【短編小説】にゃんこライフ ~ネコノカタチノボク~第7話「チャコの匂い」
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突然のことで、ボクはまだ現実を受け止めきれていない。チャコがいないなんて、信じられない。いつもボクを見守ってくれていたあのチャコが、もうここにいないなんて。
ボクはチャコの隣で寝ていた。チャコの呼吸は荒く、身体もぐったりしていた。
最近、チャコは元気がなく、食べ物もあまり食べなくなってしまった。飼い主の蓮さんが心配して病院に連れて行ったけど、病気ではないと言われたそうだ。
ボクも心配だったけれど、何もできなかった。一緒にいることが彼女にとって何か意味があるんじゃないかと思って、ただ側にいた。
明け方、チャコはボクに向けて、静かに話しかけた。「ハチくん、ありがとう。いつも一緒にいてくれて、楽しかったよ。でも、もうハチくんと遊ぶことはできないんだね。ごめんね」
ボクはチャコの言葉に心が痛んだ。チャコがいなくなることが現実となってしまう。ボクは蓮さんと一緒にチャコに寄り添って、彼女の最後の瞬間まで傍にいた。
そして、チャコは、ボクたちの前からいなくなった。ボクはチャコと一緒に過ごした思い出が蘇り、悲しみでいっぱいになった。
家中にあふれるチャコの匂いをかいで、ボクは彼女の思い出に浸っている。
チャコはいつも、一緒に遊んでくれたり、ボクがベランダから飛び降りないように注意してくれたり、この家に来るまでひとりぼっちだったボクの横に寄り添ってくれて、ボクにとってかけがえのない母のような存在だった。
きっとチャコは、今は自由な生活を楽しんでいるんだろうな。
ありがとう、チャコ。ボクの家族になってくれてありがとう。
次回、「にゃんこライフ ~ネコノカタチノボク~第8話」投稿予定です。
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