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「傾聴」スキルの普及が難しい原因と対策を整理してみました

「傾聴」にまつわる用語の定義と分類に関する試案
ー重要な専門用語が複数の意味をもつ問題ー

 対人コミュニケーション、その中でも特に心理カウンセリングにおいて「傾聴」が大切だと言われ続けて久しいが、一般社会への普及は遅々として進んでおらず、カウンセラー等の専門家の間でも、その定義やトレーニング方法において、定まったものがない状態が続いているようである。そして、この原因の一端は、「共感」(より専門的な用語としては「感情移入的理解」)という概念と技法の難解さに加えて、ときには「共感」のコツと称されることもある「オウム返し」(「繰り返し」と言われることもある)という「技法」についての賛否がわかれているところにあるのではないかと、筆者は考えてきた。
 ところで筆者は、30年ほど前に心理カウンセリングを学び始めた当初から、これらの問題に関心をもち、カウンセリングの実践活動と並行して、これらの問題の改善策を考え続けてきた。その結果、まず第一歩として、〈対話法〉と称する理論と技法を1994年に考案した。これは、クライエント(相手)の発言に対するカウンセラーからの応答を、筆者の造語である「確認型応答」と「反応型応答」に大きく分類することを主軸としている。そして、考案後は、全国各地で〈対話法〉の普及活動(その多くが単発)を続けてきた。
 しかし最近、インターネットを介したオンライン会議システムの普及により、〈対話法〉に関心を寄せる全国の仲間との研修や意見交換が頻繁かつ充実してきた。その中で、これまで、ほとんど筆者が単独で研究してきた〈対話法〉の理論と技法の細部に複数の補足をする必要があることに気づいた。そこで、〈対話法〉考案の原点に戻って従来からある用語等を再検討したところ、「傾聴」にまつわる理論や技法の混乱の主な原因は、「複数の意味をもつ用語を明確に区別しないまま議論をしているところにある」ということがわかった。そこで、筆者は、「確認型応答」と「反応型応答」に加えて、いくつかの新語を作り、「傾聴」にまつわる用語体系の再整理を試みた。その結果が図で示したものである。なお、〈対話法〉の詳細については下記の論文を参考にされたい。いずれの論文も、対話法研究所のWebサイトから閲覧することができる。

参考文献
■浅野良雄 カウンセラーの態度と技法を確認型応答という概念から考察する試み、「足利短期大学・研究紀要」第28巻(2008年)
■浅野良雄 共感的態度を評価するための一方法---確認型応答という概念の導入---、「医学教育」第41巻3号(2010年、日本医学教育学会)
■浅野良雄 カウンセラーの応答における傾聴と共感の定義をめぐる課題 ー 「確認」という視点の再評価、「ヘルスサイエンス研究」第17巻1号(2013年、ぐんまカウンセリング研究会)

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