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【短編小説】にゃんこライフ ~ネコノカタチノボク~第8話「猫の中に眠るパズル」

前回までのあらすじ
ボクの名前は悠太(ユウタ)。高校を卒業したばかりの18歳だ。卒業式の帰り、疲れと興奮が一気に押し寄せ、気を失ってしまったんだ。気がつくと、なんとボクは猫になっていた!猫に生まれ変わったボクは、蓮という男性に拾われて飼われることになった。最初は猫になったことに驚いたけど、今じゃすっかり猫らしい生活に慣れてきた。この家にはチャコという先輩猫がいて、チャコはいつもボクと遊んでくれた。でも最近、彼女の体力が衰えてきているようなんだ。

前回のお話はこちら

 チャコがいなくなってから、なんだか家の中が静かになったなぁ。ボクも蓮さんも、ちょっと元気がない感じだ。

 数日が経ってもチャコのことを話すことはなかったんだけど、ある日、ソファでくつろいでいる時に、蓮さんがボクの背中を撫でながら「ハチくん、昨夜ね、チャコの夢を見たんだよ」と言ったんだ。ボクは一言も聞き逃すまいと聞き耳を立てたよ。
「夢の中では、チャコと一緒に公園を散歩したんだ」蓮さんは、チャコが颯爽と歩いている姿や、チャコの好きだった日向でののんびりとした時間を思い出したんだって。
「ハチくん、チャコはいつものように優雅に歩いていて、目がキラキラしていたんだよ。俺はその姿を見て、少しホッとしたんだ。チャコはきっと天国で幸せに暮らしていると思うんだ」そう言って、ボクの頭を優しく撫でてくれた。
 蓮さんがそんなことを言うと、ボクも気になってしまってさ。ボクもチャコの夢を見たいなぁって思って、夢の中でチャコと一緒に遊んだり、おしゃべりしたりしたいって思ったんだ。
 だから、ボクはその日の午後、チャコの猫ベッドで昼寝をしてみたんだ。すると、なんだか不思議な夢が見れちゃったんだよ。

 夢の中では、ボクが広い草原を駆け回っているんだ。ふわふわの風が気持ちよくて、空はどこまでも青く広がっている。
 そこで、チャコが現れたんだ!でもね、チャコはいつもと違って、まるで天使のような輝きをまとっていたんだよ。
「チャコ!」ボクが呼ぶとチャコは「大丈夫だよ、いつでもそばにいるから」と言ってくれたんだ。それを聞いて、ボクは安心した気持ちでいっぱいになったよ。
 すると、遠くの方から声が聞こえてきた。高校時代の友人たちの笑い声や騒がしい会話が絶えず響いていて、とても賑やかな雰囲気だったんだ。
「悠太くん、行ってごらん」そうチャコに言われて、行ってみることにした。悠太くん?そうだ、ボクは悠太だ。
 行ってみると、学校祭や遠足、代わって家族との食卓の光景が浮かんでは消え、そしてなぜか病院での手術の光景が現れたんだ。そして目が覚めた。

 目が覚めるともう夕方で、やっぱりチャコはいないけど、夢の中での出来事がなんだか心に残っているんだ。
 高校時代の友人たちとの楽しい思い出、家族との温かい時間、そしてなぜか病院での手術の光景まで明瞭に蘇ってくる。
 ボクが手術台に横たわり、医師たちが周りにいて、不思議な器具があちこちに置かれている光景が目に浮かんだんだよ。
 これは何だろう?これって、ボクが猫になった原因と関係があるのかもしれないって思ったんだ。


次回、「にゃんこライフ ~ネコノカタチノボク~第9話」投稿予定です。

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