友人に不倫していると打ち明けられた

友人に、会社の上司と不倫をしていると打ち明けられた。
もちろん、相手には妻子がいる。
友人は未婚だ。

話の大筋はこんな感じ。

会社の忘年会終了後、真夜中の3時。

終電も終わり家も遠かったお相手は、
近場のホテルに宿泊することが決まっていた。
友人の家はそこからすぐ近くだった。

居酒屋から帰る方向が同じだった二人は、他の連中と別れ、一緒に帰ることになった。

寝静まった小さな町にヒールの音が鳴り響く。
相手の宿泊先に到着し、ホテルの前でお喋りをして、時間を共にしていた。

切り出したのは上司の方で、「寒いし部屋で話さない?」と持ち掛けてきたらしい。

彼女曰く、「ただの上司だし、まあ大丈夫でしょ」と思って、部屋に上がり込んだらしいが、きっと彼女は、既にわかっていたのだろう。

あ、きっと来るな。誘いが来るな。

だからわざわざ、ホテルの前で無意味な時間を潰したのだろう。

まずそもそも、ただの上司は、
こんな夜中まで一回り以上も歳下の女を連れまわしたりしないし、ただの上司は部屋に誘ったりもしない。

中学生でもない成人女性なんだから、それぐらいわかっていたのに、
「私たちがこの関係になるのは不可抗力でした〜私はただ向こうに誘われただけなの〜」
のような言い方をするのだ。

わざわざこんなところで嘘をついても、
期待していたなら、期待していたと言えばいいのに。

部屋で二人きりになった彼等は、他愛もない話で笑った。

すると相手から、
「ずっと君を可愛いと思っていた。好きだ。」と言われ、「わたしも好きです。」と応えたらしい。

初心な中学生であるかのように互いの気持ちを伝えあった彼等は、自然と相手に身体を委ねるようになったが、結局その日はお酒の飲みすぎがたたったとのこと。
なんて生々しい。



「この話は墓場まで持って行ってほしいから」と、
その日会う前に忠告され、こんな秘密の話をされた。

墓場まで持っていってほしいのであれば、そもそも友人の私にも言うべきではないと思った。
そんな誰にも知られてはならない秘密を、わざわざ友人に話す理由とはなんなのだろうか。

ヒロインにでもなったつもりだろうか。

聞いて、わたし、こんな世間に後ろめたいことをしているのよ…と、自分の波乱万丈な人生を他人に見せつけたいのだろうか。

人に話さないと耐えられないのだろうか。

人に話すことで、過去に起こった話を現実にあったことと再認識し、他人にそれを認めてもらうことで、その後ろめたさを浄化させているのかもしれない。

ただ彼女が私に話したのは、
私に助言を求めていたわけでもなく、ゲス不倫なんてやめろと止めてほしかったわけでもないというのは言わずもがな。

他人に秘密を話されると、この人はえらく私のことを信頼してるのだなあ…自分があなたの立場だったら、ばらしたくない秘密を自分なんかに話さないけど…と思うし、秘密って多少なりともこちらの負担になるから言わないでほしいと思う。

「あの人にこのゲス不倫の話をしたいけど、墓場まで持って行けと言われたからやめとこう」と、自分の感情にブレーキをかけることになる。

それは、自分がこうしたいという意志に反する行動をすることになり、不自由さを感じる。

他人に配慮して思うように動けないのは、自分を疲弊させる。

彼女は「私そんな重い女じゃないから、離婚してほしいとか、私だけを見てほしいとか、そんな重いことを言うつもりはない。」とひたすらに自分が分別のある女であることを説明していたわりに、
「彼は身体目的じゃない。ちゃんと私のことを好きでいてくれてるの。」って言っていた。

全然分別ついてねえじゃん、ちゃっかり相手の心まで求めちゃってるじゃん。ってな。

最後に彼女は、こう言ったのだ。

「よかった。受け入れてくれて」と。

いや待て、私は別に受け入れたわけではない、話を聞いただけだ。

食べ物に例えると、歯で噛み砕いただけで、飲み込んではいない。

じゃあ受け入れずに、「今すぐやめろ。目の前で連絡先を消しなさい。もう二度と相手に会わないように、会社も辞めなさい。」と言えばよかったのか。

君が求めている言葉はそんなんじゃないだろ、ただ話を聞いて自分を認めてほしかっただけだろ。

しかも私が特に批判するわけでも、詰るわけでもなく、ただこいつは話を聞いてくれるだろうと理解したうえで話しただろうに。

こうやって不倫とは始まるものなのか。

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