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「なんだかんだでカップラーメンが至高です」_第3話

〇光の家(リビング)
ルイス「ルイス、見たものの味がわかる」
ルイス「Food Commentなら誰にも負けない」

自信満々の顔をするルイス。

光「(そんな非現実的なことできるはずがない)」
光「(けど現に彼女は二度も有言実行してみせた)」
光「(だから……)」

光「ルイス、俺に力を貸してくれないか?」

〇評論部屋
シェフ1「(またあのボーイか…)」
シェフ2「(本物は今日も欠席か)」
シェフ3「(ちっ、無駄足だったぜ)」

ルイス「では五津様、ご試食をお願いいたします」

鷹揚に頷く光。

光、料理をひと口。飲み下し、

光「甘味と酸味が程よく調和したファーブルトンであると思います。しかし若干塩気が悪目立ちしていることも否めません。シードル本来の甘酸っぱさをもう少し信用してもよろしいのではないでしょうか」
シェフ1「っ!?」
光「如何されましたか?」
シェフ1「あ、いや、はは仰る通りで」
シェフ1「(なんたる的確な指摘。この間は調子が悪かったのか?」

不敵に笑う仁枝。

その後も的確な講評をする光。
前回と打って代わり、拍手で講評を終える。

〇タクシー
光「ふぅ」
仁枝「お疲れ様。みんな面食らってたわよ」
光「俺は復唱しただけですけどね」

光の隣に座るルイス。

光「ありがとな」
ルイス「イイ子イイ子、プリーズ」
光「…本気で言ってる?」

〇光の家(過去回想)
光『ルイスには別室に控えてもらう。あの部屋に監視カメラはありますよね?』
仁枝『えぇ。目視できる限りだけでも相当な数があるわ』

光『その画像を元にルイスが料理を分析。で、このインカムを使って俺に詳細を伝える。これで俺は完璧な講評ができるってわけだ』

仁枝『いいのそれで?』
光『…いいんですよこれで』
光「(うまくいくのが最低条件なんだ。俺の意思がなくたってうまくいけばなんでもいい)」

光『頼めるか?』
ルイス『All OK』

〇タクシー
ルイス「ルイス、がんばった。イイ子イイ子されなきゃ割に合わない」

せがんでくるルイス。
光、ため息をついて頭を撫でる。

ルイス「Relax Time」
ご満悦のルイス。

仁枝「ふふ、なんだか妹ができたみたいね」
光「あはは…」
光「(大丈夫。今の俺はたぶんフリーだ。…たぶん)」

〇御菊の部屋
ノートパソコンをタイピング。机の上は資料で乱れている。

御菊「へくちゅ!」
御菊「うぅ、花粉かなぁ」

机に置かれた光とのツーショット写真。
写真立てを小突いて、
御菊「…なにしてんのかなアイツ」

〇光の部屋
ノートパソコンをタイピング。
エンターをクリック。
光「…よし」

〇仁枝の部屋
光「榊原さん、あがりまし…」

お着替え中の仁枝。
か~と顔を赤くし、

仁枝「ノックくらいしなさいよ!」
光「ご、ごめんなさい!」

ルイス「んん~、おいしい~」
リビングでお菓子を頬張っている。
※片言は演技のため、これが素の口調である。

〇仁枝の部屋
仁枝「…うん、悪くない。すごくよく書けてる」
光「と言いつつ、付箋の数はえげつないですけどね」

光「(コラムなんて久々に書いたけど、案外衰えてないもんだな)」
光「(ま、元月間10万PVライターですし?)」

仁枝「初稿で全ボツにならないだけ大したものよ。これだけの文才に恵まれながら文章で食っていこうとは考えなかったの?」
光「一時は考えました。けど、すぐ近くに本気でその道を目指してる奴がいたんで、夢に破られたからそっちに方向を変えるってのは悪いなって思ったんです」

光「(だから誘いは全部断った)」
光「(あいつが落ちた会社に志望すらしていない俺が入社するのは違うと思ったから)」

仁枝「そ。あたしは動機が薄っぺらくても、会社が欲しがるのは能力のある人材だと思うけどね」
光「営利主義ですねぇ」
仁枝「あなたも社会の荒波に揉まれればわかる日が来るわよ」

〇清朝社_接待ルーム
編集長「この度は道雄様の仕事を引き継いで頂き誠にありがとうございます」
光「いえいえ、こちらこそ父が迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません」

深々と頭を下げ合う両者。背後に立っている仁枝。
光「(堅苦しくて窒息しそう)」

編集長「出版は二カ月後を予定しています。期日を延ばすことは難しいですが、万一無理そうなら榊原に伝えてください」
光「あ、はい」
光「(なんだ優しい人じゃん)」

編集長、顔から感情をなくして、
編集長「いいな榊原?」
仁枝「承知いたしました」
光「(出版業界の闇を垣間見た気がする)

編集長、笑顔を繕って、
編集長「それでは完成稿をお待ちしておりますね」

〇清朝社_エントランス
光「あの250ページを2カ月で書き上げるのは少々無理があるような…」
仁枝「返事は〝はい〟しか認めないわよ?」

ニコニコ顔の仁枝。
光「…はい。わかりました」

御菊「光?」
振り返る光。
御菊が呆然と見つめている。

光「(そんな予感はしていた)」
光「(あいつはずっと清朝が第一志望だって言っていたから…)」

無理やり笑みを繕って、
光「…久しぶり美川井」

―第3話 FIN―








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