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『地球幼年期の終わり』 作者: アーサー・C・クラーク

SF史上の大傑作と多くの人々に絶賛されている本作が2015年にアメリカでドラマ化されているのは、なかなか驚きだ。なんといっても本作が最初にアメリカで刊行されたのは1952年なのである。
作者のアーサー・C・クラークといえば、ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフと並ぶSF界の大御所。最も有名な作品は『2001年宇宙の旅』だろうが、本書を代表作と推す人々も多いと聞く。
だが、食わず嫌いとは恐ろしいもので、私がクラークの作品を読んでみたのは今回が初めてなのだった。何故かと言えば、その古さ故に尽きる。どうせ難解で読み難い、めんどくさい小説なのだろうと思い込んでしまっていたのだ。

アメリカとソ連。それぞれにいよいよ宇宙進出を目前にした時、地球上の各大都市の上空に大宇宙船団が現れた。
どことも知れぬ星系から突如として訪れてきた彼らは、人類とは比較にならない科学レベルを備えた超知性体であった。
沈黙のまま人間たちの頭上に浮かんでいた船団であったが、6日目に地球総督カレレンから声によるお目見えが為された。
それから5年間。船団に全面的に管理されてきた人類は、自らの手によってではなく、彼らよって平和と安定と繁栄を得た。
「やつらは我々の自由を奪い去った。人は必ずしもパンのみにて生きるものに非ず」
そう言う者もいたが、しかし、すべての人間が、たとえパンだけでも保証された時代というのは、これが初めてではないか。
人々は、全能者である彼らを〈上主〉と呼んだ。
人間が〈上主〉への反感をもつ最大の理由、それは、〈上主〉は決して地上に降りることはないこと。そして未だかつて誰にも素性を明かさないことだ。姿形さえも人類には知ることが出来ない。
〈上主〉と会話が許されるのは国連事務総長のストルムグレンのみ。
ストルムグレンは〈上主〉の船へと入れる唯一の存在であるが、その彼とてまた、〈上主〉とのやりとりは声のみでなのだ。その相手もカレレンのみで、いったい船には何人の〈上主〉が居るのか、またはカレレンしか居ないのか、それさえも分からない。
カレレンの指導、ストルムグレンの従僕によって世界連盟が樹立しようかという時、それはストルムグレンの定年退職の時期とも重なる。
このカレレンとの関係も間も無く後継の担当者に引き継がれるのか。その時、ストルムグレンはこれまで決して考えたこともなかった想いに囚われるのだった。

結局のところ、読み始めてみると案外と読み易かった。センテンスも短めだ。
逆に言うと深掘りが足りなく、やや浅い。が為に、登場人物への感情移入は少しし難いかもしれない。

世界は一つになった。そして、無知、疾病、貧困、恐怖は事実上姿を消した。犯罪も消滅したに等しい。人類は極めて冷静で理性的になっていた。まさにユートピアの時代が訪れている。
それらをもたらした存在、即ち〈上主〉の目的とは何なのか。
それを人類は100年もの後に知ることになるのだ。


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