見出し画像

人は自然の中で生かされている       諏訪茂子

里山とのかかわりから   
 
里山から湖をのぞむ古民家裏の放置竹林を人力で伐採し、なだらかな斜面を出現させたのが2020年でしたでしょうか。谷を見下ろして水の湧く谷津田を田んぼにして米作りを始めました。田んぼの向こう側は緩やかな傾斜が続き、すり鉢状に森に覆われています。そこで毎年(2019年~)、秋から春の初めまで伐採した竹を燃やし続けました。世の中がコロナ騒動に明け暮れる中、私たちは黙々と里山づくりに精を出す時間をいただけたように思います。

この、ダイナミックな地形には里山プラス私たちの感性が生きています。そこに溶けこむように、2021年春、まずはヤギが飼われ、夏に烏骨鶏が20羽加わり、秋に北海道から馬が二頭やってきました。私たちには馴染みのない未知の存在として、彼らと関わりだしました。迎える前の小屋作り、放牧場や柵の準備、干草づくり等、知恵を絞り労力をかける結構な作業が続きました。冬の時期は彼らの旺盛な食欲をみたすためにエサの確保に追われました。古民家谷津田近隣の耕作放棄地や山林から様々な植物を調達して彼らの好みを調べ、探りながらまずは与えてきました。
そこから、与えるのではなく、自分で食べてくれるような生活スタイルへの移行を目指して、工夫を重ねています。その間、ヤギの出産を経験し、馬の飼育方法も寝藁方式からパドック放牧方式に移行するなど、彼らと対話しながら変遷を重ねています。
無心に谷津田の下草を食べ、森の木の葉を食し、竹を豪快にもぐもぐしてくれる彼らの生態は、里山の暮らしにピッタシだということに気づかされました。彼らは家畜と位置づけられていますが、里山での暮らしを営む大切なパートナーでもあるのです。
アサザプロジェクトでは1995年から「トキが舞う霞ケ浦を!」を目指し、多くの方々のご支援ご協力をいただいてこれまで活動してまいりました。最近では、湖の自然再生事業だけではなく、その流域で衰退する里山での営みの復活、つまり里山での農業の在り方を見直すことが湖の自然再生に深くかかわるという視点「里山から湖をのぞむ」活動に挑戦しています。

新しい農業のスタイル

「谷津田での米づくり」は霞ケ浦の水源地保全事業の一環として鹿嶋市、桜川市、牛久市などで10年以上にわたり進めて参りました。その成果として生物多様性の復活はもちろんのこと、最近では地域住民の方々の眼差しの変化を感じます。耕作放棄された谷津田を再生し、そこで無農薬の米を作り、酒を生み出し、都会から時々やってくる多くの参加者と楽しそうに田植えや稲刈りなどでにぎわっている光景は、地元の衰退し高齢化する農業従事者からは驚きと戸惑いにちかいものがあったのでしょう。
まさか、続くまいが10年以上の成果、年々熟練してくる当基金若手職員への農業の担い手としての期待は大変大きいようです(笑)
この夏には、みなさんとともに手入れをした谷津田で沢山のホタルを楽しむことが出来ました。皆様のご協力により大人にも子供にも自然体験を提供できるフィールドとしても大変意義深い取り組みに成長させてくださったことに、心より感謝申し上げます。

コロナ禍と戦争が問いかけるもの

ここ数年、世界を見渡せばコロナ騒動とともに「自己を管理すること」が強いられ、家庭においても社会においても満足感や幸福感を得にくい生活が続いているように思えます。それに拍車をかけるように戦争が始まり、テレビを通して街が破壊され多くのかけがえのない命が失われている映像は、言語を絶し、見るに堪えません。
何か先人が築き上げてきた大切なもの、建造物や暮らしや人々の心まで、社会の宝物がひとつひとつ壊されていく感覚です。それは、遠いウクライナだけの話ではなく、私たちの暮らしにもいつの間にか忍び寄っているのでしょう。
昔から、景気が悪くなると戦争が始まるよ。不景気というのは戦争を導いてしまうので気をつけなさいと言われています。コロナの影響で不景気が加速し、物価が上がり、私たちの生活はじわりじわりと苦しくなっています。
いよいよバブル経済の終焉、「お金に支配された社会」からの、立て直しの時期なのだと思います。このような世の中からどのように抜け出て行けばよいのか、私たちに出来ることは何なのか、一人一人がじっくり向き合っていかなければならないと思います。

戦前までは農業を基盤としてこの国が成り立っていたわけですから、戦後高度経済成長と反比例するかのように衰退してしまった「里山の自然 農の営み 日本の自然環境」を取り戻すことが、停滞しているこの国を復活させる解決の糸口の一つになるかもしれませんね。

自然界の生命力は すごいよ!

さて、里山では樹木はバンバン成長し、お構いなしにはびこってくる植物の生命力には圧倒されます。草木から伝わってくる生きることのたくましさや生き延びていくための知恵には脱帽です。
切っても切っても生えてくる竹のように、尽きることのない自然界のエネルギーというものに接していると、いつの間にか人間も自然の一部となり、そのエネルギーをいただきながら身も心も別次元で作動しているように感じられます。私にもこんな能力が残っていたのかと気が付く瞬間です。
私たちの日常は金銭で物を取得していくことが当たり前ですが、こちらでは身体の機能を駆使し、道具を使いこなして、生き物たちのエサや燃料を確保します。里山の暮らしは自然への働きかけで成り立っているのですね。
都市での一見便利で楽な人々の暮らしは、いつの間にか自然と戦って生き延びてきた人間の生存能力を弱めているのかもしれません。しかし、自然との付き合いを復活させれば、誰にでも眠っている能力を呼び覚ますことが出来ると確信しています。(笑)

ありがとうのつながりが世界を救う


アサザプロジェクトでは、小学校の総合学習の授業で「生きものとお話しする方法を学び、自然はありがとうのつながりでできているんだよ」と子ども達に伝えます。人間もありがとうのつながりの中で生かされていると。この「ARIGATONOTSUNAGARI」を世界中に広めていけば、地球のあちこちで起きている紛争や自然破壊を終わらせることができるかもしれませんね。このメッセージを伝え、活動として実践していくことがアサザプロジェクトなのだなと改めて肝に命じています。
人が自然の一部であり、自然によって生かされている存在であることを確認できなければ、そして、人間の都合で自然を破壊してきたことの愚かさを自覚出来なければ、霞ケ浦の復活もないのでしょう。
2021年からアサザプロジェクトに加わった里山の新しい仲間達(馬・ヤギ・烏骨鶏)と共に「自然を取り戻さなければこの地球上で生きていけなくなる同じ仲間」として、自然を復活させ平和を取り戻す取組を続けていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?