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ドリーミング・アップ!公演最終日をめぐる回想①

2023年4月9日。
東京ディズニーリゾート35周年と同時に始まったデイパレード「ドリーミング・アップ!」がついに最終公演を迎えた。

あれから月日は過ぎ、執筆現在東京ディズニーリゾートは絶賛40周年、大盛り上がりといったところで、「ドリーミング・アップ!」の事を語る者は殆ど居なくなったものの、このパレードに対する想いを色々綴りたいと思う。

というのも、私がレギュラーショーの最終日を現地で見届けたのは、「ドリーミング・アップ!」が人生で初めてであった。そして、「ドリーミング・アップ!」や、このパレードが公演されていた期間の東京ディズニーリゾートは、私のこれまでの人生を築き上げるにあたって核になる、とても大切なものであった。私はもうじき二十歳を迎えることもあって、少々10代を振り返る時間に付き合ってほしい。

遡ること、5年前。
当時私は中学3年生であった。
正直、この頃の記憶はあまり残っていない。恐らく、半分トラウマのような経験が多かったから、アイデンティティの崩壊を防ぐために脳が自動的に記憶を消去しているのだろう。

それは確か、人間関係でトラブルになったり、ブラック部活で人としての尊厳を踏み躙られたり、家族からの高校受験への圧力だったり…となかなかに地獄な日々を送っていたからだと思う。この頃、私は人生で初めて希死念慮というものを覚えた。

毎日が苦痛なのもそうだけれど、何より、当時私は将来に何も希望を見出せなかった。成長すると必然的に大人になる。とはいえ私の周囲にいた「大人」といえば、夫婦仲が絶望的に悪い両親であったり、体罰やセクハラを行う教師だったりと、正直なりたくない人物像そのままであった。

そんな中、私が当時趣味にしていたものといえば、3DSである。ゲームもそうだけれど、特にYoutubeにはまっていた。とはいえお気に入りのYoutuberがいるというわけではなくて、おすすめに流れてきた動画を適当に観ているといった具合であった。ゲーム実況やおもしろ動画など、とにかく笑えるようなものをよく見ていた。当時、笑える状況にいなかったから。

そんな中、とあるひとつの動画のサムネイルが目に入った。
金色に光るコスチュームに身を包むミッキーマウスが、両手を広げている。
最後の「ハピネスは、ここにあるよ!」という文字。
そう、この日は2018年4月上旬、「ハピネス・イズ・ヒア」の最終日であった。

この動画1本が、私の人生を変えた。動画制作者の週末ディズニーさんは、ディズニー界隈ではすっかり有名人であり、それに今は結婚生活で忙しそうだから、会える機会なんてないと思っているけれど、いつか巡り逢えたら一言感謝を伝えたい。

なんとなく動画を再生したけれど、気づけば大泣きしていた。久しぶりに。
私は特にこのパレードに思い入れがあるわけではなかった。ディズニーは家族で年1回行くか行かないか程度で、しかもアトラクションばかり乗らされていたから、このパレードの存在を知ったのもこの動画である。

でも、動画やコメント欄をみれば、これがどういう状況なのかは分かる。大勢のディズニーファンが、この長年続いていたパレードを愛し、そして4月9日、別れの日を迎えたのだと。

そして、「ハピネスは、ここにあるよ!」というセリフ。これが当時の自分に深く刺さった。毎日が地獄で、世界は残酷だと思っていたけれど、世の中すべてがそうなっているわけではない。少なくとも東京ディズニーリゾートには、ハピネスがある。そう思わせてくれた。それが何よりも嬉しかった。明日を生きる希望を持てた。

それからというものの、私は東京ディズニーリゾートについて調べまくるのと同時に、今の状況を抜け出す努力をした。地元は狭い残酷な世界だったから、絶対に抜け出してやる。そう自分に誓い、死ぬ気で受験勉強に励んだ。また、沢山本を読んで、他の世界を知る努力をした。

志望校を地元トップの進学校に見据え、模試で合格可能性5%と宣告されても構わず勉強を続けた。友達には馬鹿にされたけれど、もはや悔しくもなかった。

と同時に、当時は東京ディズニーリゾート35周年でもある。当然、「ドリーミング・アップ!」もYoutubeで何百回も観て、聴き、親に頼んでTDRに行かせてもらい何度か現地でも観た。
そして、男ながらミッキーマウスのその生き様に、思いっきり惚れたのを覚えている。恋愛的な意味ではなくて、尊敬の意味に近い。

そんなこんなで、将来はオリエンタルランドで働くという夢もできた。そのためには、まずは大学受験を見据えている高校に行かないといけない(新卒の募集条件大卒以上)。そして、出来れば難易度の高い所に。
だからこそ、一生懸命勉強した。自転車や徒歩で地獄の学校に向かう途中は、頭の中でメディテレーニアンハーバーや、オリエンタルランドの会社内を闊歩したり、自転車で優雅に通勤したりする様子を代わりに描いて、行きたくない気持ちを紛らわしていた。

そしてついに、合格発表日を迎え、無事合格した。
まさに、ディズニーとの出会いが、私の憂鬱な中学時代の人生観を一変してくれた。

とはいえ、これは「ドリーミング・アップ!」に懸ける想いを語るにあたって序章に過ぎない。なんせまだ4年もあるのだから。

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