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青と黒の人。青と白の歌。

朝、ダンナの後ろ姿をしげしげと見つめて、息子が言った。
「海の青と空の青って感じだね」
ダンナは聞こえなかったようで、そのままゴミ出しに出かけてしまった。

紺のデニムパンツが、海の青。
水色のデニムシャツが、空の青。

私は上下ともデニムなことが気になっていたが、息子は色を見ていたのか。
息子の発想の良さに感心する。

「でも、あいだの黒が分からない…」
黒いベルトが何を示すのかで悩み始めている。

遠くに見える半島って感じでどう?と提案したが、却下された。
「半島なら緑じゃないと」
それはほら。自然豊かな半島でしょ。

「あ、分かった。タンカーだ!」

なるほど。
それならたしかに黒だね。
タンカーだと赤も欲しいような気がするけど、まぁいいか。

そのあとしばらく私も息子も沈黙した。
脳内は海と空の風景でいっぱいである。

そして私は「海の青と空の青にぴったりの歌があるよね」と言った。

白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ。

息子は国語がとても苦手だった。
つい癖で、どんな情景の歌か分かるか、とテストしてみる。

最初は「海岸線に白鳥が飛んでる」などと味も素っ気もないことを言った。
仕方ないので、微妙な古語というか文語なのを、現代語に直してあげた。

「孤独なのか・・・」

おおう、突然、深くなったな。
テーブルはしっとりした空気に変わった。

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