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夜行バスにのって

乗ってから気が付いたのだけれど、実は夜行バスに乗るのは初めてだった。長距離を移動しながら本を読みたい、と思ってバスにしたのだが、バス停を周り乗客を全員乗せたところで、車内の照明が消されて真っ暗になってしまった。窓の遮光カーテンを開けたり、めくったりしてはいけないという。

「え、外見られないの?」
「てか、全然本読めないじゃん、、」

と、意義有りまくりだが、少しでも明かりを取り込むとすぐに怒られそうな雰囲気にのまれて、大人しくしている。

いや、何でも経験してみないと分からないなぁ。夜行バスの常識を知らなかった僕は今、学んでいる。

と同時に、なぜ夜行バスがここまで寝る人に標準合わせているのか気になる。寝台でもないし、そんなに寝ることに特化する必要あるのだろうか?

「そもそも飛行機ぐらいの明るさがあっても良くない?」「もしくは座席ごとの読書灯とか」

飛行機だって、電車だって寝たい人は寝ている。ここまで強制的に真っ暗にしてしまうから、遮光カーテンを開けた時に流れるように入ってくる街灯の明かりが気になってしまう雰囲気になるのだ。普通に少し暗めの照明で良くないだろうか?夜なんだし。窓の外が見えない移動なんて閉塞的過ぎる。

もう少し今時の、座席が広い豪華な夜行バスだとまた違うのだろうか、もしくは会社や車体によるものなのか? せっかく学んだついでにもう少し知りたくなる。

とはいえ、東京駅から12時間。僕はこの暗闇と仲良くしなければならない。左側の窓の外、少し高くなった所を線路が走っているらしい。電車とすれ違う度に車両の明かりが流れて行く(遮光カーテンも完璧ではないのだ)。何だか電車に乗っている人達を想像すると楽しい。その内に電車が通らなくなると、バスの車内はまた真っ暗になる。と思ったら、今度は車が連続して通るようになった。すれ違う車のヘッドライトが流れる。それにしても感覚が均等で、少し違和感を感じる。我慢できなくなって、僕はカーテンをめくり窓の外を覗いてみた。

バスはトンネルの中を走っていた。均等に通り過ぎる車はトンネル内の照明だった。

もしかすると、さっきまですれ違っていた電車も全く別のものなのかも知れない。(しかし音を聞いたはずだ)

バスの中は相変わらず真っ暗で、僕たちは眠ることを強要されている。西へと走る。暗闇と共にもたらされるのは眠りだけではないのだ。

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