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530円で優しさをのむ。

日曜の朝なのに、早起きして8:30発の電車に乗った。今日は髪にパーマをあててトリートメントする。可愛くなって昼からは友達と遊ぶんだ。そう思っていた。

時刻は10:05、いま私はモスバーガーにいる。髪の毛は朝ひっつめたままの適当な感じで頭に鎮座している。パーマは断られ、何もしないで店から出たのだ。「あなたがしたい髪型はコテでやったほうがいい」美容師さん曰く、そういう事だった。美容室に滞在したのは15分だった。お金は払ってない。
優しさなんだろうなと思った。「でもさー、朝早起きしてずっと検索しててさー……」友達と会うまであと3時間。予定がなくなった街をぶらぶら歩く。可愛い服装に適当な髪型の自分がビルのガラスに写ってなんか悲しくなる。美容師さんの優しさをのみこめない。
そういえば朝ごはん食べてなかったなと思い、近くのモスバーガーにふらりと入った。朝モスのセットを頼んだ。ふわふわのパンに新鮮な野菜、ホットコーヒーが運ばれてきた。おいしそう。
それでもあれは優しさだった。あたたかいパンと一緒に飲みこむ。優しさだったよね。コーヒーと一緒に飲みこむ。おいしい。わたし幸せ。あれは優しさだったんだろう。
美容師さんの手はガサガサで、沢山の人の髪を巻いてきたんだろうな、と思った。「クレームとか怖いんで」って言う美容師さんは、きっと何人もの人にクレームされたんだろうな。その上でわたしの髪質、髪型にはそのパーマは難しいと思ったんだろう。「パーマ 断られた」で検索すると、どうやら細い毛にはパーマをかけにくいようだった。言わなかったけど、きっとそういうのもあったんだろう。悲しいけど、優しさをのむ。日曜の朝はそんな感じだった。
友達は早めにきてくれるらしい。これも優しさだなと思った。軽やかに生きるには、わたしはまだ若い。

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