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「水の姿に魅せられる」五感でたのしむ東京の庭園1

今年は例年よりあたたかいので、まだもう少しは紅葉が楽しめそう。というわけで、ひとり、都内の庭園をまわってみることに。
すると、色、カタチ、音、靴で踏んだ感触、園内グルメ、香り…と五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)それぞれにいろんなものが届いてきた。
五感を軸に庭園をたのしむレポです。

日本庭園って?

庭園をまわる前に、日本庭園の歴史について少し調べた。
現在東京でみられる”日本庭園”は江戸幕府に仕えていた大名によってつくられた。
江戸時代に、大名家にとって”庭園をもつ”というのが一個のステータスだった。別荘みたいな感覚かもしれない。
これらは「回遊式庭園」と呼ばれ、大きな池と周囲にいくつかの茶庭を置いているのが特徴。ちなみに、茶庭とは茶室に向かう道すがらの演出のことで千利休の時代に生まれた。
それぞれの庭園には、コンセプトがあり、ストーリー性がある
たとえば、みんなで共に楽しむ(儒教の思想)・和歌の心を表現する・中国風など…。必死に大名たちが考えたのかなぁと思うと、なんだかかわいい。「わたしの自慢の庭を見てくれ!」って感じだったのかな。
(参考文献:『日本の庭園』(中央公論新社、進土五十八、2005年))

1、湧き水が循環する、肥後細川庭園

東京メトロ有楽町線・江戸川橋駅下車(徒歩15分)
都電荒川線・早稲田駅下車(徒歩5分)
入場料:無料
視覚:紅葉、水の流れ
聴覚:水の音、鳥の鳴き声
触覚:飛び石(歩行用の石)
味覚:お抹茶
嗅覚:木の匂い

都電早稲田駅が一番近いこの庭園。閑静な住宅街の中にある。
何よりも、この庭園で感じるのは、大きな池を中心に庭園内をめぐる”水”の豊かさだ。

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いろんな姿を魅せてくれる水

この庭園は、人工的な水ではなく、湧き水(!)と雨水が、小さな滝・遣水(平安時代に発案された園内を這う水の通り道)を通って、池へとそそぎ、循環している。
そして、大体の庭園は水辺は柵で囲ってなるべく近づけないようにしているが、ここはない。つまり場所によっては水辺にギリギリまで近寄ることができる。
飛び石(歩行用の石のこと)を歩いて”水”に近づいてみる。
水のあり方は落水(滝)・流水(流れ)・湛水(池)と言葉があてられている。
水のいろいろな姿に、それぞれの音やあり方をじっと見つめる。


プチ登山をする

池の後方には、築山(人工的につくられた山)がある。
え、こんなに登るの?と息があがるくらい傾斜がある。道すがらの木や植物は管理されているというより、なるべく自然のあるがままにされているよう。曲がった木、もう間も無く眠りに入ろうとしている枯れた草花など、結構ワイルド。
一番上まで行くと、池を中心にした園内全体を見下ろすことができて圧巻。

築山は展望できる場所として園内のランドマークとして作られた。
大名はこの眺望を、来た人を驚かせてやろうとワクワクしながら作ったのかな。
ベンチがあるので是非腰掛けて、眺めを楽しんでほしい。

園内には茶室(この時は行けなかった…次回…!)があったり、夜間に日本庭園に関する講座が開催されていたり、ブログが定期的に更新されていたり、文化的な面にも力をいれている。
私が行った日は庭師さんが冬支度をしていた。入園料無料の場所なのに、庭園全体がとても丁寧に、大事にされている感じがして気持ちよかった。

私の行った時は11月でまだ紅葉ではなかったけれど、今はカエデが真っ赤に染まっているそう。

2、植物の多様性を味わえる、小石川植物園

都営地下鉄三田線 白山駅下車 A1出口 徒歩約10分
東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅下車 出入口1 徒歩約15分
入場料:大人500円、子供150円
視覚:様々な種類の樹木、紅葉、東アジアの暖かい地域の植物
聴覚:風が木の間を通り抜ける音、鳥の鳴き声
触覚:落ち葉
味覚:ギンナン、売店の飲み物
嗅覚:木の匂い

後楽園のすぐ近く。東京大学大学院に付属しているこの植物園はとにかく広い。東京ドーム3,5個分だそう。
大きな自然公園のような感じで、その中に、温室、日本庭園などのスペースがある。受付で渡される地図は絶対必須である。(どこにいるかわからなくなるから)

木のオンパレード

この植物園の最大の魅力はとにかく”木”である。木が多い。入ってすぐの巨大なヒマラヤスギ、温室前のモミジ並木や、紅葉したイチョウ、かりんの木、桜の木…。

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でも何より私のオススメの場所は針葉樹林のスポットである。
植物園の一番端のスポットであるからか、日曜の昼過ぎでも人が少ない。
まっすぐに背が高く伸びたスギやヒノキ。光の差し込みが少ないので、薄暗い。木の香りが鼻に充満する。自然のアロマ。
あれ、私東京に居たんだっけ?と感じるくらい、森の中にいるような気持ちを味わえる。

温室植物のカタチ

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この植物園には6個の温室がある。15時までの開放という制限もあり、人気のスポットのようで混みあっている。
ここで楽しめるのは、植物の”カタチ”のおもしろさだ。
苔や、菌類、沖縄やアジアの暖かい地域の植物、ラン、など…。
どれも「どうしてそんな形をしているの?!」というような、ファニーな形。
アロエの様な葉をつけ、葉先が濃いピンクになっている植物、根っこがむき出しになって数枚の葉が垂直についている植物、葉が顔のサイズ位はある植物…。
これらの個性の強い植物を見ていると、人間も、もっと自由に生きていいんだよねと思う
写真を撮っている人が多いが、とにかく展示数が多く、情報が多いので、眼についたものに絞ってスケッチするのがオススメ。スケッチすると、そのカタチのおもしろさがダイレクトにわかる。

他にも、日本庭園などスポットは沢山あるのだが、なかなか全てを味わうにはまわりきれなかった…。
逆に言えば、とにかく広いので、人混みが苦手な人でも、人を避けて自分のスペースをつくることができる。園内には売店もあり、あったかいコーヒーを飲みながらベンチに腰掛けて、枯れたソメイヨシノの風情を味わった。

帰りに係員の人がギンナンをくれた。見るだけじゃなくて、食べても楽しもうぜ!って心意気が”植物園”ぽくて、心をつかまれた。
(続く…)

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