『Division Point』 その1 (未映像化台本)
(漫画用に書いたもの)
舞台設定時は未来、所はどこかの植民星
デンタ 日系男性
ジョーイ 白人男性
アリエール 白人女性
1.岩貘の或る一角。
煙を上げ大破しているトレーラー。その傍らにたむろっているエアー・バイクの男達。
暴力グループであるジフの面々。手には各々武器をもっており、トレーラーの荷台を漁っている。
何人かでトレーラーの運転席から一人のジジイを引き摺り下ろす。
ジフA「なーんだ、こりゃあ。服じゃねーか」
ジフB「ふざけろよ、畜生。食えねえだろうが」
ジフC「こんなもん運んでんじゃねーよなあ!このジジイ!あったまきちゃうな、もーっ!」と、トレーラーの運転手のジジィを蹴る。
ジジィ「ヒーッ!!」
他のメンバーも加わり、蹴り続けるC達の手前にボス「シケてやがる。行くかぁ」
副ボス「はーい、ボス」
副ボス、一際大きな声で皆に「お〜し!引き上げちゃうぞ〜!!」
皆、手を上げたりして応える。
その内のジフD「・・・・・。ボスーっ」と声出しながら、遠くを指差す。
ボス「あぁ?」と指差した先を向く。
ジフD「あれあれ」と指差た先に土煙。トレーラーが走っているのだ。
ボス「ふん・・・今日は当たり日か、それとも外れの日か、これで判るってもんだ・・・」
後ろでは、グループの一人がトレーラーの運転手のジジィを撃ち殺す。
2.岩貘を行くトレーラー。運転席にはデンタ。
デンタ、無線に向かって「うん、荷はちゃんと積み込んで来たよぉ。あと1時間弱ってトコだろ、そっちへ着くのは」
無線からジョーイの声「素通りすんなよ。寄り道すんなよ。街に入ったら、まず事務所に寄ってくれよ」
デンタ「わぁってるって。書類をキッチリ揃えていかねーと荷の納品処理をしてくれないってんだろ。・・・ちょっとしつこいよ、ジョーイ」
ジョーイの声「何言ってんだよ!じゃあ、端っからちゃんと書類持って出掛けてってくれよ!運び屋始めて三年も経つってーのに---」
トレーラーの横腹には"Joey & Denta transporting company”[ジョーイ&デンタ運送会社]
3."Joey & Denta transporting company"の事務所。雑居ビルの4F。
ジョーイ「---何で今更こんなチョンボすんのよ。わざわざこっちに戻る分がロスタイムだっての判んだろ?」
デンタの声「まーまー。納期迄あと三日もあんじゃん。余裕だってば」
ジョーイ「バッカヤロ。お届け先様に交渉して延ばして貰ったんだろーが。俺が。え? 俺が!」
デンタの声「まーまー」
4.走ってるジフ・グループ。
デンタ(Off)「・・・・。そう、三年ね。」
ジョーイ(Off)「ん?何だ?」
デンタ(Off)「殆どヤケクソ状態で地球を出てから、もうそんなになる訳なのねー」
ジョーイ(Off)「・・・ああ。」
5.デンタ
デンタ「鉱脈以外に何のメリットもない、こんなトコ(植民星)に来ちゃってさ、初めは面喰らったもんなぁ。安易に炭鉱夫の道を選ばなかったのが良かったんだわなー」
ジョーイの声「・・・・デンタ・・・・」
デンタ「お?」
6.走っているトレーラーの外観。後方より土煙を上げ迫ってくるジフGがほのかに見える。
ジョーイ(Off)「話はぐらかしてんのかよ?」
デンタ(Off)「いえいえ!んな事ないっすよぉ!」
7.走ってるジフ・グループ。デンタのトレーラーに迫っている。襲う準備も怠り無し。
ジョーイ(Off)「・・・ま、いいや。お前の言う通りな、確かにこれ迄概ね順調だった。いいか、だからこそ今度の仕事はキチッとやらにゃならないんだぜ。たまたまお鉢が廻って来た感じだったけど、デカイ仕事なんだ。弱小企業としちゃあ信用アップのだ〜〜いチャンスなんだからさ。な、ちゃんとやってくれよ」
デンタ(Off)「やってますって。心配無い無い」
とか何とか言ってる間に、トレーラーに一人、二人と取り付く。
デンタ(Off)「とにかくだな、1時間後に会おうぜ、ジョーイ」
8.デンタ
デンタ、無線を切る。
ふいっと前見るデンタ。「うっ?!」となる。
フロントガラスの向こうにジフDが逆さに張り付いている。手には銃。銃口はデンタにしっかり向いている。
9.トレーラー外観
ジフD「停めろや〜っ!」
10.デンタ
キッと見据え、ブレーキペダルを一気に踏み降ろす。
11.トレーラー外観
急制動に、ガックンと前のめりになる。砂塵を上げながら滑るタイヤ。
反動に煽られ、跳ね上げられ、宙に浮くジフDの体。
トレーラーに取り付いていたジフの他のメンバーも暴れる車体に翻弄される。
地に落ちるジフD。
