見出し画像

緩和ケア医師ががん患者になってわかった「生きる」ためのがんとの付き合い方~はじめに全文公開~

 こんにちは、あさ出版noteをご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、2月に発売しました廣橋 猛 著『緩和ケア医師ががん患者になってわかった「生きる」ためのがんとの付き合い方』の「はじめに」の全文公開のお知らせです。

 本書は、がんの緩和ケア医療を専門として、患者に正面から向き合ってきた医師が、2023年5月に甲状腺がんに罹患していることが判明し、患者となった経験より、患者とその家族に知ってもらいたいことを、医師&患者両視点から、がんの真実と誤解を綴りました。

それでは、「はじめに 全文公開」をご覧ください。

はじめに 全文

 本当にがんになってしまったのか
 家族にはなんて言う
 一生がんと付き合っていかなければいけないのか
 この痛みは我慢するしかないのか

はじめにより

2023年に甲状腺がんと診断されてから手術を経た現在までに抱いた私の気持ちです。特に診断された当日は、頭のなかで得体のしれない不安がぐるぐると回り続けて「なんで自分が」という気持ちに心を支配されました。
 おそらく、本書を手に取ってくださった皆さんの多くは私と同じがん患者さん、もしくはそのご家族であることでしょう。
 本書では私自身の体験を踏まえて、医者と患者の2つの視点からがん患者さんやそのご家族ががんと付き合っていくために必要な知識を解説していきます。というのも、私はがんの緩和ケア医療を専門とし、これまで医師として患者さんに正面から向き合ってきたのですが、いざ自分ががん患者になると戸惑うことが多くあったのです。
 患者さんは、私たち医療者が思っている以上に、さまざまな我慢をしています。私自身も手術前の不安や術後の痛みに悩まされました。医師である私がそうなのですから、一般の方であればなおさらでしょう。
 本当の患者さんの気持ちは、その立場になってみないとわからない。そう思い知らされました。特に、私が強く感じたことのひとつは、がん治療中から緩和ケアを受けるべきだということです。
 そうすることで、痛みや不安だけでなく、社会的な困りごとを解決できるし、なによりも診断時や早期から取り組むことでがん治療の効果を最大限発揮できるからです。

 残念ながら、世間の緩和ケアのイメージは終末期など、もう治らない方が対象だという誤解に包まれていることが多くあります。しかし、実際のところはそうではないのです。実際、私が勤める病院にはがん治療をされながら、緩和ケアを一緒に受けることを希望される方が多く通院されています。
 私が心がけているのが、「生きる」ための緩和ケアを行うということです。がん治療しながら緩和ケアを受ける方は、日々の生活をしながら治療に励むわけで、少しでもよく「生きる」ためにどうしたらよいか、一緒に考えてサポートをしています。
 本書は、この「生きる」ための緩和ケアを、すべてのがん患者さんに知ってもらいたく執筆しました。構成は以下の通りです。
 第1章では、私が甲状腺がんと診断されたときから、治療を受けるまでの葛藤についてまとめました。第2章では実際に治療を開始したときから、その心情の変化や私が感じたつらさを医師と患者の視点から記載しました。
 第3章では、緩和ケア医である私ががんになったからこそわかった7つのこと、皆さんに絶対に知っておいてほしいことについてまとめました。第4章では、がん治療を受けながら緩和ケアを受ける必要性についてまとめました。なにが有効なのか
その理由やどのように受ければよいか解説しています。
 第5章では、病気の種類別に知ってほしいことをまとめました。一言でがんの緩和ケアといっても、病気によって注意すべき点は異なります。類書では一切触れることのない、でもよりよく「生きる」ためには絶対に知っておいてほしいことを記載しました。第6章では、病気が進行した状況、すなわち終末期の緩和ケアについてまとめています。読まれている方の病気の時期に応じて読み進めていただければと思いますが、知っておくことで「もしも」に備えることができるかもしれません。
がんがどのように進行していくかを知ることができる内容になっています。
 第7章では、ここまで解説してきた「生きる」ためにがんと付き合った患者さんが、どのような人生を過ごしていかれるか、具体的に4人の物語を紹介しています。第6章までで得た知識を、具体的な事例で理解できるようになっています。

本書を通じて、すべてのがん患者さんが、「生きる」ためのヒントが見つかることを祈っています。

永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長 廣橋猛 

はじめにより

はじめに、の全文公開はここまでになります。

さらに「詳しい目次」をご紹介します

第1章 見える世界が変わった

なにげない日常から突然に人生は変わる 12
甲状腺に多発する腫瘍が見つかる 19
詳しい診断のために針刺し細胞診を実施する 23
生検の結果が気になり気が気じゃない1週間を過ごす 26

甲状腺がんになって私が最初にしたこととは? 30
大学病院を受診リンパ節転移の恐れも 36
仕事仲間に病気を伝えたら思いがけない反応が返ってきた 42
「がん相談支援センター」で悩みや不安を解決する 46
最悪の事態を想定して自分の死を意識する 51
がん患者であることを世間に公表する 54
緩和ケア医師ががん手術を受ける 60

