猫との合意形成

先日、ある子猫といわゆるお見合いをしました。
里親を募集している猫と、里親になりたいと申し出る人間が、猫を保護されている方の立ち合いのもとで会う、あのお見合いです。

その猫と私は、ある譲渡会で初めて会いました。
ビビビ的なものがあったわけではなかったけど、目がとても印象的だなと思った猫でした。
その猫の預かりさんからいろいろお話をうかがうことができたこともあって、その日はなんだかんだでその猫の近くに一番長くいました。

譲渡会の会場で「絶対この猫を!」と思うまでのことはなかったけれど、でも心にひっかかるものはあって。帰途に着いてからもその猫の写真を眺めている時間が長くて、「もっと写真を撮ってくればよかったなあ」と思ったりもして。
その日の夜に、お見合いの機会をいただけるかどうかを問い合わせる連絡をしたのでした。

その譲渡会を開催していた保護団体の方には、「猫との出会いは縁だから、お見合いもトライアルもしたあと断ってもいいし、じっくり縁を探してみてください」というようなことをおっしゃっていただいていました。
そのご厚意に甘えての機会です。お見合い当日には、ほかの猫も連れてきてもらっていました。

「また会ったら自分の気持ちがどう動くだろうか」「猫は私のことをどのように見るだろうか」というようなことを考えながら向かったお見合いでは、絵に描いたような一目ぼれとか奇跡的な意思疎通とか、そういう劇的な感慨はお互いになかったように思います。
猫の対応も、一般的に人なつっこいといわれそうな子猫のそれのように見えました。
でも離れがたいなあという気持ちはあって、でもきりがないからなあとも思って、その場をあとにしたのを覚えています。

写真も何枚か撮らせてもらい、その写真を帰りの電車でも家に帰ってからも眺めていました。時間が経つにつれて「じわじわと距離を縮めていけるかもしれないな、お互いにいい距離感でやっていけるかもしれないな、そういう仲になれるかもしれないな」という感じが、気持ちがしみ出すように広がっていきました。

人間どうしのお見合いなら相互の意思と合意形成が重要なのだろうと思うのですが、猫とのお見合いでは猫側の意思確認ができないので、基本的には里親になりたい人間と猫を保護している人間のあいだで合意形成を図るということになります。
保護している方からは、幸いOKをいただくことができました。

あとは私の最終決断だけ。
私は帰り道で9割方もう決まっていて、あとは、現実的なこととかいくつかの検討事項を解決して、猫の一生を背負う覚悟を決めるのみだと思いました。

でも、できれば本当は、猫の意思を確かめられるといいなと思いました。「こちらはそう思いました。そちら側はどうですか? うちにきてもいいと思ってくれますか? いやじゃないですか?」って聞けたらいいのになあ。

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