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三段論法の概念の関係のパターン

この記事で三段論法の形式のパターンについて解説しました。

重要な理解として、3つの概念の関係を決めるのは大前提と小前提で、結論はその関係から読み取れることを述べます。


命題には4つ型があり三段論法の形式には4つ格があり、組み合わせると256パターンあり、そのうち24パターンが妥当な結論なり、弱勢式を取り除くと19パターンが存在します。

今回はそれが正しいか確かめてみたいと思います。


ただ256パターンを考えると、とても大変なので概念の関係から逆算して妥当となる式(例:AAA-1)を導いたほうが楽できるかも知れません。

結論の主語となる小概念をS(Subject)、結論の述語となる大概念をP(Predicate)、媒概念をM(Middle)として考えられる図を書き起こして妥当になる式を導いてみます。



3つの概念がそれぞれ重なっていないケース


この概念の関係のパターンは大概念、小概念、媒概念がひとつも重なっておらずお互いに独立しているケースです。


Pattern-A-1


大前提と小前提がこの図になり得る場合は以下です。

大前提:すべてのPはMではない
小前提:すべてのSはMではない
結論:SはPではない

大前提と小前提の主語と述語が入れ替わっていても成り立ちます。したがってどんな格でも構いません(これは第二格です)。


重なり合うところがひとつもないことを表すため前提を全称否定命題にする必要があります。したがって前提の型はE→Eにします。

前提より、すべてのPはMではなく、すべてのSもMではありません。
結論「SはPではない」はSが特称命題(一部のS)でも全称命題(すべてのS)でも妥当になるようです。


しかし待ってください。

前提から導くことができるSとPの関係は他にもあります。

SとPの一部が重なっているかも知れませんし、包含関係かも知れません。


Pattern-A-2


これらの前提はSとPの関係を決めるものではありません。

したがって結論は妥当とはいえず、3つの概念がそれぞれ重なっていないケースは三段論法で表すことができません。


この関係を表すには「すべてのSはPではない」という命題がもうひとつ必要です。命題がそのまま導きたい結論になり、三段論法にはなりません。

したがってこの関係に該当する三段論法の式はありません。



3つの概念がそれぞれ重なっているケース


この概念の関係のパターンは大概念、小概念、媒概念の一部がそれぞれに重なっているケースです。

大概念の一部は、小概念、媒概念の一部と重なり、
小概念の一部は、大概念、媒概念の一部と重なり、
媒概念の一部は、大概念、小概念の一部と重なっています。


Pattern-B-1


では、この関係になる前提について考えてみましょう。

命題の型は包含はありませんので特称命題にする必要があります。

大前提と小前提がこの図になり得る場合は以下です。

大前提:一部のMはPである
小前提:一部のSはMである
結論:ゆえに一部のSはPである

これは第一格ですが前提の主語と述語を入れ替えても同じことなので他の格でも構いません。また特称肯定命題でなく特称否定命題にすることもできるでしょう。


しかし、結論は妥当にはなりません。なぜなら前提のPとSの一部がMと重なっているという情報だけで、PとSの関係が分からないからです。

仮にPとSの一部がそれぞれ重なっていればこの関係になるかも知れませんが、PとSの一部は重なっていないかも知れないですし、包含関係の可能性もあります。


Pattern-B-2


したがって「一部のSはPである」は妥当ではありません。結論を特称否定命題(コードO)にしても同じです。「一部のSはPではない」は妥当ではありません。


この関係を表すためには「一部のSはPである」という命題がもうひとつ必要です。また結論を特称否定命題にする場合は「一部のSはPではない」という命題が必要です。

どちらにせよ、加えなくてはならない命題がそのまま導きたい結論になるので三段論法にはなりません。

したがってこの関係に該当する三段論法の式はありません。



3つ概念のパターンは多い


ざっとここまで考えてみて、3つ概念の関係はあとどれぐらいのパターンがあるんだろうと考えてみました。


3つの概念の関係のパターン


これはかなりの数になることが予想されます。

2つの概念の関係は4つだけでした。

この図はどの円に大概念、小概念、媒概念を割り当てるかを考えていませんから、それを考えるとパターンはもっと増えます。


2つ概念が包含関係で、もうひとつの概念が離れている場合


とてもじゃありませんが、ひとつの記事で検証できる量ではありませんので概念の関係から逆算して妥当となる式を導くことは断念します。


それにしても、3つの概念を扱うだけでこれだけ複雑化するのですから、これに4つ目の概念が加わると更に複雑化することは想像に容易いと思います。

何度も書きますが三段論法とは、関係が分からない2つの概念の関係を、媒概念に仲立ちさせるというコンセプトです。

命題は必ずしも3つでなくても構いませんが、登場させる概念は3つだけです。



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