第2章 緩和ケア医ががん治療をはじめる

首元に繋がれるドレーン手術後、痛みで目が覚める 66
傷の痛みが続いて地獄のようにつらかった深夜 69
緩和ケア医でも患者になると痛みを我慢してしまう 72
一生飲み続けなければならない甲状腺ホルモン薬を服用開始 76
龍角散のど飴とガリガリ君アイスはがん患者におすすめ 78
手術後は15分程度の通勤もできないくらい体力が低下した 80
薬の飲み忘れを防止するためにできること 84
長く続く喉の違和感をマッサージなどで解消する 87
これから数十年と続く再発の恐怖に付き合っていく 90

第3章 がんになってわかった7つのこと

① がんになると怪しい助言をしてくる人が多くなる 94
② がん情報サービスの正しい情報が身を助けてくれる 98
③ がんと診断されたときこそ緩和ケアのサポートが必要 102
④ 痛みは絶対に我慢すべきではない 109
⑤ 痛み止めを使うタイミングで身体をグッと楽にできる 112
⑥ がん患者の身体には「体力温存療法」が有効 116
⑦ 再発の恐怖と向き合うために心まで「病人」になってはいけない119

第4章 診断時&早期からがん治療と緩和ケアを同時に行う

がん患者が知っておくべき4つのつらさとは? 126
がん治療と医療用麻薬で快適な生活を送る人もいる 130
診断時&早期からの緩和ケアが必要 134
治療中から緩和ケアを受けるべき3つの理由 138
がん治療医と緩和ケア医の2人主治医制で治療を進める 142

第5章 がんの種類別!
緩和ケア医師が教えるつらさを和らげるための知識

~肺がんの痛みやつらさへの対応~
 痛みよりも息苦しさに困る 148
~胃がんや食道がんの痛みやつらさへの対応~
 食事の前に予防で痛み止めを飲んでおく 153
~大腸や直腸のがんの痛みやつらさへの対応~
 便秘にならないように下剤を使い分ける 156
~肝臓がんの痛みやつらさへの対応~
 腹水による痛みは医療用麻薬が効く 159
~膵臓・胆管がんのつらさへの対応~
 胆管炎による発熱に気をつける 163
~乳がんの痛みやつらさへの対応~
 リンパ浮腫は早期に発見すべし 165
~婦人科がんの痛みやつらさへの対応~
 足に浮腫ができたときは主治医に相談 169
~頭頸部がんの痛みやつらさへの対応~
 出血しないように薬やガーゼで手当てする 172
~骨のがんの痛みやつらさへの対応~
 身体の状態を見極めて骨折リスクを減らす 175 ?
~泌尿器科がんの痛みやつらさへの対応~
 常に尿路からの感染症に注意する 179
~脳のがんの痛みやつらさへの対応~
 手術や放射線治療で神経症状を抑える 181
~血液がんの痛みやつらさへの対応~
 抗がん剤が最も効果的 184

第6章 終末期としての緩和ケアをよく知る

未来の安心のために「もしも」のことを話す 188
知っておくべきがん患者の体力の落ち方とは 192
緩和ケア医が考える抗がん剤治療のやめどきは? 196
緩和ケア病棟に入院するためにしておきたいこと 200
在宅医ガチャで後悔のない治療を 205

第7章 事例から見る4人のがん治療

長野美枝さん 51歳女性 210
田村和男さん 63歳男性 217
野口千佳さん 72歳女性 230
佐藤千秋さん 47歳女性 242

おわりに 254

著者プロフィール

廣橋 猛(ひろはし・たけし)

著者 廣橋 猛(ひろはし・たけし)

永寿総合病院がん診療支援・緩和ケアセンター長、緩和ケア病棟長。2005年、東海大学医学部卒。三井記念病院内科などで研修後、2009年に亀田総合病院疼痛・緩和ケア科、三井記念病院緩和ケア科に勤務。2014年から現職。病院での勤務だけでなく、浅草にある野中医院にて在宅医療にも携わる。病棟、在宅とふたつの場で切れ目なく緩和医療を実践する「二刀流」緩和ケア医。主な著書に『素敵なご臨終 後悔しない、大切な人の送りかた』(PHP研究所)、『がんばらないで生きる がんになった緩和ケア医が伝える「40歳からの健康の考え方」』(KADOKAWA)がある。

書籍もぜひ、ご覧ください

電子はこちら


最後までご覧いただき、ありがとうございました。

がんと診断される人は年間100万人(2019年国立がん研究センター)で、がんで亡くなる人は約38万人。

年間の死亡総数に対して26.5%を占める時代となりました。
がん患者とそのご家族が「穏やかに」「快適に」過ごすためには病気とどう向き合えばいいのか、本書が少しでも、みな様のお役に立てると幸いです。

あさ出版noteでは、これからもさまざまな情報を
お届けいたしますので、ぜひいいね♡や登録をお願いいたします。

 あさ出版メルマガも、ご登録お待ちしています♪ https://w.bme.jp/bm/p/f/tf.php?id=asapublishing&task=regist

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?