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『考えることこそ教養である』 作者:竹中平蔵

私たち学者は、ともすれば知識だけを積み上げて記憶した「ハードディスク」のような存在になりがち、と、著者の竹中平蔵氏は記す。大量の情報が詰まっているけれど、それだけでは何も価値を生み出さない、と。
では、必要なのは? 「CPU(中央処理装置)」、つまり考える力。
情報や知識をどのように使うか、どうつなぎ合わせて活用するか。そのCPU的な力は、インターネットやクラウドコンピューティングなどが発達し、スマホ一台あれば即座に情報が得られる、知識の価値が急落してしまった現代に於いて非常に重要である。

しかし、考える、ということには少しコツが要る。ツボというものがあると、著者は述べる。
本書では、まず、考えるとは、自分の頭で作り上げる「マイ・ストーリー」を描くことであり、その上で大事なことは「川を上り、海を渡る」ことであると言う。「川」とは? 「海」とは?

そして本書は、考えることで身につく七つの能力を解説する。
また、考えるために有用な「型」を具体的に列挙したり、実践問題として、「なぜ」を考える実例をいくつか挙げて紹介している。
加えて、考える習慣を身につけるための術についても語った上で、考えることをあきらめないことを説く。

少子高齢化、日本経済の低迷、価値観の多様化によるコミュニケーションの煩雑さ、AIの台頭により仕事が奪われるという漠然とした将来への不安、新型コロナウィルスの猛威。
難しい問題が山積し、閉塞感に満ちた社会に於いてでも、あきらめずに考え続けることで、必ずや解決策に近づくことができると信じている、と著者は言う。

「考える」というものは訓練を必要とするが、回数をこなすことによって、その分だけ上手く「考える」能力が備わっていくものだ。「なぜ」に「なぜ」を重ねていくのである。留まっていてはいけない。


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