大切な存在なんだから。

小波「はは、お兄ちゃんがお兄ちゃんでよかったなぁ」
恭司「泣いてるのか?」
小波「違うよ。目に潮が染みただけだよ」
恭司「そっか」

じゃあ、そういうことにしておこう。

誰にも見えない小波の涙は、いつでも俺にだけ見えている。

………。

……。




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