『SOMEDAY MY NEIGHBOR WILL COME』
Zoom画面に、落合、河井、桜井、高山。
落合「宇宙人?」
河井「うん」
落合「いや、居ないだろ」
桜井「あたしは居ても不思議は無いと思うけど。だって、広ーい宇宙がある訳じゃん?地球にしか生物が居ない方が不自然だと思うんだよね」
河井「そーだろ?それに昔っから円盤とか宇宙人の目撃情報ってあるしね」
落合「テレビの特番とかだろ?あんなの嘘臭いのばっかじゃん」
桜井「宇宙人にさらわれて、何年かして戻って来た、って言う話も聞いたことあるよ」
河井「その間のこと全然覚えてないって言うヤツでしょ?宇宙人に記憶を消されたんだろうって」
落合「ほらほら、ウソっぽい。話が都合よすぎ」
高山「呆れちゃうよね。テレビなんて、ヤラセか内輪ネタのオンパレードでしょう。クリエイティブじゃないよー。嫌いだなあ、そういうの」
落合「なあなあ、なんでこんな話になったんだっけ」
河井「実は、それらしいの、俺、前に一度見たことあってさ」
桜井「なにそれ」
河井「夏の夜、新潟から東京へ戻る高速道路でさ、パッと右の空を見上げたらひゅーって光が一瞬走ってさ」
落合「流れ星じゃん、それ」
河井「上に昇ってったんだって。なんか有り得ない角度で、こう」
桜井「夏だったんでしょ?花火でもやってたんじゃないの?」
河井「夜中の一時過ぎだったんだけど?」
桜井「うーん」
河井「しかも、その辺りの周りは山なんだからさ」
高山「ロゲイニングって知ってる?」
落合「何?急に」
河井「ロゲイニング?」
高山「地図とコンパスを頼りに、山の中に設置されたチェックポイントを制限時間中にどれだけ多く回れるかっていう、チーム戦のスポーツなんだよね」
桜井「ふーん。知らなーい」
落合「んで?それから?」
高山「水金地火木土天海冥(すいきんちかもくどってんかいめい)、太陽系惑星巡りロゲイニングの地球のチェックポイントが新潟にね、あるんだよね」
落合「?・・・なんだかなあ」
河井「じゃ、俺が見たあれはゲームの参加者だったんだ?」
高山「多分」
河井「だから、タイムを競うから、一瞬でひゅーっ」
高山「そうだねー」
桜井「ええとぉ・・・どっから来てるワケ?その発想・・・。それ結構流行ってるの?」
高山「んんー、マイナースポーツじゃないかなー」
落合「円盤で移動して、スポーツもクソもねーだろーが」
高山「あれ・・・割と判り易い例えだと思ったんだけど・・・まぁいいけど」
河井「んー。話を戻してと。ま、そんな事有ったよなと思って、で、皆んなはどうかなって話な訳よ」
落合「スピリチュアル系、ぜんっぜん無いね」
桜井「あたし、昔の友達に霊感バリバリの奴がいてー。話してたら急に黙りこくっちゃうから、なんだろう?と思ってたら、そのコが言うワケ。・・・・今、あんたの肩に、血だらけの手が置かれてる」
河井「(両手で身体をさすりながら)うわうわうわ」
落合「(不安に、自分の周りを見廻して)よしてー」
桜井「真昼間っから、スタバでいきなりそんな事言われてもねー。ねー?」
高山以外、声を上げて笑う。
高山「・・・宇宙人はスピリチュアルと違うっしょ」
落合、河井、桜井「はは・・・」と、笑いを止めて、お互いを見合わせる。
落合「・・・宇宙人ってさ!もう昔っからUFO目撃!とかってテレビや雑誌とかでやってるけど、なんでいつも暫くしてパッと消えちゃうんだ?あいつら一体何しに来てんだ?」
高山「あれはね、宇宙人の子ども学校の遠足なの」
桜井「遠足?動物園観に来ましたって感じ?」
高山「そそ」
河井「地球人は動物園のサル扱いか」
高山「言いにくいけど、まあそんな感じだよねぇ」
落合「へえぇぇ。そんな上から目線の連中なら、それこそ地球侵略なんて簡単にやれそうだけどな」
高山「テレビの見過ぎ。そんな気無いんだもん。侵略して何の意味があるの?」
桜井「え?そりゃ色々あるでしょ」
高山「だからどんな?」
桜井「えー・・・宇宙征服?全てをこの手に!とかってさー」
河井「自分の星の寿命が来ましたー。移住可能な星を見つけたので乗っ取ります的な奴とか」
高山「だから、テレビの見過ぎだって」
落合「あー、あー、じゃあこう言うのは?資源を使い果たして、地球に目を付けた!」
