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「庭は私をまもる場所」五感でたのしむ東京の庭園2

東京の庭園を、色・カタチ・音・靴で踏んだ感触・園内グルメ・香り…と五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)それぞれに届いたものからレポします。
「水の姿に魅せられる」五感でたのしむ東京の庭園1 つづき

3、旧古河庭園

JR京浜東北線 上中里駅 徒歩7分
東京メトロ 南北線 西ヶ原駅 徒歩7分
JR山手線 駒込駅 12分
入場料:一般 150円
視覚:洋館、紅葉、石、庭園に設置されたもの
聴覚:滝の音
触覚:固い土、洋館の木の床
味覚:紅茶、パウンドケーキ
嗅覚:木の香り

『鹿鳴館』の世界へ

旧古河庭園に入るとすぐに、石造りの洋館がそびえ立ち、イタリア式の洋風庭園が広がっている。

この洋館と西洋庭園は鹿鳴館やニコライ堂を手がけたイギリスの建築家によって設計された。
三島由紀夫の『鹿鳴館』を思い浮かべながらあるく。

庭園はテラス式と呼ばれるイタリアルネサンス時代のもので、幾何学の造形になっている。田舎風のコテージガーデンとは違い、貴族風で整えられている。この庭園は春・秋にはバラが咲く。

洋館は当時のままに保存されており、見学ツアーか喫茶利用でのみ入館することができる。
スーツの方の丁寧な受付・木製の床・赤いビロードの椅子・上品な花柄の壁紙・レトロなライト暖炉・ウェッジウッドのカップ・紅茶の香り。

館内はとてもあたたかく、窓の外の庭園を見ながら読書をした。

心でみる日本庭園

西洋庭園の先へ進むと和の空間・日本庭園が広がっている。

日本庭園では、たとえば枯山水のように石を自然にみたてて空間をつくる。
元々は、室町時代、水源がダメになり枯れてしまった滝や水の流れを、その趣も”よし”としたところが始まりだそうだ。

旧古河庭園では、その1つ、枯滝をみることができる。
目をこらすと滝の姿を感じることができる。

また、中央にある池は”心字池”と呼ばれる形式の一つ。上から見ると「心」を崩した形になっているそう。心字池の周りには石灯籠を見つけることができる。石灯籠とは、神仏に献じるという目的から生まれたものである。

神仏の思想の強い庭だからか、とても穏やかな空気が流れている。
ベンチで1人腰掛けて、何かを書いている人もちらほらと見かけた。

庭を大事にするのは、自分を大事にすること

落ち葉を踏みしめて、ふと道を見ると溝蓋にもバラのマークが付いていた。

その他にも木でできたベンチや、レンガの水飲み場など、庭園内に古いものが残されていてレトロな風情を守っている。
これが普通の溝蓋だったら、これが真新しいベンチだったら……と想像すると少し残念な感じがする。

ある一つの空間をつくるというのは、想いや考えをこういう細部へ行き届かせることなのだと痛感する。
細かいことだからこそ、そこで大事にしたいものを配置するべきだし、なんでもかんでも新しくすればいいわけじゃない。

中世のイギリスでは人々は戦乱や疫病から逃れるために厚い壁に囲われた城に住んでいた。城の中は暗く窓もなく、共同生活だったためプライバシーも皆無だったそうだ。
そんな中で、人々は城壁の一角に庭をつくった。

庭の英訳・ガーデンは”囲われた場所”を意味する。
庭は心を落ち着かせる場所であり、自分を見つめ直す空間だったのだろう。私たちが庭園をまわるのも、どこかに日常とは違う、自分の心のおきどころを見つけたいからなのかもしれない。

だから庭園の景観を守ることや大切にすることは、きっと自分たちの心を大切にすることなのだろう。

そんなことを考えて、自分の庭、ベランダガーデンのことを思い返した。
レトルトのご飯を食べて仕事をして眠るだけの、自分の生活がすさんでいる時は、ベランダの植物に水やりなんかできるはずもなく、一緒にダメになってしまった。あんなに追い込んだけど、仕事もうまくいかなかった。きっと追い込んだんじゃなくて自分を傷つけていたんだな。

庭を大切にしたい。それは、私をまもることだから。


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