甥っ子が産まれた

その日は猛暑日で、汗をかきながら歩く街の人々が
様々なニュースで取り上げられている日だった。

甥っ子が産まれた。姉の子だ。

私の親にとっては初孫で、孫が家に来ると決まると、
それはもう神様をもてなすかのように張り切って準備をしている。

私は、乳児なんてみんな一緒だと思っていた。
乳児はみな、同じような顔をしている。

それでも、初めての甥っ子は、かわいいものだ。

大好きなお姉ちゃんの子だから、興味を持つし、
姉の子だから、自分の元に写真や動画がよく届く。

育児について全く詳しくないけれど、
彼等をみていると育児の大変さがよく分かる。

彼等は、大人がちっとも想定できない動きをする。

よく動き、よく眠り、そして、思わぬことで泣く、大きな声をあげて。

何かを見つめていると思ったら、
その2秒後には顔をしかめて泣いている。

そんなことが、しばしば。

だからだろうか、まだ「人間」という感じがしない。

どちらかといえば、「生き物」や「動物」に近い感じ。

人間に限らず、生き物は本当に不思議だと思う。

あの生き物は、姉のお腹で10ヶ月ほど過ごしている間に、
目や鼻や耳をつけた顔をつくり、
手や足やおへそをつけた身体をつくり、
胃や腸をつけた内臓をつくり、
その姿形を世の中に現したのだ。

本当に不思議だと思わざるをえない。

今この子にはどんな景色が見えてるのだろう、
と疑問に思った。

ただ、産まれたばかりの子どもは、
ほとんど何も見えていないと聞いたことがある。
視力はおおよそ0.01。だから泣くのだとも。

そして、思ったのだ。

今この子には、
朝は起きて夜は寝る24時間という時計も、
平日は働いて休日は休むというカレンダーも、
おしっこが出るという言葉も、
持ってないのだ。

今この子にあるのは、だだっぴろい時間だけなのだ。

そして、生活するのに必要なあれやこれやを、
少しずつ時間をかけて覚えていく。


どんな人に育つだろうか

どんな人生を歩むだろうか

どんな景色を見るだろうか

どんなものを好きになるだろうか

今ここから、この子の人生という時間が始まるのだ

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