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バリュー古今東西

こんにちは。製薬SaaSフラジェリンの浅野です。

スタートアップでプロダクトがPMFを達成して、売上も立ち、資金調達もしたとなると、次にすることはチームビルディングです。まさに今の弊社がそうなのですが、このフェーズでは今までのやり方が徐々に通用しなくなります。なんとなく話し合いで意思決定していた指針や、個人間ですり合わせていた採用基準なんかは、新しく入ってきたメンバーには理解できません。

そこでチームの土台となる価値観(バリュー)を言語化する必要が出てきます。今回はいくつかを例に、世の中の会社がどんなバリューを掲げているのか、その傾向をまとめておこうと思います。

また中にはバリューではなく、フィロソフィーやプリンシパルといった形で提示している会社も多いのですが、「チームで共有している価値観」という位置づけは変わらないので、敢えて区別はしていません。

命令型

「〇〇をしろ」といったトップダウン型のバリューです。学校や軍隊を彷彿とさせるスタイルで体育会の雰囲気が強めですが、組織運営においては歴史が古く、多くの人の心にも深く浸透しているのではないでしょうか。有名なのは電通の鬼十則です。(現在は廃止)

必ずしもこのスタイルが悪いわけではないのですが、鬼十則が現在は廃止されているように時代にそぐわなくなりつつあります。西海岸系のテック企業はこのスタイルに対するカウンターカルチャーの流れを汲んでおり、そういう意味でも非常に影響力の大きい考え方だと言えるでしょう。

推奨型

命令型を現代風にアレンジしてマイルドになったものです。広く使われていて最も一般的なスタイルと言えるでしょう。有名どころだとAmazonでしょうか。

Amazonの場合はリーダープリンシパルと銘打っており、明確にチームのあるべき振る舞いを提示しています。受け取る印象としてはやや固くフォーマルでトップダウン感の漂うメッセージです。仕事なんだから固さがあって当たり前なのですが、そういう当たり前の心得のようなことが提示されている事が多いです。

宣誓型

「私達は〇〇します」「〇〇を重視しています」というスタイルです。チーム以外の株主や社会など全方位的なステークホルダーを意識した言い方になっています。当たり障りがなく広く解釈できる一方、誰に向かって何を伝えようとしているのかが曖昧になりがちです。例としてDeNAを挙げておきます。

インターネットの急激な成長に乗ってボトムアップ型の新しい企業のあり方を志向したDeNAですが、度重なる不祥事によりコンプライアンスを意識せざるを得なくなった試行錯誤を汲み取れる、味わい深いバリューになっていると感じるのは、ぼくが中にいたからでしょうか。

良くも悪くも成熟した雰囲気を醸し出しており、スタートアップとしては少し引きが弱いかもしれません。

単語型

これは宣誓型を更に抽象化して、その企業が大事にしている単語を掲げるというスタイルです。これまでの中で最も抽象度が高いカテゴリになります。

これも宣言型同様、守りの印象があるので、既存の文化とブランドありきで掲げるものでしょう。

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ここからは型というほど事例が多いわけではないが、トレンドとして流れを汲んでいるものをあげます。

ファクト型

物事の本質を「私はこう断言する」としたスタイルです。例えば「正義は勝つ」とか「可能性は無限大」みたいなやつです。例を上げるとGoogleです。

過去に有名なDon't be evilというバリューがありましたが、上記のリンクを見ると今は「悪事を働かなくてもお金は稼げる。」になってます。この型はある種、世界をモデリングしていると言えます。ソフトウェア設計や科学で行うモデリングに通づるところがあり、そういった人たちに対するメッセージとして印象的です。

他にこのスタイルの会社は見つかりませんでした。ですがGoogleはテック業界のスタンダードを作ってきた実績があるので、今後こういうスタイルを取る会社が出てくるかもしれません。

キャッチコピー型

メルカリの人はよくGo Boldと言います。ぼくも何度か聞いたことがあり、あるときはシェアオフィスで誰かが言っており、メルカリの人が潜んでいるな、と思ったものです。これほど浸透したバリューをぼくは知りません。言ってる内容はごくシンプル、シンプルであるが故に浸透し、いろいろな場面で使えるのでしょう。

非常に使いやすいのでみんなが使ううちに、「うちの会社はこんなところですよ!」という社外向けマーケティングにもなっていました。他にもリファラル採用をはやらせたり、日本でのスタートアップの新しいスタンダードを作った会社であることは間違いありません。日本のIT系スタートアップで意識しない会社はいないでしょう。

Layer X10Xもメルカリ文化の後継としてバリューや文化の発信に力を入れており、このスタイルが今後日本では増えてくるのではないかと思います。

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これからバリューを作る方へ

まとめるにあたって多くの会社を見ましたが、頭に残るメッセージを打ち出している会社は少数でした。多くの意見を盛り込むほど、また正しいことを言うほど、情報としての価値が薄れていきます。

弊社でもメッセージについてしばしば議論するのですが、その度にシャノンの情報量エントロピーが脳裏をよぎります。

起こりにくい事象(=生起確率が低い事象)の情報量ほど、値が大きい。
情報量 - Wikipedia

当たり前の内容、もっと言うと100%の人が同意できる内容には情報量が無いということです。スタートアップ界隈の方もそうでない方もメッセージには是非情報量を求めていただけたらと思います。では!

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