デンタ「停めろって言ったもんねぇ?」
デンタ「う!?」
上や下から銃口突き付けられてる。
デンタ「あら」
ザリッと地を踏むボスの足。
デンタ「・・・!」と見る。
ボス「降りろ」
※ ※
トレーラーの中味を見て浮かれているジフの皆。
「ブルーダイヤの原石だぞ、おい!」
ボス「つまり、今日は当たり日だったって訳か」
※ ※
ロープで縛られているデンタ。
他のジフ・チームの面々もデンタの前にたむろっている。
ボス「おめえにも運試しをさせてやろうじゃねぇか。殺さねぇで、見逃してやろう」
デンタ「おいおい、こんなとこに放っぽとかれたら半日で干からびておっちんじまうよ。結局一緒じゃねーか」
ジフC「今すぐ死ぬよりゃ全然いいだろーが。ゆっくり自分の人生を振り返んな」
副ボス「それに死ぬとは限らねえ。ここは、一応運搬ルートなんだろー? くたばる前にひょっとして誰か通るかもしれねえ。なあ?」
ボス「こりゃ俺の親切って奴だ。幸運のお裾分けだな」
デンタ「何言ってんだ。その幸運ってのは俺の荷のことじゃねーか。じゃ、せめてトレーラー返してくれよ」
副ボス「そしたら荷物を運べねーだろーがよ、バカ。贅沢は良くねえな」
デンタ「あ〜あ・・・・・」とうなだれる。
ジフの男数人、何やら木材に縛りつける。
ジフB「化けて出ようったって無駄だぜ。俺達には決まった寝倉がねぇ。気ままに渡り歩くチーム・ジフだからよ」
デンタ「ジフだぁ・・・?」
ボス「閻魔に会ったらよろしく言っといてくれなぁ」
デンタ「バカ・・・・」
ボスの蹴り。デンタの顔面を打つ。
デンタ「がっ!・・」と、跳ね上がる。
ドッと倒れるデンタを見下ろすボスのUP。
「うう・・・」と、うなだれているデンタのUP。気を失っている?
ボスの声が被る。「よし!行くぞ!!」
12.第7市。遠景。
ジョーイの声(Off)「・・・・・え〜と・・・・・?」
ジョーイの声(Off)「今日は4月1日か・・・?」
13.街並。
デンタの声(Off)「冗談言ってんじゃないの。ホントなの」
ジョーイの声(Off)「・・・ホントなのって、お前さ・・・積み荷が何だったんだか知ってんだろ!?」
14.建物の一つ。4F建て。その4F、"Joey & Denta transporting company"
デンタの声(Off)「ブルーダイヤの原石・・・時価1000万ドル位・・・?」
ジョーイの声(Off)「簡単に言うなよ! なぁ・・・」
15."Joey & Denta transporting company"の建物のUP。窓の外から二人の様子が見える。
デンタの声(Off)「だって、しゃあないだろー!こっちはおまけに殺されかけたんだぞ」
ジョーイの声(Off)「・・・う〜・・・・」
デンタの声(Off)「根性で帰ってきたんだからな! 見るー?これーっ」
16."Joey & Denta transporting company"事務所内。
ジョーイは窓際のデスクセットに座っている。
デンタはデスクを挟んだ向こう側で、先刻背に括り付けられた木材を手にしている。
デンタ「けっ飛ばして折ったんだぜ!2時間掛かったんだぜ!」
ジョーイ、両の手の平で顔を覆ってる。「見た、見た・・・」
ジョーイ、次いで「ハァ・・・」と溜息。
デンタ「よお・・・ジョーイ・・・」
両の手の平で顔を覆ったまま、落ち込み続けているジョーイ。
デンタ、手持ち無沙汰にぬいぐるみのさっちゃん2号をもて遊ぶ。「ちぇ。大変だったのにねー。折角見せてやろうと思って重いの持って来たのにねー」とか語り掛けてる。
ジョーイ、ちょい顔を上げ、「おい、デンタ」
デンタ「あ?」
ジョーイ「判ってんだろうけどな、こんな事誰にも言うなよ」
デンタ「え・・・?」
ジョーイ「会社の信用に関わるだろーが! 知れたらどうなるか判ったもんじゃない! 絶対誰にも言うなよ!」と、ビシッと指差す。
指差されたデンタは・・・
デンタ、腕組みして「う〜〜ん」と考えこんでる。
ジョーイ「何だ! 何だよ、おい! 何で考え込むの!?」
デンタ「いや〜〜・・・」
※ ※
「ドン、ドン」と激しくドアを叩くノックの音。
※ ※
二人、ドアを見る。
※ ※
ドア、開けて入ってくる女。アリエールである。ピクピクしてる。
※ ※
ジョーイ「あ・・・・」
※ ※
アリエール「ほ・・・本当なの?盗まれたって・・・・!」
※ ※
ジョーイ「あ・・・・」ぼーぜん。
ぼーぜんのまま、デンタに向く。デンタ、笑顔で応える。
ジョーイ、更に睨み付ける。
(続く)
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