ありのままの君で(創作)vol.3

 いつも通り仕事終わりの片付けをしながら、ロッカーに掛けてある上着を羽織った。学校からの着信が無いか、ヒヤヒヤしながら鞄の中から携帯を取り出します。今日は着信は無くて少しほっとしながら家に帰りました。

 今日は学校行事があって午後の授業が無く、私が家に帰る頃には子供2人は家の中で遊んでいました。
『お母さん、今日もありがとう』
「大丈夫よ。2人とも仲良く遊んでくれるからありがたいわ」
 家の留守を見てくれた実母に感謝して子供達に目線を向けた。2人ともテレビゲームで遊んでいた。2人とも優しい性格の為か、物の取り合いや言い合いなどはほとんどない。下の子がわがままを言っても上の子が良いよとすぐに仲直りをする。軽い兄弟ゲンカはあるけれど、困ってしまうほどでは無い。小学校の中でだけ、上の子は問題を起こす。でも、私が小学校まで付いてあげるわけにもいかない。何より自分の居場所を手放す気にはなれなかった。

 なんとか卒業まで行って中学校へ行けば何か変わるかもしれない。今だけ少し辛抱すれば良い。

 笑顔で乗り越えれる。
 我慢すればきっと良い未来が来る。

 そんなある日、仕事が突然休みになった。バイトが増えて、調整の為にシフトを削られたのだ。仕方がないとはいえ、家にいても気持ちがグルグルするだけなので、思い切って小学校へ出向いてみた。もう何年もお世話になっている小学校なのだが、保護者だけで昼間の学校へ行くのは少し抵抗がある。
 車で小学校へ行ったが、駐車場から職員室までの距離がとても長く感じた。
『こんにちは。すみません』
 あまり大声を出すのもはばかられて、少し小声で職員室に声を掛けた。3度4度と声を掛けるとやっと中の先生が気付いてくれた。
「こんにちは。ああ、T君のお母さん、今日はどうされたんですか?」
『ちょっと時間が出来たので、うちの子の学校の様子がどうか気になって、、、』
 ちょうど時間は給食前くらいで、担任の先生も居なくて、子供達は授業の真っ最中だ。
 いきなり来たのは間違いだったかな、と思いながらしばらく受付してくれた事務の先生と喋って居ると1人の女性の先生が声を掛けてくれた。
「T君のお母さん、ちょうど良かった!お話がしたかったんですよ!」
 女性の先生は今年度変わってきた校長先生だった。すごくハキハキしていて、見ていて胸がスッとする校長先生だった。頭が回って頼りになる。そんな先生に私も好印象を抱いていた。
「T君の家での様子はどうですか?」
『家では変わりが無いです。いつも通りで。時々辛いと話は出るんですが、私がアドバイスすれば、学校へも行ってくれるし』
 本当にどうしたら学校での様子が改善するのか分からないでいました。
 
 この時、これから貰う校長先生の言葉で私は少しずつ変わっていく事になります。

「お母さん。大変申し上げにくいのですが、私は色んな学校で色んな発達障害の子を見てきました。私が見る限りT君は自閉症の疑いが強いです。検査をされるよう進めたいし、今の普通学級では無く、支援学級への編入を進めたいんです。でも、親さんの希望が無いと支援学級へは入らないんです」
『そ、、、そうなんですね、、』

(ああ、とうとう来てしまった)

 我が子を障害児として受け入れるには親もそれなりの強さが必要でした。
 これから先、私は強くなる為に長い道を歩く事になっていきます。

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