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【短編小説】にゃんこライフ ~ネコノカタチノボク~第9話「2輪の花」

前回のお話はこちら

 チャコがいなくなってから、蓮さんが変わったことに気づいた。彼は以前は花瓶に1輪の花を飾っていたのに、最近では2輪の花を飾るようになったんだ。
 最初は偶然かと思っていたけど、それが何度も続いていることに気づいた。2輪の花は、チャコとの絆を象徴しているのかもしれない。
 ボクは不思議に思って、2輪の花を交互に匂いをかいでいると、蓮さんが答えてくれた。
「実はそれはチャコの思い出だよ。1輪の花だけでは足りなくなってきたんだ。チャコとの絆を感じるために、2輪の花を飾っているんだよ」
 聞いて納得したボクは、蓮さんに感謝の気持ちを込めて頭をなでなでしてあげた。
 ボクは蓮さんが2輪の花を飾ることで、チャコとの絆を大切にしていることを知った。でも、それだけではなかったんだ。

 ある日、ボクが蓮さんの部屋でのんびりと過ごしていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。この家に誰かが訪ねてくるのは珍しい。
「やっほー、蓮くん、元気だった?」女の人だ!ボクは驚いてソファーの下に隠れた。
「まあ、なんとかね」蓮さんはそう言ってその女性を迎え入れた。
「あら、この子は?」ソファーの下のボクを見つけたようだ。
「半年前に拾ったんだよ。姉さんに言ってなかったっけ」この人、蓮さんのお姉さんなんだ!
「へぇ、かわいいね、おいで」恐る恐るソファーの下から出ると、抱き上げられてしまった。うん、まあ悪くないかな。
「私もチャコちゃんのお花持ってきたから、飾っていい?」
「じゃあ、この花瓶使って」2輪の花の花瓶がふたつできた。

 その夜、眠りにつく前にボクは、2輪の花が飾られたふたつの花瓶を眺めながら、蓮さんが言った「チャコとの絆を感じるために」という言葉が頭から離れず、謎めいた気持ちが湧いてきたんだ。


次回、【短編小説】にゃんこライフ ~ネコノカタチノボク~「第10話」投稿予定です

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