高山「それ悪くない。抗争の大抵の理由は領土か食糧かエネルギーだからね。第一次世界大戦と第二次世界大戦だって、結局はそこから始まっているから。けど・・・!その後地球人類はどうなったっけ?第三次世界大戦勃発の危機を唱えた識者は大勢いたけれども、過去の過ちに学び、何とか局地戦程度に紛争を抑え込んで、やり過ごす程の知恵は付けたでしょ。宇宙人だってそうだよ。ていうか、尚更だよね。ドンパチに頼る愚かさ、消耗するバカバカしさを知っているんだ」
河井「その言い分だと、宇宙人は他所から地球を傍観してるだけってことか?」
桜井「ていうか、別に関心も無いし、ほっとかれてるって事?」
高山「そんな事は無いよねー」
落合「何が?じゃ、何がそんな事なんだ?」
高山「あたしがさっきから言っているのは、侵略と言う行為の無益性についてでー。お互いに消耗して疲弊しちゃってさ、そんなデメリットを被るよりも、もっと効率的に問題を解決する方途を探る方がよっぽど賢いじゃない、という事なのだよー」
河井「んん?解決するべき問題って何よ?」
高山「だから、領土、食糧、エネルギー」
桜井「て、やっぱあたしたち、宇宙人に狙われてるってことなの?」
高山「地球の場合、限られた居住可能な地表の上に既に70億、うーん・・・中国、インド、その他東アジアの人口を正確にカウントすると、実は既に80億をゆうに突破しているからね。領土やエネルギーはそれほど期待されていないよね」
落合「食糧か。そいつを事を荒立てる事なく手に入れようって訳だ。宇宙人は。なっ?」
高山「まぁ概ねの奴らはね。たまにダメダメなしょーもない奴らも居るけど、勿論。で、事件を起こすんだから、ほんと、迷惑だよね」
河井「事件?」
高山「ほら、地球人だって、食に関係なく狩をするでしょ?魚も釣るでしょ?レジャーとして。ね?」
櫻井「んん?まぁ・・・」
高山「同じ様にレジャーの一種のつもりでさ、お楽しみでやっちゃう奴がいるの。たまにね」
河井「やるって何を」
高山「一番最初に事件として取り上げられたのは、イギリスで起きたジャック・ザ・リッパーだって聞いてる」
桜井「ええ?何?」
落合「何言ってんだか良く判んねーけどさ、そんなに進んだ宇宙人がいるなら、どうして未だに人類に接触っていうのか、コンタクトっていうのかしてこないんだ?おかしいじゃねーか」
高山「とっくにしてるよー」
河井「え?聞いた事ないよ、そんなの。そんなこと有ったら大ニュースになるだろ」
高山「君達が知る、知らないはどうでもいい事。宇宙人はとっくにこの星に入り込んでいるよ」
桜井「ねぇ、何言ってんの?」
高山「さっき言ったジャック・ザ・リッパー事件なんて、1888年の事だよ。あたしんちだって、もうおじいちゃんの代から住み着いてるしね」
落合「おい。おいおいおい!」
高山「君達地球人類には天敵はいないと思っているだろうけど。でも、そんな事は無いんだ」
河井「やめろよ。馬鹿な事ばっか言ってんじゃないよ」
高山「自然界に於いて、食物連鎖の連なりからは逃れられない。君達だけに例外が設けられているなどとは、極めて不自然な事とは思わない?そうでしょう?」
落合、河井、桜井「わ、わ、わ、わーっ!」
高山「はははははははは」
と、
中村の声「はいー、そこまで!」
ふーっと気が抜ける落合、河井、桜井、高山。
中村 in。
中村「んー、いい感じじゃない?」
河井「そお?ちょこちょこ違和感有ったけどなー、俺は」
中村「テンポはもうちょい良くしたいね。まあ、あとは稽古での詰め次第っしょ」
桜井「本番、四日後ですよ。よくそんな余裕がありますねー」
中村「Zoomで観せるドラマなんだし、小屋でのリハ要らない分助かるからさ。まあ、火事場の馬鹿力見せてよ。ねっ」
落合「またー。やっと昨日台本上げてきた癖によく言いますよ。にしても、今回はホントにギリギリでしたね。その分なんか普段より狂ってるけど」
中村「なかなか題材が決まらなくてさ、だからついついやっちまったっていうか。まぁ、たまにはしょうがねーか」
高山「え?ああ、この後の展開、ヤバイですもんね。____あの、そろそろ良いですか?バイトあるんですけど」
中村「オーケー、オーケー。じゃ、みんなまた明日もよろしくー」
落合、河井、桜井、高山「お疲れ様でーす」などと言いつつ、退出していく。
一人残った中村、やや勿体ぶった後「ふんふん。ホント、今回だけは何書きゃいいのか全然浮かばなくって焦ったな。・・・だからついついやっちまった」
中村「(真顔)さんざ嫌いって言っといて、内輪ネタってヤツをさぁ」
ニタリ。画面は妖しく真っ赤に。
終わり
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